CASE 021: 赤き羊の村
基本情報
事件名: 赤き羊の村
発生日時: アイオス暦1512年11月3日 午前5時40分
通報者: 村長 セリオ・アンダーン
事件場所: フローデ村(北方領域 第七自治区)
事件状況: 解決
被害者:
名前:ティモ・バラン
年齢:42歳
職業:羊飼い
住所:フローデ村南区 牧童小屋
死亡時刻:午前4時頃
死因:出血性ショック(四肢切断による多量出血)
事件概要
北方第七自治区の山間部に位置するフローデ村で、羊飼いティモ・バランが遺体で発見された。
村の中央広場に“赤い布”に包まれた状態で放置されており、発見当初から儀式的な犯行が疑われた。
現地調査の結果、村に伝わる古い慣習「羊の交換」に関わる内部衝突と判明。
犯人は村に滞在していた民俗学研究員**コルネリオ・アッシュ(31歳)**であり、被害者との間に個人的因縁があった。
現場到着と検証
05:40 村長セリオ・アンダーンより通報
06:03 地方警備隊到着、現場を封鎖
06:30 レナ調査官現地入り、遺体の状態と周辺土壌の採取を開始
06:54 遺体の四肢は鋭利な斧による切断と判明、出血による死亡を確認
07:20 赤布に付着した血液とは別に、特定の動物血痕(羊由来)を検出
07:48 村内民家より“記録映像式占術装置”を押収(犯行の一部始終を映していた)
08:15 映像から、アッシュがティモを襲撃する様子を確認
08:40 逮捕命令を発行、アッシュを村外の隠れ家にて拘束
現場検証の結果
犯行に使用された斧は儀式用の民具であり、村の旧神殿跡から持ち出されたもの
犯行現場には“交換の印”とされる古代文字が血で描かれていた
被害者は直前にアッシュとの口論を目撃されており、確執の存在が証言された
犯行映像には、アッシュが一方的に「贖いだ」と叫ぶ様子が記録されていた
犯人の特定と供述
アッシュは拘束当初、強い錯乱状態にあり意味を成さぬ言葉を繰り返していたが、落ち着いた後に次のように供述した。
犯人の供述
……彼は、僕の兄を殺したんだ。十年前、同じこの村で。
正式な記録には残ってない。事故として処理された。
でも村の連中はみんな知ってる。彼が追い込んだ。兄は追われて、崖から落ちた。
それを“仕方なかった”で片付けた。
だから僕は、同じものを差し出すしかなかった。
この村では、何かを奪ったら、何かを返さなきゃいけないんだ。
羊じゃ足りない。命には命だ。
古いやり方さ。あいつらが隠してるだけで、今も全部残ってるんだ。
僕は、その通りにやっただけなんだ。
裁判結果
アイオス暦1513年5月16日、GIA北方管轄裁判所にて以下の主文が下された。
主文
被告人コルネリオ・アッシュを、殺人および文化財の不正使用により有罪とする。
ただし、被害者の過去の違法行為を村が隠蔽していた事実を加味し、情状酌量の余地あり。
よって、懲役22年の刑を言い渡す。
所感
文化という名の沈黙は、時に正義の言葉より重く響く。
“記録に残らない真実”が引き起こすのは、理性では裁ききれない憎悪だった。
我々の使命は、事実を記録に残すこと――それが、もう誰も「赤き羊」を抱かなくて済むように。
アイオス暦1513年5月20日 GIA本部にて事件記録受理。




