16話 おもてなし
魔法の大精霊アンダさんの元に自己紹介しに行ったら、お礼にアンダさんの異次元に招待され、そこで壮大なおもてなしを受けた。
もう凄かった。
見たことない料理……というか、素材そのままの味をしたシンプルな料理は、これはこれで最高だった。
「ワイルドな味でいいね〜」
大きなお肉を焼いて塩胡椒のみで味付けしたものとか、ゆで卵に塩かけただけみたいな、そんなシンプルな料理が並んで、どれも美味しかった。
「水、すごく美味しい……」
「もっと出してもらう」
「アンダさん、ありがとうございます!」
にしても、こんなシンプルなものばかり食べていたと思われるアンダさんが、色んな味付けをされた唐揚げを好むとはね。
むしろ普段はあまり食事に関心が無かったけど、バイキングで食べた食事が美味しすぎて感銘を受けたとか?
まあ、何はともあれ歓迎会は楽しかった。魔法の精霊達は魔法を使ったパフォーマンスとかしてくれて、それも幻想的で素敵だった。
これはアンダさんの自己紹介も兼ねてた筈だから、ここでアンダさんに色々と質問もした。
「アンダさんの好きなことはなんですか?」
「景色」
「景色を眺めることですか?」
アンダさんは私の質問に頷く。なんか口下手だけど、会話が嫌いというわけでもなさそう。
それにアンダさんも、よく見ると楽しそうにしてるのが分かるし、決して感情が無いというわけでもない。
(最初は不安だったけど、もしかするとアンダさんとも仲良くなれるかも……?)
そんなこんなでお互いの自己紹介も歓迎会も終わって、私達は神殿の前に戻って来た。
「アンダさん! 歓迎会、楽しかったです!」
「……」
アンダさんは無言のまま私を見つめる。どうやらアンダさんも楽しかったみたい。
「シロボシ様、本日は本当にありがとうございました」
「いいえ〜、こっちも美味しい料理にパフォーマンスに、色々と楽しませてもらいました。ありがと〜」
「どういたしまして」
お互いに言葉を交わして感謝を述べ合う。
アンダさんとはなんやかんやで仲良くなれそうな気がする。それに、初めてできた大精霊の友達でもあるから大切にしたいところ。
「アンダさん!」
私に名前を呼ばれて、アンダさんは私に顔を向ける。
「今度、お互いに暇な時があったら、一緒に景色を眺めに行きましょう!」
「……」
アンダさんは無言のまま頷いた。
「じゃ、また今度!」
「おやすみなさーい!」
「シロボシ様、キラナ先輩、おやすみなさい」
こうして私達は別れの挨拶を済ませてから解散して、それぞれの帰路についた。
夜。私は今現在、自分の家に向かって1人で歩いている最中。
だけど私の背後を、先程別れたはずのキラナとオーラさんがついて歩いていた。
「……2人とも、家はこっちじゃないでしょ」
「シロボシ様の平和を守る為の護衛です」
「私も!」
「護衛してくれるのね、ありがと。じゃ、お言葉に甘えさせてもらおうかな?」
折角だから運んでもらおっかな。私はキラナに両手を伸ばしてみた。
「ほいっ!」
キラナは私を両手で拾い上げると、私を抱えたながら帰路を再び歩きだした。なんかすごくいい。
「楽ちん楽ちん」
「シロボシかわい〜」
キラナに抱えられながら夜の道を移動する。守られながら運ばれるのって最高だね。
「……」
そんな私を、オーラさんは無言のままじっと見つめている……私に興味があるみたい?
「あ、オーラちゃんも抱えてみる?」
「えっ」
視線に気付いたキラナはオーラさんに私を差し出す。
「あっ、えっと……恐れ多い……です」
「まだ初対面だから緊張するよね〜、じゃあ撫でてみる?」
「……」
キラナの提案にオーラさんは黙った。表情は固いけど、明らかに悪い感じには見えない。
ここは私もひと押ししてみようかな? と、いうわけで……
「オーラさん。もし良ければ、頭撫でてほしいな」
私はオーラさんに向かって頭を差し出した。
「……」
オーラさんは遠慮がちに手をそーっと差し出して、私の頭に手のひらを置いた。
そしてオーラさんは、ぎこちない手つきで私の頭を撫で始めた。
私の耳の間をオーラさんの手が往復して、キュッキュッと音が鳴る。
「……かわいい」
あっ、いま私のこと可愛いって言ったね?
