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奴隷

ジャリジャリっと金属音が聞こえる。


瞼が重い、体はだるくて動かしたくない。


酷い匂いがする。


まるで肥溜めのような悪臭が鼻から離れない。


「うううっっ」


気怠い体を動かし壁に寄りかかると重たい瞼を開いた。


しかし目は霞み目を擦った。


その時に気がついたが金属音は自分の手首のあたりからも聞こえていることがわかった。


視野がはっきりとすると信じられない光景が広がっていた。


鉄格子のある狭い石造りの部屋、そこには汚物が散乱しておりリットを合わせて八人ほどの男と女が両腕と両足に拘束具を付けられていた。


「……こ、ここは」


「おおぉ」


「起きたか」


「……あんたは?」


「儂はラウルという」


「行商で森を馬車で走っていた時に賊に捕まってしまってな賊に殺されそうになってしまったもんだから全財産を全部差し出してペコペコしたらガラの悪い奴隷商に売られてしまったんじゃ」


「儂みたいな老ぼれほとんどタダで売られただろうがな」

「おっと話が逸れたな」


「ここは今、話した通りガラの悪い奴隷商の牢屋だ」


「なんで俺がここに」


「俺は…確か……」


「ううっっ」


「あれ?」


「何も…思い出せない」


「なんだお前、記憶喪失か?」


「頭から血を流してるってことは頭に攻撃を受けて連れてこられたってことだろうな」


「そう……なのだろうか?」


「お前、名前はわかるか?」


「な…まえ、名前はリトル、リトルだ」


「名前しか覚えてないのか」


「これはまた、運のない」


「なんでここはこんな……匂い」


「見ればわかるだろ」


「トイレがないからみんなその辺りで野糞するしかないんだ

狭いから考えて出すところを考えないと大変なことになるがな」


ガチャーーーッと遠くから扉が開く音が響いて聞こえてきた。


「おい…リトル」


「黙って頭を下げろ」


ラウルは小さな声でそういうと壁に顔を向けて横になった。


「チッ」


「クセェな」


まぁでもしょうがねぇよな。


せっかく邪教徒の強襲の騒ぎで今稼ぎ時なんだから。


王都は他の都市や町とは違いかなり手練れの邪信徒の集団が襲撃したそうだ。


都市の四割が壊されたらしい。


今王都は邪信徒の襲撃で破壊された都市の修復と邪信徒の逃亡先の調査などで邪信徒によってかなりの数を減らされた騎士団が出払っていて王都は他の都市や町に気を配れていない。


本当に最高だ。


ただ少し問題なのは、捕まえた量が多すぎてこの地下の牢屋がもうすぐ満室になっちまう。


だがこの稼ぎ時に攫うのをやめるわけにはいかない。


以前買った、元貴族のボロ屋敷を軽く手を加えればここに居る捕まえた奴の内、大怪我をした奴だけを移せば逃げ出すことはできないだろう。


「おい!お前ら」


「なんです?」


「ロビンの兄貴」


「お前ら大怪我をしている奴らだけ目を布で隠して口にも何か噛ませて上に連れてこい」


「なんでわざわざ兄貴まで降りてきたんですか?」


「上で命令してくれれば連れてきましたのに」


「いやね〜〜〜」


「先日手に入れた小柄の男の子が頭に大怪我を負っていたんだけど見た目が良かったもんで」


「男娼をやってる店や貴族のおもちゃ」


「もしそういう所に売れなくてもあの筋肉なら問題なく炭鉱とかに売れるだろう」


「あ〜〜〜」


「わざわざ見にきたのはその大物が無事か見にきたってことですか?」


「そんなに気に入っているなら医者呼んで治療してやった方が良かったんじゃ?」


「今そんな暇な医者がいると思うか?」


「今はどこも医者を欲してるんだ」


「ここに来てわざわざこれから売られる奴を治療してくる奴なんていやしないよ」


「そうですよね」


「すいません」


「じゃあお前ら奥から頼むぞ」


「はい!」


四人の男達が同時に返事をしてそそくさと奥へと行った。


「じゃあ様子を見てみるか」


男は少し歩くとリットの居る牢屋の前に立ち鍵で牢を開けると中に入った。


「さ〜てさてさて」


男はリットの髪を鷲掴みにするとグイッと自分に顔が見えるように向けた。


「顔はやはり良いな」


「顔色もまあ少し悪いが死んではいないな」


「七日後まで生きていてくれればこちらとしては良い」


「ただその怪我で此処は良くないか」


「お前も屋敷に連れて行ってやろう」


男はそういうと大きい声で人を呼びリットに目隠しをさせ口に縄を噛ませて運ばれた。


鼻腔には牢屋の肥溜めのような悪臭がこべり付いていたが男に担がれ男が階段を登り切りドアが開く音がすると先程までずっと嗅いでいた悪臭とは打って変わって清々しい美味しい空気が牢屋の肥溜めのような悪臭が残るリットの鼻腔を通り抜けていった。


その空気の変わりようになぜか頭がボーッとしてしまい気付いた時には馬車に乗っているようで体が揺れ、時より馬車が石を乗り越えたのか体が大きく跳ねたりしてとても気分が悪くなった。

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