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CASE 011: 無音階段の死者たち

記録者: GIAネブラ支部 ユーリ・エルデン




基本情報


事件名: 無音階段の死者たち


発生日時: アイオス暦1509年2月28日 午後6時20分


通報者: 地下都市警備管理官 ヴェリク・ノルト


事件場所: ネブラ地下都市第三区・旧接続塔跡地


事件状況: 解決




被害者


名前:セス・リガン


年齢:36歳


職業:建築調査員


住所:ネブラ地下都市第二区


死亡時刻:不明(遺体発見日より3日以上前と推定)


死因:出血性ショック(両膝から下の欠損による失血)




名前:カム・ゼイド


年齢:29歳


職業:構造探査技師


住所:ネブラ地下都市第七区


死亡時刻:推定2週間前


死因:同上




名前:エナ・フローヴ


年齢:33歳


職業:記録外調査補助員


住所:登録なし


死亡時刻:不明(遺体損傷進行)


死因:同上




事件概要


かつて崩落し封鎖された旧階段塔区域で、不法侵入による事故死が疑われる通報があった。


通報時点では被害者1名のみとされていたが、捜査の過程で同様の状況で死亡した者がさらに2名発見され、


連続する“記録外失踪”事件としてGIAが介入する。




発見された3体はいずれも、同じ位置に倒れ、膝から下が切断されていた。


階段塔の構造自体は旧式の螺旋型で、崩落後以降の立ち入りは全面禁止されていた。


にもかかわらず、3人は“最上段から真っすぐに一直線に落ちたような体勢”で発見された。




現場到着と検証


18:42 通報を受けたネブラ地下警備隊が現場封鎖。


19:03 GIAネブラ支部の捜査官が現場へ到着。


19:14 階段跡地の中心部に血痕と破損した携行灯。


19:23 被害者のうち1体は失踪から2週間が経過しており、衣類・所持品の状態に差異が確認された。


19:31 壁面に記された古い刻印「NO STEP」「声を出すな」の痕跡を確認。


19:47 階段構造の設計図に、存在しないはずの“水平通路”が書き加えられていた。


20:10 被害者全員が同じ調査依頼を別個に受けていたことが判明。




現場検証の結果


・階段構造は現在の都市計画図には存在しない「三段目」が記録されていた。


・被害者3名の体勢は全員一致しており、外傷も同一。


・現場には音響記録用の旧型機器が残されており、最後の記録に“無音とされるはずの時間に微弱な音声波形”を検出。


・音源は螺旋階段の底部方向からのものだった。




犯人の特定と供述


犯人は、ネブラ都市情報局元技術官フェルミナ・レッド(45歳)。


10年前、旧階段塔の維持担当だった彼女は、構造不備を隠蔽するため階段内通路の閉鎖と記録抹消を行った。


しかしその後、地下構造を独自に探査する“記録外調査員”たちの存在に気づき、再び事故を防ぐためとして


通報を行わず、意図的に“落とす”仕掛けを施したことが判明。




底部の柵を切断し、わずかな音波誘導で階段上の被害者を誤って転倒させる構造を作り、


「通った者だけが勝手に死ぬ仕組み」に整えていた。




犯人の供述


私が殺したんじゃない。


私は“記録されなかったはずの階段”を守っただけ。


あれは造られるべきじゃなかった。


上ってはいけなかった。




人は、誰かが“残してしまったもの”を見つけたがる。


私たちは、それを“なかったこと”にするしかなかった。




彼らは、見てはいけない段に足をかけた。


それがすべてです。


それだけなんです。




裁判結果


アイオス暦1510年1月13日、ネブラ都市再開発評議会にて以下の主文が下された。




主文


被告人フェルミナ・レッドを、業務上過失致死ならびに遺構妨害の罪により有罪とし、


情報封鎖型終身拘束とする。記録上の死亡処理は猶予とされる。




所感


記録されない階段が存在するとき、そこには記録されない死が待っている。


沈黙のなかに積み重ねられた段差は、いつか誰かを滑り落とす。




都市が成長するたびに、消された構造がもう一度口を開く。


この事件もまた、“歩いてはいけなかった記録”のひとつだ。




アイオス暦1510年1月21日 GIA本部にて事件記録受理。

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