私の可愛らしさはオーラさんには通じたみたいだね。へへへ、満足。
そんなこんなで私を抱えたキラナは再び歩きだして、ついに私の家の前へと到着した。
「そろそろ到着だよ〜」
「ありがとね、キラナ……あっ!」
私の家の前には魔法使いシリウス師匠の姿が。どこか困った表情で私を見つめている。
「シリウス師匠だ!」
「あの表情からして、どうやら私達のことをかなり心配してたみたいだね」
「シロボシの言う通り、確かにそんな感じがするね!」
「……シリウス様は笑顔そのもののように見えます」
オーラさんはシリウス師匠の表情の区別がつかないのか少し戸惑っているみたい。
「とりあえず私だけで話してくるよ、2人は帰ってて。よっと」
私はキラナの腕から飛び降りると、自分の足で駆けてシリウス師匠の足元へと移動した。
「シリウス。心配かけたね」
「……シロボシ様、アンダ様との話し合いは大丈夫でしたか?」
「うん! むしろ大成功って感じ!」
私はアンダさんの神殿で起きた出来事を全て報告した。
「で、なんやかんやで仲良くなったんだよ」
「シロボシ様、貴方……」
「何?」
「気は確かですか?」
ものすごい心配された。
「相手の情報をろくに得ずにそのような真似を……あまりにも早計です。その自己紹介が成功したから良かったものを……」
「あ、やっぱり?」
それ、私も思ったんだよね。
「仲違いする前に勝負に出ようとする気も分かりますが、もう少し時間を置くべきでしたね」
「だよね……」
シリウスの言う通り、今回は事を急ぎすぎたかもね……反省。
「……あっ、そうだ! シリウス師匠、ギルさんはどうだった?」
「彼はずっと素直に修行していました」
黒ドラゴンのギルさんは特に何もトラブルを起こすことなく、しっかり星の魔法の修行をこなしたみたい。
「私の本体が古代の魔導砲だと知った彼は、それはもう子どものように目を輝かせ始めまして……」
「シリウス師匠の本体に興味を示したんだ。ギルさんって歴史好きなの?」
「それなりに嗜んでいるとのことです」
ギルさんはどうやら古代の兵器が大層気に入ったらしい。
そういえばギルさんは本を嗜む人だったし、そういった知識を刺激する物は好む方なのかも?
だとしたら、そんなギルさんの前に「動いて喋る古代兵器」が目の前に現れたら、それはもう大喜びするのかもね。
……ギルさんって、それなりに知識あるんだよね?
大精霊のことも知識あったし、精霊も最低限の知識はあった筈……でも、なんで精霊だと思っていた私達を攻撃してきたんだろう。
いや、知識があるからこそかな。その知識で総合して考えた結果、私達より強いと勘違いして襲ってきたとか……?
「シロボシ様、ギルの知識には偏りがあります」
シリウス師匠は私の疑問を見透かしたかのような内容を話す。
「精霊の知識もそれなりにあるようですが、間違いも多く見られました」
「そっか……」
「修行だけでなく勉学も教える必要がありそうです」
「分かった。シリウスさん。ギルさんへの教育もお願いしていいかな?」
「かしこまりました」
ギルさん、シリウスさんの話は聞いてくれるみたいだし、勉強も頑張ってくれことでしょう。ひとまずこれで安心かな?
「じゃ、私はとりあえずひと眠りするね〜」
「シロボシ様、おやすみなさい」
シリウス師匠に優しい笑顔で見送られ、私は自宅の扉に手をかける。
そんな私の鼻にフワリと綿毛が舞い降りた。
「ふわっ……へっ……」
鼻がムズムズする。
「へっ……へーっくしゅいっっ!!」
なんとも不思議なくしゃみが出た。
それと同時に目の前にあった自宅が忽然と姿を消した。
「……あれ? 私の家は?」
「どうやら今のくしゃみにより力が暴発し、シロボシ様の御自宅をワープさせたようですね」
マジで?
「くしゃみひとつで建物を消し飛ばすとは……これでは外出もままなりませんよ。シロボシ様も、修行に励むように」
「はーい……」
前途多難。




