11話 修行はじめ!
地上で魔法使いの師匠【特大サイズ】を作ってきた私は、魔法少女キラナと師匠を引き連れ、勇み足でダンジョンへと移動した。
「ギルさーん!」
青空に浮かぶ数々の星をじっと眺めていたギルさんは無言で振り向く。まだご機嫌は直ってないみたい。
ギルさんがご機嫌ナナメの理由は何となく分かってるよ。頼りない私達に保護されるのが何となく嫌なんだよね?
と、いうわけで。そんなギルさんでも納得できる、私達より頼れる大人の存在を作って来たよ。
「ギルさん! 魔法使いの師匠連れてきたよ!」
「師匠……?」
ギルさんは、私の背後で静かに微笑む魔法使い男性をじっと見つめる。
「師匠はすごい魔法使いなんだよ!」
私はとりあえず師匠のことは、さっきその辺で出会った凄腕魔法使いという設定で紹介することにした。
「さっき知り合ったんだけど、すごく賢い人でね! 私達の修行を見てくれるって言ってくれてさ!」
「…………」
ギルさんより背の高い師匠をしばらく眺めた後、ギルさんは再び口を開いた。
「……名前は何と言うのですか」
あ、名前決めるの忘れてた。
「えーっと……」
「私の名前はシリウスです。無所属のフリー魔導士です」
おっ! 師匠もといシリウス、ナイスアシスト! 付け足した情報もあって更に信憑性が高まるね!
でも、ギルさんの疑いの視線はますます濃くなるばかり。何で?
「……なんでシロボシさんが先に「えーっと」って言ったんですか。さては名前決めてませんでしたね」
私のせいでシリウス師匠の頑張りが一瞬にして台無しに。
しかも「名前決めてませんでしたね」って反応からして、師匠が精霊であることもバレちゃってるかも。
生まれたばかりだと舐められるだろうからと、その辺で出会った設定にしたのに……
いや、まだまだ名誉挽回はできるはず。かなり苦しいけど……
「(メビウスさん、小粋なジョークで場を和ませて状況をあやふやにして!)」
「(シリウスです)」
「(ごめん!)」
小声でやり取りをした後、シリウス師匠はギルさんに向かって話を切り出した。
「貴方がギルさんですね、改めてご挨拶を。私はシリウスと申します」
「……初めまして」
丁寧な口調でご挨拶をするシリウス師匠に、ギルさんも僅かに戸惑いながらも丁寧な挨拶を返している。これはいい感じかも。
「私は先程、そこの畑の地下深くで屯していたところを採掘されました」
「は?」
シリウス師匠ちょっと?
「私は見ての通り、畑に自生する野菜が何よりも大好きでして……新鮮な根菜類を見つけては下に引き抜いて回収して……」
「畑に生えているのは人が育てた野菜です。勝手に生えているわけではありません」
シリウス師匠は支離滅裂なジョークを発し、ギルさんは冷静に指摘をする。
「しかし先程、畑を広げるために地面を掘り進めていた精霊達に、私の地下ハウスを発見されてしまいまして……」
「なんで畑を広げようと掘っていた精霊達が地下深くにいる師匠を発見できてんですか。畑広げるなら縦じゃなくて横に掘り進める筈ですよね」
ギルさんとやり取りは出来てるけども……
「私が魔法使いだと知った精霊達に、この土地で師匠になれと言い渡され、今に至るというわけです」
「…………はい」
ギルさん困ってんじゃん。
「シロボシ、ギルさん困ってるよ?」
「……よし! とりあえず修行しよっか!!」
とんでもない空気の中、私は強引に修行を始めることにした。
「あっ、ギルさんに力を与えるとこから始めないと! ギルさん!」
私は両手を向かい合わせにして力を込めると、手の中から小さな魔法石を生み出した。
宝石の中を覗くと小さな宇宙が煌めいているのが分かる。とても神秘的で美しい宝石だ。
「はい! 星の力!」
「力そのものを直接渡すわけじゃないんですね……」
「今は加減が分からなくて……物なら失敗しても大丈夫だからね」
「ッ……!」
ギルさんの口から小さな悲鳴が漏れた。
「ほらギルさん、手を出して」
「はい……」
私はギルさんの大きな手に、星の魔法石をコロンと転がした。
「綺麗……ですね」
「この魔法石があれば星の力を使えるよ。ワープは難しいかもだけど、重力で物を持ち上げたりはできる筈だからね」
ギルさんが魔法石を興味深そうに見つめる中、私は魔法石の簡単な説明をする。
「ギルさんの頑張り次第では、いつかは力を直接渡すかもね」
「……頑張ります」
力を直接渡すかもと溢した途端、少し気落ちしていたギルさんから強い意志を察知した。
どうやらギルさん、私が想像している以上に力を欲しているみたい。
