3話 クレーター大掃除
夕暮れ頃。素行の悪いレッドドラゴンがいるクレーター跡地付近にやって来た。
猫型マスコットの私と魔法少女キラナは、お友達になった黒ドラゴンのギルさんの背中に乗って、岩肌だらけの山々を越えていく。
果てしなく続く山を越えて、ついに中央にある巨大なクレーターに到着した。
跡地にはギルさんの話通り、沢山の真っ赤なドラゴンが屯していた。
『貴様らぁああああ!!』
クレーター跡地に到着するや否や、ギルさんはクレーターで休むレッドドラゴンに奇襲を仕掛けた。
口から青く輝く光線を何度も放っては、地上にいるドラゴンを容赦なく潰していく。
『ぎゃーっ!?』
『どうしたんすかギルさん! そんな怒って……!』
『俺達、ギルさんの言う通りに行動して……!』
『るせぇえっ!! テメェらまとめてぶっ潰してやるっ!!』
ギルさんは必死だった。星の大精霊である私から許しを得ようと、必死になって目の前のレッドドラゴンを蹂躙していく。
あの時はキラナに一方的にやられてたから強さはよく分からなかったけど、改めて見るとギルさん結構強い。
『ギルさんやめてください! オレ達が何をしたって言うんですか!』
『何を寝ぼけたこと言ってんだ! そもそもテメェらはいたずらに人間の村を潰して回ってただろうがっ!!』
『えーっ!? 別にいいじゃないですか!?』
『あんな動物なんかの味方するんですか!?』
レッドドラゴンもだいぶヤバい奴らだった。
『意味もなく村を潰して回りやがって……! 今まで消し飛ばされなかっただけでもありがたいと思えっ!!』
『でも、ギルさんは定期的に村に行けって……!』
『うるせーーーーっ!!』
そんなこんなで、怒りに任せて暴れ回ったギルさんにより、レッドドラゴン蹂躙はあっという間に片がついたのだった。
『シロボシ様、綺麗に片付けました』
「ありがとね」
ギルさんは地面に降り立ち、私とキラナはドラゴンの背中から降りた。
「それにしても、随分と派手にやったね……」
「足の踏み場もないよ〜」
『すみません、こちらも必死だったもので……』
地面はギルの光線によりボロボロ、辺りにはレッドドラゴンの撒き散らした色んな物で溢れかえっている。
「お掃除しないとまともに使えないね……」
「うん。使える物と使えない物とかで分けたいし……」
これは大仕事になりそうな予感。こうなったら、掃除ができる新しい精霊を作るべきかな?
「……ん?」
なんて考えていたその時、遠くから何か自分に近しい雰囲気を放つ存在を確認した。私は存在を感じ取った方角に目を向ける。
「何か来てる……?」
どうやらキラナも力を感じ取ったらしく、私と同じ方向を向いていた。
『?』
ギルさんは不思議がって私達と同じ方角を見つめる。
程なくして、夕暮れに染まる遠くの空から、キラリと何か光るものを観測した。やけに数が多い。
「あれは……」
『星……?』
「あっ、こっちに降りて来た!」
空から飛来してきた輝く何かの大群は、光の線を描きながらクレーター跡地に一斉に降り注いできた。
私達の前に現れたのは、灰色のまん丸達。
丸い手足につぶらな瞳を持つ、妙に可愛らしい卵みたいな彼ら。そんな彼らからは私と同じ星の力を感じた。
「これは私の……星の精霊だね」
「えっ? いつの間に生み出してたの?」
「いや、身に覚えがない……あっ」
ここで私は、洞窟内で誤って大爆発を起こしたことを思い出した。あの爆発で、私の力が洞窟内の宝石に染み込んだ可能性がある。
「多分だけど……ここにいる精霊達、洞窟の中に生えてた宝石の結晶かも」
「身に覚えあったんだ! じゃあこの子達は、シロボシの生み出した星の精霊ってこと?」
そんな星の精霊達は、わーっと地上を走って私達の元に駆けてきた。なんかすごく可愛いらしい。
