成人を祝う日
暗くとても広い洞窟の中。
顔を小さな角だけが生えた真っ白なマスクを付けた首から下を黒い包帯で巻き上半身に真っ黒なフード付きの服を着ている体の一部が欠損した人達が美男美女の苦痛に歪ませた頭部が乗った祭壇に向かい膝を着き祈っていた。
そんな異様な光景の中、一人だけ祭壇の手前で祈る他の者たちとは一際異様な気配を放つ者がいた。
その者は他の者とは姿が少々異なっていた。
その者は長髪でマスクは青く赤色の紋様が施され角は他の者たちよりも長く首から下に巻いた黒い包帯にもマスクと同様の赤い紋様が施されていた。
男は祈りが終わったのか立ち上がると何かを嗅ぐように鼻を鳴らせた。
「アッアアアッッ!」
「幸せの匂いがするッッッ!」
「何処もかしこも幸せの匂いで溢れているッッッ!!!!!」
「供物に見合う者もいることでしょう!」
「皆さん祈りは終わりましたね!」
「今夜は新月……」
「太陽の神バエトロも月の女神セレーナも今夜は見ていない」
「我々の神エステロが時間と言ってもいい!」
「さあ!さあ!さあ!」
「今夜は歴史に残るだろう!」
「最初は皆から理解は得られないだろう」
「だが!しかし!」
「皆がエステロ様を崇拝すれば我々が今夜行ったことを永遠に偉業として受け継がれるだろう」
「ではそろそろ他の場所も動き始めているだろう」
「我々も始めようか」
男はそう言うとフードを被った。
男とほぼ同時にその場にいた千人近くの信者たちもフードを被った。
そして洞窟を出て行ったのだった。
そんな事があったのがまだリットの村がお祭り騒ぎを始める少し前のことだった。
そしてリットが走り始めてすぐ後ろから聞き覚えのある声の叫び声が聞こえた。
リットはその声に驚き振り向くとそこには先ほどまで喋っていたハットンが背中から血を出して倒れていた。
倒れたハットンの後ろには古びた剣を持った真っ黒な服のフードを被った顔を小さな角だけが生えた真っ白なマスクを付けた首から下を黒い包帯を巻いている男が立っていた。
「ハッ、ハットーーーーーーーーーン!!!!」
リットは思わず叫んでしまった。
しかし黒ずくめの仮面を付けた男の背後の茂みから他の者が来る音が聞こえリットはは歯を噛み締めながら「敵襲!」っと大きな声で叫んだ。
その声で村の一部の者達は村が襲撃を受けているということを知り大声で全員に伝わるように叫びながらそれを知った男衆は武器代わりの農具を取ってきて最初の叫び声のもとへと集まって行った。
しかし村の男衆が全員集まる前にリットのもとに黒ずくめの仮面を付けた様々な道具を持った者達が多く茂みから出てきた。
そして何人かの農具を持った男達とリットを見るや黒ずくめの仮面を付けた者達は襲って来た。
リットは襲いかかってくる黒ずくめの仮面を付けた奴らの異様な気迫に押され一瞬、腰が引けてしまったが背中から血を流して倒れているハットンが視界の端に映ったことにより怒りによってリットは襲いかかって来た黒ずくめの仮面を付けた奴らに向かって殴りかかって行った。
「うおぉぉぉぉぉ!!!!!!」
リットは先陣を切って殴りかかりに行き黒ずくめの男が大振りの古びた剣を避けるとガラ空きの腹部に一撃を喰らわした。
それを皮切りにまだ成人したばかりのリットに先陣を切らせてしまったという事に情けなさを覚え怯んでいた数人の男衆は手に持った農具を強く握りしめリットに続いて黒ずくめの奴らに立ち向かって行った。
リットは黒ずくめの男に一撃喰らわせる事に成功したのは良かったが続々と走ってくる黒ずくめの奴らに対応できなくなって行った。
古びた剣や鎌で肉を裂かれ、棍棒で骨を折られ砕かれ、ピッチフォークで刺されたりもした。
リットはいつの間にか防戦一方になってしまっていた。
リットが致命傷をどうにか避けながら攻撃を防いでいるとリットの周りの黒ずくめ達は攻撃を止め前方の黒ずくめ達が道を開け始めた。
そこから出てきたのは長髪でマスクは青く赤色の紋様が施され角は他の者たちよりも長く首から下に巻いた黒い包帯にもマスクと同様の赤い紋様が施された男だった。
「ふむふむふむ」
「どんどん人が集まってきているようですね」
「ここに全員集めて攻めたのは実験のためでしたがここまで攻められないものですか?」
「まあいいでしょう」
「かなり血の匂いも強くなってきましたし頑張っているという事でしょう」
男は腰につけたレイピアを引き抜くとそれを自身の左手に突き刺した。
男の抜いたレイピアは最初こそ美しい銀色の刀身、装飾の施された金の柄は男が自身の手のひらを突き刺した事で刀身が黒く変色し柄は赤黒く変色していた。
「<ゴットブレース>」
男は手のひらに突き刺したレイピアを引き抜くと空に掲げてそう言った。
レイピアは黒い光を強く放った。
それを皮切りに全ての黒ずくめ達の黒い包帯から黒い煙のようなものが出始めた。
実は青いマスクの男がリットの前に出てから他の白いマスクの奴らは動きを止めその間、男衆に一方的にやられていた。
しかし黒い煙を出してからは致命傷を負ったはずの奴らは突然、立ち上がり青い仮面の男が来る前のように男衆に襲いかかった。
それからはあっという間だった。
男衆は凄い勢いで倒されて行き村の中心へと進んで行った。
「ま、待てぇぇぇぇぇ!!!!」
「ミーナのところへ行かせるかぁぁぁ!!!!」
リットは村の中心へと進んでいく奴らを止めに行こうと青い仮面の男に背を向けて立とうとしたところでドツッっという音と共に頭に衝撃が走りリットの目の前は真っ暗になった。