「では……シリウス師匠」
私は改めてシリウス師匠に顔を向ける。
「ギルさんがこの力を使いこなせるように修行つけてあげてください! 私は遠くで力を使う練習しておきます!」
「分かりました」
「……」
シリウス師匠と2人きりにされると理解したギルさん、すごく不安そうな顔してる。
ギルさんが尊敬できそうな師匠を作った筈なのに、今のところシリウス師匠が尊敬されそうな要素ゼロだよ。
「じゃ、私達はこれで! 失礼します!」
「じゃーね!」
「あっ……」
とりあえず強引にでも2人きりにしよう。
私達は何か言いたげなギルさんをこの場に残して、私はダンジョンの奥地へとワープした。
しばらくして……
宇宙空間の奥地で、私はとことん力の使い方を特訓した。
頭の中にある知識を実際に使って、技の性能を試していく。
最初は重力の魔法で隕石を振り回して扱い方を学び、お次はワープの魔法で遠くにある惑星を近くに引き寄せたり元の位置に戻した。
キラナと私の位置を入れ替えたり、石の上にある宝石をワープで引き寄せる練習もした。
うんうん、力加減がだんだん分かるようになってきたよ。
そして今現在は、星魔法の攻撃魔法である「超新星」の特訓中。
因みに魔法の名前は前世の記憶を元に命名したよ。その方が分かりやすいからね。
「それっ!」
目の前に浮かぶ石に向かって力を飛ばすと、石は閃光を放ちながら消滅した。
「これが最小限の超新星。お次は大きめで……それーっ!」
お次は少し離れた宇宙に浮かぶ大き目の隕石に力を飛ばした。
隕石は凄まじい閃光を放出して、周囲の隕石を巻き込みながら消滅した。
「いい感じに力を小さく扱えてきてるね」
これなら、いざ何が起きても大丈夫。
それに、ダンジョン内で魔法を扱ったお陰なのか、最初の時よりダンジョンがかなり広くなってるみたい。
他にも大きな星が誕生して、そこに独特な魔物が発生してるのも確認できた。
あと、その辺の隕石から小さな宝箱も発見した。後で開けて確認してみよっと。
「やあっ!」
因みにキラナも別で修行中。ステッキを振り回して華麗な魔法捌きを見せている。
まるで映画のアクションシーンのようにド派手でかっこいい。可愛くてカッコよく戦える魔法少女っていいよね。
「いい感じ! ねえシロボシ」
キラナはワープで私のそばに移動してきた。
「そろそろ地上に戻る?」
「そうだね。そろそろお昼ご飯の時間だし……」
「シロボシってば相変わらず食べ物の事ばっかり考えてるね」
小さな宝箱をいじりながらお昼ご飯の話をする私に、キラナは半ば呆れ気味に反応する。
「ま、とりあえず地上行こっか!」
「うんっ!」
そんなこんなでダンジョンの最奥からスタート地点までワープ。星の魔法ってホントに便利。
「そうだ、ギルさんどうしてるかな……」
出入り口近くにまだ気配あるし、ギルさんは多分だけど最初の星で修行してるっぽい。
「んー」
察知した気配のある方向に視線を向けていると、視界だけぐんぐん先に進みだす。
程なくして、スタート地点から少し離れた大きな惑星に立つギルさん達を発見した。
「あっ、いた。あの赤い惑星にいる」
「あの星? 私には分からないけど、シロボシの目には見えてるんだね。2人はどんな感じ?」
「えーっとね」
しばらく観察してみたところ、どうやらギルさんはシリウス師匠の元で真面目に修行をしているようだった。
今は重力の扱い方を学んでいるみたい。
「ギルさん真面目に修行してるよ。必死になって石を浮かばせてる」
「ホント? 修行を嫌がってたあのギルさんかが?」
「なんか知らないけど、仲は悪くなさそうなんだよね……」
ギルさんは目の前のシリウス師匠を毛嫌いしている様子はない。
しかもギルさん、シリウス師匠に笑顔向けてるじゃん。2人ともだいぶ仲良さそうじゃない? 何があったの?
……でも、何はともあれコミュニケーションが上手くいってるようで良かった。
「とりあえずは一安心かな……」
「そうなんだ。なら、お昼頃だよって話しかけずに、2人きりにしておいてあげた方がいいかな?」
「うん。ギルさん楽しそうだし、そっとしといてあげよ」
とりあえず2人を見守った後、私は出口に続く階段に向かった。
「ん?」
目の前の出入り口が一瞬輝いたかと思うと、そこから1匹の星の精霊がすっ飛んで来た。
『!』
精霊はひどく慌てている様子で、私に懸命に先程起こった出来事を伝えてくれた。
「……えっ」
精霊曰く。
魔法の大精霊アンダさんが、朝食を食べた施設の隣に家作ってます!
「……どういうこと?」




