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CASE 013: 透明な時を歩いた者

記録者


GIAセレス支部


ニコラ・ヴァレンタイン




基本情報


事件名: 透明な時を歩いた者


発生日時: アイオス暦1512年1月8日 午後4時30分頃


通報者: ランブロー家警備主任 カルノ・テール


事件場所: セレス王国首都・北第七区 ランブロー邸


事件状況: 解決




被害者:


名前: イリナ・ランブロー


年齢: 27歳


職業: 政務補佐官


住所: セレス王国中央省庁舎居住区


死亡時刻: 午後4時20分〜4時30分の間(推定)


死因: 鈍器による脳挫傷(即死)




事件概要


政治的名家であるランブロー家にて、家令により当主の妹イリナ・ランブローの遺体が発見される。


状況証拠および目撃証言から、容疑者として当主の養子である青年、**ノエル・ランブロー(19歳)**が浮上。


当時邸内にいた者は全員、彼が「被害者の部屋に一人で入っていった」ことを見ていたと証言した。


さらに凶器の水晶製置時計には、彼の指紋がべったりと残っていた。




しかし、GIAによる記録調査の過程で、


事件発生前後15分間の“時間干渉”の痕跡が検出され、


彼がその“時間帯にこの世界に存在していなかった”可能性が浮上する。




現場到着と検証


17:02 通報を受けた地方治安隊が現場到着、遺体と血痕を確認


17:30 GIAセレス支部、記録干渉解析班が介入開始


17:45 事件発生時間帯の室内観測記録が“断絶”していることが判明


18:12 被害者の部屋に残された「魔術的微粒子」から、“非可視の転送魔術”の使用痕跡を確認


18:36 容疑者ノエルの衣服からは血痕なし、凶器以外の証拠は見当たらず


19:20 被害者の持っていた懐中時計に、“存在時差記録”と呼ばれる時空移動の痕跡を検出




現場検証の結果


・凶器の水晶時計には容疑者の指紋が残っていたが、付着時刻が特定不能


・事件時刻の記録媒体(監視球、魔導記録版)がすべて15分間だけ“白紙”状態


・容疑者はこの15分間、魔術的干渉で**“時間外”に飛ばされていた痕跡あり**


・転送魔術の発動記録は検出されたが、術者は不明(外部からの可能性あり)




犯人の特定と供述


容疑者ノエル・ランブローは一貫して犯行を否認。


証言では、事件時刻の記憶が「ほとんど抜け落ちている」と述べた。


また、彼の身体からは空間転移の副作用と一致する生体反応が確認された。




当初は動機も不明だったが、被害者が過去に“遺産分割”の不正書類を作成していた事実が浮かび、


一時的に「動機あり」とされた。




しかし、GIAの最終報告書においては――


「ノエルが事件時にこの時空に存在していなかった可能性が極めて高く、


殺害行為の実行は不可能である」


という結論が下された。




裁判結果


アイオス暦1512年6月12日、セレス中央裁判所にて以下の主文が下された。




主文


被告人ノエル・ランブローを、殺人の罪について証拠不十分により無罪とする。


本件における時間干渉の技術的限界を考慮し、将来的再調査の余地を留保する。


ただし、被告人は当面の間、GIA監察下に置くものとする。




所感


“証拠があるのに犯人が存在しなかった”という奇妙な事件だった。


記録はすべてを語らない。


記録すら成立しなかった15分間が、命を奪い、無罪を生んだ。


時間の中に“責任”はどこまで存在できるのか。


それを問われたのは、我々GIA自身だったのかもしれない。




アイオス暦1512年6月18日 GIA本部にて事件記録受理。

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