「かわいーっ!」
キラナも星の精霊が気に入ったらしく、両手を伸ばして精霊の1匹を抱きしめた。精霊は大人しくキラナに抱えられる。
キラナが精霊の頭を撫でると、精霊は嬉しそうにピカピカ光った。かわいい。
「もしかして、あの洞窟からシロボシの後を追いかけて来たのかな?」
「なのかなぁ……」
だとしたらかなり健気。そんな健気な星の精霊達は、身振り手振りで私達に意思を伝えようとする。
「……もしかして君達、此処の掃除してくれるの?」
私の解釈に星の精霊達はコクコクと頷くと、小さな両手を広げて辺りに散らばり、クレーターの大掃除を始めてくれた。
精霊達は重力の魔法で地面を平らにしたり、要る物と要らない物を分けて置いたりしている。
要らない物置き場に置かれた物は、星の魔法で小さく小さくまとめられて、最後はワープの魔法で消し飛ばしていた。
こうして見ると、重力の力ってかなり便利だね。
「助かる〜!」
「あっという間に片付いていくね! シロボシ、私も手伝ってくるね!」
「キラナありがとう!」
同じく星の精霊であるキラナも、手元に抱えている精霊と一緒に大掃除に加わった。
『さてと……』
そんな中、私の背後にいたギルさんは地面からゆっくりと起き上がる。
「ギルさん、どうしたの?」
『あの、案内も済んだことですし、俺はここで……』
「まだ話は済んでないよ」
『えっ』
私はギルさんのお鼻に肉球を押し当てた。
「私、この世界について色々と教えてほしいって言ったよね?」
『あ……はい……』
「私ね、まだまだ聞き足りないことが沢山あるんだ。ね、もう少し此処に居てよギルさん。それに……」
私は怯えるギルさんに対して、さらに言葉を付け加える。
「ギルさんの所業、全部許したわけじゃないからね」
『……!?』
私の脅しにギルさんは全身を震わせ、離陸態勢を大きく崩した。
『あっ、あの……ごめんなさい……』
「いいよ。ねえギルさん」
『はいっ!』
「とりあえずクレーター跡地のお掃除、手伝ってくれないかな?」
『よっ、喜んでぇっ!!』
私のおねだりにギルさんは全力で叫ぶと、私の前で全身を黒く輝かせ始めた。
ギルさんを覆う黒い光は次第に小さくなって、やがて人間サイズに変化した。見た目は成人男性くらいの大きさだろうか。
……もしかしてギルさん、人間の姿になった?
軽率に人間の姿になるの、あまり好きじゃないんだけどなぁ。せめてドラゴン成分多めとかじゃないと納得しないよ。
まあ、見た目でどうこう言うのも良くないか。私はギルさんに目を向けて、ギルさんの新たな姿を確認する。
「……おっ」
ギルさんは、ドラゴンと人間を足して割ったような姿に変化していた。
見た目は若い男性だけど、所々を黒い鱗で覆われている。立派なツノが生えていて、白目の部分は黒くなっている。
「俺、人の姿に化けられるんです。これなら邪魔をせずに掃除ができるかと……」
なんというか……人間に化けられていると思っている人外って感じでかなりいいかも。
「へぇ〜」
「うわっ」
私は星の魔法「ワープ」を使い、人型に変化したギルに一瞬で詰め寄った。
「シロボシ様……ど、どうしましたか……?」
「ギルさん、すっごくカッコいいね」
「えっ」
私から出た言葉が予想外だったのか、黒い目を丸く見開いてキョトンとする。
「でも、見た目がいいからって許されるわけじゃないからね」
「あ、えっと……はい……?」
「ほら、掃除手伝ってきて!」
「はいっ!」
ギルさんは絶妙な表情をしたまま精霊達の大掃除に加わっていった。
「さて、私も手伝うとしますか……」
人型のギルさんを見届けた後、私も宙に浮いて移動してみんなの大掃除に加わったのだった。




