19話 猛勉強したの?
冒険者はアンダさんに片付けられてしまったらしい。
「冒険者達の命が危ない!」
私は慌ててアンダさんを探そうとしたけど、私が出向くより先にアンダさんがこの場に戻ってきた。
アンダさんは片手に妙な物を握りしめていた。
「戻った」
「……アンダさん、それ……」
「土産だ」
アンダさんは手に持っていた何かを投げ落とした。3つの小さな石柱のような物体は、私の前に転がる。
石柱には人間の顔がついていた。
『ギャーッ!?!?』
私は思わず地声で叫んで飛び上がった。ってかこれ、もしかして元冒険者!?
「シロボシ、こういうのは苦手だったか」
『苦手っていうかビックリした……!』
尻餅をついた私は、魔法少女キラナに助け起こされながら立ち上がった。
「アンダさん、次こういうのを持ってくる時は一言お願いします……!」
「分かった」
アンダさんは無表情のまま石柱を拾い上げた。
「ところで……その石は……」
私はとりあえず石の正体を尋ねる。まあ、何となく正体は分かるけど……
「此処に来ようとしていた冒険者共だ」
やっぱり……
「まさか人間が、こんな物体に成り果てるなんて……アンダさん、器用だね」
「ありがとう」
褒めてないよ……
「アンダ様」
私がお土産の石柱に困る中、魔法少女オーラさんはアンダさんを呼び止めて、私達から少し遠ざかった。
どうやら2人は、物を片手に何やら話をしている様子。
「?」
もし私が人間なら、2人が何をしてるか分からなかったかもしれない。
けれど、視野が異様に広い「星の大精霊」の私なら、2人の様子ははっきり見える。
私はその広い視野で、アンダさんとオーラさんが手に持っていたものを視界に捉えた。
「ん〜」
アンダさんとオーラさんは本を3冊持って話し合っていることが分かった。
初めて見る文字だったけど、なんて書いてあるか何となく分かった。
背表紙には「人間コミュニケーション」「友達の作り方」って書いてあって、本にはどうやって他人と仲良くなるかについて書かれてた。
オーラさんとアンダさんはその本をじっと眺めながら話し合って、しばらくして本を閉じると、アンダさんは私に向き合った。
「シロボシ、嫌な思いをさせて申し訳ない」
「あ、大丈夫。びっくりしたけど……」
まさかの謝罪。
もしかしてアンダさん、この世に生まれたての私と仲良くするために、わざわざ本で勉強してきたの?
確かに思い返せば、昨日のアンダさんと今日のアンダさんは少し違う気がした。
昨日までのアンダさんはなんか話のやり取りがぎこちなかったけど、今日のアンダさんは昨日より会話がスムーズだった……と思う。
私との交流のために、本で勉強してきてくれたのかな? だとしたらすごく嬉しい。
嬉しいんだけどさ。
オーラさんがもう1冊持ってた「恋のアドバイス」って本は何なの?
恋愛関係の本も人間のコミュニケーションについて書いてるだろうけどさ、何でもかんでも参考にするのは違くない?
もしかしてだけどさ。
朝、さりげなく私を待ってたのって、その本参考にした結果だったりする?
……まあ、コミュニケーションしようと頑張ってくれてるわけだし、文句は何も無いけどさ。
「シロボシ」
「うん?」
唐突にアンダさんに呼ばれた私は、素直に反応する。何だろう。
「シロボシの精霊が、冒険者の持つ道具の中に閉じ込められていた」
「……えっ?」
アンダさんはそう告げると、懐から灰色の丸い物体を取り出して私に見せてくれた。
アンダさんの懐から出てきたのは、星の精霊だった。
「!」
星の精霊は私に気付くと、その場からビュンと飛んで私の小さな胸元に飛び込んできた。
「彼はどうやら力の弱い精霊らしい」
私の胸元で縮こまる精霊を前に、アンダさんは説明をする。
「この精霊は、人間の所持する道具に閉じ込められ、強引にシロボシへの道案内をさせられていたようだ」
「そんな酷いことされてたんですか!?」
アンダさんの説明に、キラナが強く反応する。
「これが、精霊が閉じ込められていた道具だ」
アンダさんは返事の代わりに、冒険者が所持していたと思われる道具を私達に見せてくれた。
異世界で使われている道具にしては、やけに最先端な見た目をしていた。
「……かなり高価そうな道具ですね」
「これでも古い型のものです。作成したのはエルフの国のエルフ人で間違いないでしょう」
オーラさんは道具片手に説明を始める。
「エルフの国は最先端の国で、人間の国にいる自然支配派を裏から支援しています。なので時折、人間の国からこのような最先端の道具が見つかるのです」
「そっか……」
「……恐らくですが、一部の自然支配派に、新しく誕生したシロボシ様の存在が知られたのだと思います」
「だから、こんな小さな精霊を捕まえて無理矢理でも道案内を……」
この冒険者を派遣した人間は、新しく誕生した大精霊相手なら楽勝だと思ってたのかな。
例え対話目的だったとしても、人の数が少なすぎると思う。
もし目的が私の捕獲だったとしたら、たった3人で大精霊に立ち向かうだなんて無謀すぎる。
まあ、何はともあれ……
「とりあえず、この3人から話を聞いてみようかな」
まだ本人の口からは何も聞いてないからね。何をしたいのか、本人達から直接聞いてみよっか。
「アンダさん、ちょっといいかな?」
「なんだ?」
「試しにやってみたいことがあるんだけど……」




