4話 バーベキュー大会
夜、クレーター跡地にて。みんなの頑張りもあって、大掃除はあっという間に終わった。
「片付いたー!」
綺麗になったクレーター跡地は広々としていて、何もないけどとても快適。
宙に浮かぶ小さな星の精霊達は大掃除が終わって大喜びしているのか、両手をフリフリしながらピカピカ輝いている。
「楽しそうだねー」
「星の精霊達、とっても可愛らしいね!」
あまりの可愛らしい光景に、星の精霊である魔法少女キラナもニコニコ微笑んでいる。
「さてと……」
私はクレーターの隅にまん丸お目目を向ける。視線の先には、大量に積まれた新鮮なドラゴン肉。
「今日の晩御飯はどうしようかな〜?」
「えっ? 大精霊なのに、晩御飯を食べるおつもりですか……?」
「食べるよ」
困惑するドラゴニュートのギルに私は淡々と答える。
「むしろ私はその為に生まれて来たんだからね。晩御飯は絶対に食べるよ」
「大精霊が晩御飯の為だけに生まれるってことあるんですか……?」
少し言葉足らずだったせいで、ギルは私が晩御飯の為だけに生まれた大精霊だと勘違いしたかもしれない。朝も昼も食べるよ。
「そんなことより」
ギルさんに私の可愛い攻撃は通用しないけれど、私はめげずに再トライ。
猫耳の生えた可愛らしい頭をこてんと傾けて、可愛らしさ満点でおねだりを仕掛けた。
「あのね、大量のドラゴン肉でね、何かバーベキュー的なものやりたいんだよね」
「バーベキュー……?」
「皆んなでお肉を焼いて食べるんだよ」
「そう、ですか……」
……駄目だ。ギルさんに私の可愛らしさは通用しない。むしろこういった生物に僅かな嫌悪すら感じる気がする。
そもそも、異世界で可愛いは通用するのだろうか。なんか不安になってきた。
『!』
私が我儘を言ったその瞬間、周りで輝いていた星の精霊達は一斉に私の方を見た。
「ん?」
妖精達は周りにいる仲間達とあたふたやり取りすると、「ワープ」の魔法を使って一瞬でその場から姿を消してしまった。
「???」
私が不思議がっている中、私の前に1匹の妖精が姿を現した。
まん丸たまごのような精霊の手元には、とても美味しそうなフルーツ的な物が。
「それって果物?」
私の質問に精霊はコクコクと頷いて、再び目の前から姿を消す。
しばらくすると、精霊達は様々な物を抱えながら姿を現し始めた。
栓がついた大きな木の実、木の実を割って作ったと思われるボウル、自然物で作られた色んな調理器具、沢山のフルーツ、岩塩……
「これってまさか……バーベキューの準備してる?」
「いや、そんなまさか……」
困惑するギルさんをよそに、一部の精霊は木の実のボウルに、潰したフルーツや木の実を入れて混ぜて、何かを作り始めた。
「いい香り〜! デザートでも作るのかな?」
楽しそうに調理光景を眺めるキラナ。
「多分だけど、あれってデザートじゃなくてバーベキューソースじゃない?」
「バーベキューソース?」
「ほら、なんかフルーツ入れたボウルから刺激的な匂いもするし……あっ、砕いた岩塩とか入れてるよ」
「本当だ!」
精霊達がバーベキューソースらしきものを作っている一方、少し離れた所では肉の処理をしている精霊も。
石を加工して作ったと思われるナイフで丁寧に肉を捌いていく。かなり手慣れているみたい。
「調理する知識あるんだ……」
この場にいる精霊達は洞窟の中で生まれた。
精霊は周囲の知識を吸収するらしいけど、あの洞窟の中では大した知識は吸収できないのでは?
もしかして、私が気付かなかっただけで、近場にいい街でもあったのかな?
「シロボシ! みんな料理ができてすごいね! これなら今夜は立派なバーベキューが楽しめるかも!」
「うん。なんか想像以上っていうか……私の知識にない調理とかしてて、驚いたっていうか……」
「あの洞窟の周辺には色々あったみたいだから、そこの知識を取り入れたのかも!」
「そうなんだ……」
あの辺に町とかあったのかな? でも、近場にあったら私も気付いただろうし……あ、もしかしてとっくの昔に滅んだのかな……
「確かキラナもあの洞窟内で生まれたよね?」
「うん」
私の質問にキラナは素直に答える。
「キラナはあの土地でさ、私が知らなそうな知識とか取り入れた?」
「うん! 大昔の知識とか沢山取り入れたよ!」
「大昔……?」
「うん。高度な機械が稼働してた時代みたい」
大昔に機械?
「あのね、シロボシ」
キラナはそっと私に語りかける。
「この異世界の文明は一度滅んでるみたいだよ」
『えっマジ?』
あまりの衝撃に、私は思わず地声で反応してしまった。
「あっ! シロボシ! バーベキューの準備ができたみたい!」
『あっうん』
「ギルさん、いっぱい食べていってね!」
「あ、ありがとうございます……」
星の精霊の準備の下、バーベキューパーティーは幕を開けた。
頑丈で燃えにくい枝で組まれた網の上に、大きなドラゴン肉が次々と乗せられて焼かれていく。
「シロボシ、こっちのお肉焼けてるよ!」
『うわぁ〜! すっごく美味しそう! キラナ、ありがとう!』
ドラゴンのお肉は牛とも鶏とも似つかない、全く新しいお味。
あのドラゴン達は食用じゃないから味や食感が心配だったけど、星の精霊達の頑張りによりかなり食べやすくなっていた。
『このタレ、味は濃い目でありながらさっぱりしてておいし〜!』
「私もこのタレ大好き! なんとなくレモンの気配を感じるよね!」
『うん!』
精霊達が作ってくれたタレはとびきり美味しかった。
「……!」
どうやらギルさんもタレを気に入ったらしい。無言で色んなタレを試してはいい笑顔を浮かべていた。
バーベキューの間、星の精霊達は私を甲斐甲斐しく世話してくれた。
タレを補充してくれたり、よく焼けたお肉を寄せてくれたり、木の実の器に新鮮なフルーツジュースを注いでくれた。ありがたい。
「シロボシ、フルーツアイス出来たって!」
『うわぁ〜! 宝石みたいで美味しそう! はい、ギルさんもアイスどうぞ!』
「はっ、はぃ……!」
異世界で初めてのバーベキューは、精霊達のお陰で大成功を収めた!
ひとつ欠点を挙げるとするなら、キラナの衝撃的なニュースの影響なのか地声から中々戻らず、今日はずっと地声のままで過ごしたことかな。
『楽しいバーベキューだね!』
「はっ、はぃ……!」
ギルさんは私の地声が聞こえる度に全身を震わせて怯えていた。本当にごめん。




