CASE 022: 水面に咲いた声
記録者:
GIA南海域支部
サ・フェンロー
基本情報
事件名: 水面に咲いた声
発生日時: アイオス暦1514年6月12日 午前6時15分
通報者: 遊覧船「カレンシア号」船長 ディノ・アリステル
事件場所: 南海域サルマ湖水上区域 遊覧船「カレンシア号」船内
事件状況: 解決
被害者:
名前:サリア・エンドル
年齢:28歳
職業:音楽教師/詩吟演者
住所:オルメア自治区 第四音楽区C-5棟
死亡時刻:午前6時頃
死因:窒息死(喉部内圧破壊による窒息)
事件概要
南海域を代表する観光地・サルマ湖にて、遊覧中の船上で女性が突如死亡する事件が発生。
遺体の第一発見者は同船の乗務員であり、事件当初は心臓発作等の突発性事故とみられていた。
しかし現場検証の結果、死因は人工的な内部破壊による窒息と判明。
特殊音波による声帯圧壊が示唆され、GIAへ調査依頼が入った。
調査の結果、被害者の同僚であり、かつて舞台を共にした**音響技師マルセロ・フィーン(34歳)**が加害者であることが明らかとなる。
現場到着と検証
06:15 船長より通報、係留中の船上にて急報受理
06:42 南海域支部調査官リサ・フェンロー到着
06:55 死亡確認、喉元および鼓膜に過音波由来の損傷
07:20 船内ステージ機材より微細な異音発生装置を発見
07:45 同乗していた音響技師マルセロ・フィーンの機材バッグから共鳴設計図を押収
08:15 フィーンが任意同行に応じる
08:37 取り調べ中に自白
現場検証の結果
被害者は歌唱中に突然倒れ、死因は咽頭部の強制破壊と確認
船内機材の一部が改造されており、特定の声域と周波数に反応して共振を引き起こす仕様だった
被害者はその周波数に偶然合致する唯一の声域を持っていた
改造機材の図面と部品は、加害者フィーンの所有物と一致
犯人の特定と供述
フィーンは当初否認を続けたが、技術的証拠と録音ログの開示により自白。
以下は供述内容の抜粋である。
犯人の供述
あいつの声は、俺の人生を壊したんだ。
一度だけ、共に舞台に立った。あの夜、喝采は全部、あいつのものだった。
俺はずっと、音を創る側だった。なのに誰も俺の“音”なんて覚えていない。
あいつの声ばかりが褒められて、称えられて、残った。
俺が創った音響の“場”がなければ、歌えもしなかったくせに。
……わかるか? 声だけが、人の心を奪うなんて、おかしいだろ。
あの声が、俺の耳に残って、離れなかったんだ。
だから、壊した。
あの“音”を、この世界から消したかった。
俺が創った“音”でな。
裁判結果
アイオス暦1515年3月3日、GIA南海域管轄裁判所にて以下の主文が下された。
主文
被告人マルセロ・フィーンを、殺人および公的危険装置の不正改造の罪により有罪とする。
計画性と技術的悪用性を重く見て、無期懲役刑を言い渡す。
所感
この世界には、“声”が人を殺すことがある。
だが実際に命を奪うのは、いつだって“届かない感情”の方だ。
音を愛した者が、音によって破滅する――皮肉というには、あまりに静かで、痛ましい事件だった。
アイオス暦1515年3月10日 GIA本部にて事件記録受理。




