24話 雷の大精霊からのお手紙
スーパーでの買い物を済ませた後。満面の笑みを浮かべた私達は、両手に商品の入ったビニール袋を提げながらスーパーから退店した。
「菓子パ楽しみだね〜!」
「夜の鍋パも楽しみ! 後でお鍋の準備しないとね!」
「だね〜!」
『シロボシ様〜!』
「ん?」
そんな私達の前に、妙に慌ただしい様子の水晶玉っぽい精霊が現れた。
『シロボシ様! 失礼します!』
「ん? そんな慌ててどうしたの?」
私の問いに、星の精霊は大慌てのまま答える。
『雷の大精霊様の使いから、お手紙を預かってきました! 雷の大精霊様が、シロボシ様とお話をしたいとのことで……!』
「あ……」
忘れてた……
『こちらがお手紙です!』
精霊はどこからともなく手紙を取り出すと、私の手に手紙をそっと乗せた。
『では失礼します!』
精霊は軽く会釈すると、ワープの魔法で私達の前からパッと姿を消した。
「どんな内容なんだろうね。シロボシ、開けて確認してみてよ!」
「いや、ここで開けるのは流石に……とりあえず家で確認するよ」
「あ、その方がいっか!」
と、いうわけで私の家に帰宅。
「アイスから先に保管しないとね!」
「キラナ、荷物は頼んだよ!」
「分かった!」
キラナに荷物の分別を任せている間に、私は自室で便箋の封を切って中の手紙を確認した。
この世界に生まれたばかりだけど、手紙の中身は何となく理解できた。
物凄い丁寧な文章だったけど、話を要約すると……
『シロボシくん久しぶり! 君は大精霊の先輩のアドバイスに従って、難なく冒険者を追い払ったみたいだね!』
『まだ生まれて間もないのに慢心しないその姿勢、素晴らしいね! あ、そうそう! この間は断りを入れずに君の前に現れてごめんね!』
『ってわけで、手紙で事前に伝えることにしたよ! 明日のお昼頃に、君の街を訪ねるよ! よろしく!』
……って感じ。
『明日来んの!?』
「えっ!? シロボシどうしたの!?」
思わず低い地声で叫んでしまい、声を聞いたキラナが慌てて私の部屋に飛び込んできた。
「あ、キラナごめん。実は……」
私は手紙の内容を、かいつまんで説明した。
「雷の大精霊がここに来るの!? いいね! 仲良くなるチャンスだよ!」
「いや、素直に喜んでいいのかどうか……」
「何で?」
「アンダさんの言葉が妙に引っかかるんだよね……」
アンダさんは雷の大精霊を毛嫌いしている。そこまで嫌う理由が何かあるはずなんだけど、アンダさんは詳しく教えてくれない。
「確かアンダさ……アンダ様は、ゴール様を良く思ってないんだったよね? 理由もまだ聞いてないの?」
「うん……詳しく教えてくれなくて……」
確か雷の大精霊ゴールさんは人の文化が好きって聞いた。
もしかすると、ゴールさんは人間のように何かしら野心を抱く人で、何か思惑があって私に近付くんじゃないかとか考えちゃうんだよね。
……いや、それは考えすぎかな?
「とりあえずアンダさ……様に聞いてみたら?」
「そうだね……今夜の鍋パにオーラさんとアンダさん誘って、その時に聞いてみるよ」
「うん!」
その日の晩。鍋パのためにお鍋の準備していた時のこと。
「奴を街に入れるのはやめておけ」
アンダさん、鍋パに誘ったら速攻で家に来た。
「奴と関わっても、奴の我儘に振り回されて疲れるだけだ」
お鍋が用意されたテーブルの上に、お土産に持参した唐揚げを広げたアンダさんは、全力で大精霊の受け入れを否定してきた。
「でも、意味もなく否定するのもどうかと思って……」
「…………」
私の言葉に一理あるのか、アンダさんは黙り込む。
「シロボシ様のお言葉にも一理あります」
キラナと一緒にお鍋の準備を進めていたオーラさんが口を挟んだ。
「ゴール様は、一度やると決めたことは何としてでもやり遂げようとする豪快な方です。無視し続けたら、次にどんな手を使って接触してくるか分かりません」
まあ実際に、冒険者の精神の中にいた私達に接触してきたからね……
あの出会いだけで、相手がだいぶ愉快な大精霊だってことが分かったような気がする。
「つまり、ゴールさん……様がヒートアップする前に、ゴール様の要望を叶えようってことだね!」
「その通りです」
「私もそれがいいと思う!」
お皿を手に持ってこの場に現れたキラナは、お皿をテーブルに乗せながら話に反応する。
「何もしてないのに拒絶されたら、大精霊も嫌な気持ちになるかもだし……」
「無難に対応するのが1番です」
「そうだね」
魔法少女の2人はゴールさんを受け入れた方がいいと考えてるみたいだね。私も同じ考えだよ。
「…………明日は、俺も付き添う」
「アンダさんありがとう!」
