22話 大精霊の威厳
精霊を閉じ込めるカンテラの中にて。魔法の大精霊アンダさんと話をしていたら、新たな大精霊が割り込んできた。
「私の名前はゴール。世間では雷の大精霊とも呼ばれているよ!」
「えぇ……!?」
雷の大精霊を名乗る謎の紳士に、アンダさんの腕の中にいる私は困惑する。
「はじめまして! 君が新しく生まれた大精霊だね?」
「あ、えっと……」
「何しに来た」
私が困惑していると、アンダさんは敵意を剥き出しにしながら私をゴールさんから隠した。
「ああ、いやいや……危害を加えるために来たわけじゃないよ! 新しい大精霊が気になったから、ちょっと尋ねてきたんだよ!」
「ちょっと尋ねて来たって……」
此処は「ちょっと尋ねて」来られるような場所じゃない。
「あの……ここ、冒険者達の頭の中ですよ……?」
そう、ここは石にされた冒険者達の精神の中。誰もが簡単に来れるような場所じゃない。
「うん、そうだね!」
「どうやって此処に入ってきたんですか……?」
「培ってきた魔法技術で頑張ったんだ! 君に会うために、頑張って此処まで来たのさ! 朝、君の住処を尋ねてみたけど不……」
私の目の前で話をするゴールさんは突然、目の前から姿を消した。
「あれ? ゴールさん……」
「奴は此処から追い出した」
さすが魔法の大精霊。
「なんというか……押しが強い大精霊だったけど、いい人そうだったような……」
「そんなことない」
「そうなんですか?」
私の言葉をアンダさんはすぐさま否定する。
「アイツは人間の文明を好む変な奴だ」
「人間の文明……」
「人間の作った不便な物を集め、人間の街を再現して住む変わり者……下手に近付かない方がいい」
アンダさん、やけにゴールさんに詳しいね……さては腐れ縁とかいうやつだね?
「それよりシロボシ、あの冒険者達はどうする」
アンダさんは本題に話を戻した。
「何もせず逃しても構わないが、あの冒険者達は遅かれ早かれ、何者かの手により消されることになるだろう」
「私を捕まえるための生贄にされるんですよね? えーと……」
こんな状況に遭遇したのは初めてだから、どうしたらいいか分からない……
私が頭を悩ませていると、目の前のアンダさんは私に向かって口を開いた。
「……シロボシは、星の大精霊だったな」
「あ、はい。そうです」
「なら、いい方法がある。冒険者の意欲を削ぎ、自然支配派を黙らせられる、古くから使われているやり口だ」
───
「ねえ、まだ到着しないの?」
「大精霊はまだまだ先だ」
冒険者達は不思議な道具を手に持ちながら歩き、大精霊の元へと歩く。
「ちょっと休もうよ〜、私もうヘトヘト…………あっ」
「あれは……」
しかし、そんな冒険者達の前に、可愛らしい猫型マスコットの私が姿を現した。
「シロボシ!?」
「いや、さっき捕まえた奴と同じだが……違う奴か?」
「みたいだな……よし、あれも捕まえよう。おーい!」
冒険者のリーダーは私に声をかけるけど、私は返事をせず、直立不動のまま冒険者をじっと見つめる。
「返事がないな……」
「ねえ、なんか不気味なんだけど……」
マリンが不気味だと言うのも当然。何故なら、今の私は微動だにせず、これでもかってくらいに黒目を見開いた状態だから。
今の私を人間が見たら、かなり不気味に感じると思う。
現に、目の前の冒険者達は私に対して怯えだしてる様子。かなりいい感じ。
「あれ、なんかヤバい……?」
冒険者達がある程度怯えたところで、私は次の行動に出た。
私は冒険者の前で、自分の頭部を真っ二つに割った。
「ギャッ!?」
驚く冒険者達の前で、割れた頭部から暗闇が溢れ出した。
