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CASE 027: 泣く砂の肖像

記録者


GIA南西沙漠支部


タリク・エン=ナセル




基本情報


事件名: 泣く砂の肖像


発生日時: アイオス暦1513年6月4日 午前10時20分


通報者: 遺物保存局 研究助手 ミーナ・ザフラ


事件場所: バシム砂漠北端、古代遺構内部の展示回廊


事件状況: 解決




被害者:


名前:アルダ・ネスリム


年齢:43歳


職業:遺物保存局 上級鑑定官


住所:カマール市東地区 官舎3番棟


死亡時刻:午前9時50分頃


死因:経皮吸収による神経系崩壊(古代染料由来毒物「ラシャルの涙」)




事件概要


カマール市近郊のバシム砂漠で発掘された古代遺構にて、展示準備中だった上級鑑定官アルダ・ネスリムが遺体で発見された。


遺体は壁画の保存作業中に倒れており、周囲に争った形跡はない。


壁画には「泣く砂の女神像」と呼ばれる図像が描かれており、死後にその“目”から砂が零れ落ちる現象が確認された。


現場の毒性反応から、古代染料に含まれていた特殊毒素が濃縮・再活性化していたことが判明。


事件性を疑われなかったが、後日、同行者であった研究員**オリファ・ヤーリ(29歳)**の行動記録と持ち物に不審点が浮上。


調査の結果、意図的な染料細工による毒物の仕込みが明らかとなる。




現場到着と検証


10:20 現地研究員より通報、第一発見者は助手のミーナ・ザフラ


10:52 GIA南西沙漠支部 タリク・エン=ナセルが現場入り


11:20 壁画の染料分析によりラシャル族由来の毒性成分を検出


11:40 保管されていた顔料容器から通常成分と異なる粉末を発見


12:10 オリファ・ヤーリの研究記録に不自然な空欄を確認


12:45 オリファの装備品から毒性染料の原材料を押収


13:20 任意同行後、証拠提示により供述を開始




現場検証の結果


被害者は素手で壁画の染料に触れており、皮膚から毒素が吸収されていた




「ラシャルの涙」は本来無毒だが、光照射と接触によって活性化する性質を持つ




顔料容器の底部にだけ“反応促進剤”が隠されていた




オリファが最終保存作業の指示を出し、染料の調合も担当していた




犯人の特定と供述


オリファ・ヤーリは静かに口を開き、以下のように語った。




犯人の供述


アルダは……彼女はずっと、遺物より自分を大切にしていた。


手柄のために、保存法を歪めた。


砂を、女神の目を、剥がしたんだ。


泣かなくなった像を見て、私は耐えられなかった。


あれは“祈り”だったんだ。


古代の人たちが、この世界の乾きを祈った形だったんだ。


なのに、彼女はそれを展示のために削り、塗り直した。


もう二度と、あの像が涙を流すことはなかった。


だから私は、代わりに彼女に“涙”を流させた。


乾いたこの砂の上で、もう一度、誰かが泣いてくれるように。




裁判結果


アイオス暦1514年2月17日、GIA南西管轄裁判所にて以下の主文が下された。




主文


被告人オリファ・ヤーリを、殺人および歴史的遺物への毒物使用、学術記録の偽造の罪により有罪とする。


文化保護の名の下で生命を奪った矛盾を重く見て、懲役32年の刑を言い渡す。




所感


記録とは、ただ保存することではない。


意味を読み、敬意を払い、未来へ伝えるためにこそ存在する。


“泣く砂の女神”は、再び涙を流した。


その涙が、過ちに気づくための水であることを信じて、私はこの記録をここに残す。




アイオス暦1514年2月20日 GIA本部にて事件記録受理。

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