最終的にアンダさんも、ゴールさんを受け入れる方針に変えたみたい。
ゴールさんを知る大精霊が協力してくれるのは、すごく助かる。
「さて、話がまとまったことだし……とりあえずまずはお鍋パーティー始めよっか!」
「やったー!」
そんなこんなで、大精霊2人と魔法少女2人による鍋パーティーが始まった。
「はい! これシロボシの分ね!」
「ありがと〜!」
キラナはお鍋の中身を取り分けて、私の分を手渡してくれた。さて、お味は……
「うわっ! お肉美味しっ!」
「うん、すごく美味しい! ダシがいい味出してる〜!」
「とても温まります」
お肉自体がものすっごく美味しかった。お鍋のダシだけじゃなくて、お肉自体にも物凄い旨味があった。
「確かこのお肉って、上等の肉の木から収穫したものなんだよね?」
この世界には肉の木っていう、幹の部分が肉になってる植物が存在する。
収穫する時は、木こりのごとく木を倒して豪快に収穫するのだとか。ファンタジーだね。
「植物からこんな美味しい肉が採れるなんてね……」
「人類の努力の賜物です。今はその人類は滅びましたが、一部技術はこうして世に残り続けています」
あ、この肉ってかつて存在した文明のものだったんだ。
「頑張ったんだねぇ〜」
「美味しすぎでしょ……このお肉、もっと買ってくれば良かった……」
私がそんなことを呟いた途端、私の隣にタコ型精霊がパッと姿を現した。
「シロボシ様! こちらどうぞ!」
そんな精霊の頭には、上質な肉の木が詰め込まれたパックが山積み。
「持ってきてくれたの!? ありがと!」
「どういたしまして〜! では!」
タコ精霊は一礼すると、その場からパッと姿を消した。
「いやぁ、少し呟いただけなのにここまでしてくれるとは……」
「ねえシロボシ」
キラナはお肉の入ったパックを手に取りながら話をする。
「もしシロボシが「もっと豪華なパーティーにしたい!」とか言ったら、精霊がとびきりのパーティーを用意してくれるのかな?」
「あり得るね……」
私の一声で精霊がものすごく働いてしまう。むやみやたらに変なこと呟くのはやめておこう……
ってな感じでお鍋を楽しみながら、私達はゴールさんをどう対策するか話し合った。
「奴は恐らく、シロボシの街にある未知の道具に興味を示したのだろう」
「未知の道具……」
「シロボシや様々な人物が描かれた透明な板の飾りや、透明な板で組み立てる簡易な小物入れなどだ」
あー、私のグッズのことね……
私から生まれた星の精霊はどういうわけか、私の色んな姿をイラストにしてグッズを作っていた。
アクリルスタンドや、そのアクリルスタンドを自分で組み立て作るペン立てとか……
特に大人気なのは、今の私の姿である猫型マスコットと少女シロボシのアクリルスタンドなのだとか。
「星の大精霊であるシロボシだからこそ、外の星の文化を知れるのだろう。だからこそ、ゴールに目をつけられた……」
「えーと……ゴールさんは道具に興味があるだけなんだよね? ならとりあえず、ゴールさんは無難に道具を交えて対応すればいいのかな?」
「いや、下手に興味を持たせるな。何が奴の琴線に触れるか分からん」
「仲良くしすぎてもダメなんですか?」
「……とりあえず、嫌なことを強制されそうになったら素直に嫌だと答えろ。でなければ、奴は自分の意思を延々と押し付けてくる」
ゴールさん、相当アクが強い人なんだね……
そんな話をしてる間にお鍋は終わり、いよいよメインディッシュに突入。
お鍋の締めとして炊いたご飯を入れて楽しんで、デザートとして出したアイスに色んなトッピング振りかけて食べたりと、4人で大いに楽しんだ。
一度、私が「ここでビンゴ大会が始まったら楽しいだろうな……」って考えたせいで、私の家で盛大なビンゴ大会が始まりかけた。
何とかその場を収めて、ビンゴ大会も鍋パも円満に終わらせたのだった。
「楽しかったー! シロボシ、じゃーね!」
「アンダ様、シロボシ様、さようなら」
「またねー!」
魔法少女2人は仲良く家に帰り、家に私とアンダさんの2人が残った。
「さて、明日のために色々と準備しておこうかな」
「手伝おう」
「アンダさんありがとうございます」
アンダさんに助言を貰いつつ、明日のゴールさんを迎え入れる計画を立て始めた。
「えーと、街の案内をするとして……アンダさん、ゴールさんは食べ物に興味ありますか?」
「安物ではない、美味い物なら。あと、変わった物に、興味を示す」
「なるほど……じゃあ、まずは表通りを案内して……」
寝る必要のない私は徹夜でゴールさんを迎える計画を立てた。
なんとかスケジュールを組み立た頃には、朝日が昇っていたのだった。
とりあえず一通り予定が完成して一安心。