冒険者達は一瞬で暗闇に飲み込まれ、次の瞬間、3人の身体は果てしなく広がる宇宙へと放り出された。
星々が瞬く宇宙空間に漂う冒険者達は、呆然としながら辺りを見回した。
「ここは……星空……?」
「まるで夜空の中みたい……綺麗……」
「まさか……遥か上空に飛ばされたのか……?」
三者三様の反応を見せる中、遥か遠くから私が再び姿を現した。
猫型でも、鎧でもない、本来の姿で飛び出した私は、冒険者達に急接近して目の前で停止した。
「わっ!?」
「何だ、これ……」
「大きな……球……?」
冒険者の前に現れたのは、果てしなく大きな惑星。
「すごく大きい……まるで月のような……」
「うん、お月様そっくり……それに、とても大きな力を感じる……」
「凄いな……」
冒険者のマリンとレオンは、目の前に突然現れた星を前に感動している様子。
そんな中、冒険者リーダーは何かに気付いたらしい。途端に顔を青くして、震える声で仲間に声を掛けた。
「なあ、レオン、マリン……」
「リーダー、どうした」
「顔が青いよ? 何かあった?」
「……機械が、反応してる……」
「…………は?」
リーダーの持つカンテラ型の装置が、大きな星に反応していた。
「あの巨大な球体は……新しく生まれた大精霊だ……」
そう、本来の私の姿は大きな星だ。
無意識のうちに鎧で覆い隠してたみたいだけど、本当の姿はひとつの大きな星の形をしていた。
『奴らを遠ざけたいのなら簡単だ。正体を晒し、ほんの少し力を見せつければいい』
というアンダさんのアドバイスに従い、私は冒険者達に自らの正体を晒した。
「あれが……大精霊……?」
「話は通じるの……?」
「そもそも、あれじゃあ捕獲どころじゃないっていうか……」
アンダさんの作戦は効いてるみたい。大精霊を捕獲しようとしていた冒険者達は、目の前で浮かぶ巨大な私の姿に動揺している。
こちらの作戦通り、相手はだいぶ戦意を失っている。ここでトドメといこう。
私は冒険者の前で、魔力を解放した。
「……!?」
私から発生した魔力波は、冒険者の全身を通り抜けて、とんでもない速度で果てしなく広い宇宙へと飛んでいった。
「一体何が……」
「あっ! 星が……!」
私の魔力に触れた周りの星が、呼応するかのように一斉に光り輝いた。
「これは……」
「まさか、星を操作してるの……? 太陽も、月も、何もかもが……!?」
「……間違いない、目の前にいるのは……星の力を持った大精霊だ……目に映る星の全てが、あの大精霊の支配下……」
「そんな……!」
私の正体と力をその目で確認した冒険者一同は、完全に戦意を失った。
「あれは……」
リーダーは声を震わせながら、最後に一言だけ言い放った。
「俺達の、手に負えない……!」
アンダさんのアドバイスにより生まれた作戦 「大精霊の威厳を見せて人間さんを追い払おう作戦」により、冒険者達を見事追い払うことに成功した。
後日、精霊達から聞いた話によると、冒険者達は冒険業をやめてしまったらしい。
リーダーは田舎に戻って家業を継いで、レオンとマリンは大精霊を信仰する大きな施設に入ったらしい。
レオンに関しては、どういうわけか頭を丸めていたみたい。何で?
その一方で自然支配派は、私の捕獲はとりあえず断念する方針にしたみたい。下手に敵に回したら、この星自体が危なくなるって気付いたんだって。
そんなこんなで、とりあえず私の周りは平和になった感じかな。
「冒険者達には可哀想なことしちゃったかな……いや、あの3人は冒険者に向いてなさそうだったし、ここで断念できて良かったって感じかな?」
私は精霊が用意してくれたおやつ片手に、そんなことを独りごちたのだった。
……ん? 何か忘れているような……




