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隣国で婚約破棄された娘をもらったのだが、可愛すぎてどうしよう  作者: 武州青嵐(さくら青嵐)
4章

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9話 モネの情報提供

「情報提供しようと声をかけてくれたんだな? ありがとう」

「別にサリュ王子を案じてるわけじゃないわよ。シトエン妃の安全が脅かされるのがいやなの」


 ……こいつ、なんでそんな「やめてよ、気持ち悪い」って顔をするんだろう……。

 ほんと、シトエン第一主義なんだな……。俺なんてシトエンを守るコマのひとつぐらいにしか思ってねぇ。まあ、それだからこそ、安心してシトエンを預けられるんだが。


「シトエンがなぜ狙われているのかについてなんだが。それは、竜紋がかかわっているのか?」

「竜紋?」


 珍しくモネが目をまたたかせた。ラウルも見逃さない。ちらりと俺に視線を送ってくるから、うなずいた。


「違うのか?」

「いえ、そういう意味じゃなくて。私たちは確かにシトエン妃にまつわることを請け負ったけど……。理由なんて知らないのよ。知らされない」


 モネの言動に嘘はないように見えた。それはラウルも同じなのだろう。


「ほかにもいろいろ聞きたいんだけど」

 そう切り出した。


「ルミナス王国が清掃人の拠点なのかい?」

「拠点らしきものなら各国にひとつはある。私たちはタニア王国での活動が拠点だったわ」


 あ、そうか。

 この姉妹もタニア人なんだった。

 そう思って、俺は驚く。


「ん? じゃあ、ひょっとしてティドロスにもあるってことか?」

「あるでしょうね。だけど私はどこにあるのかは知らない。基本的には私たちは国を出ないし」


 なるほど、だから違和感ないわけか。

 タニア王国にいるタニア人が暗殺者なんだもんなぁ。


 そういえば頭なんて、多国籍的な顔してたよな。どこの国の人間だって言ってもなんとなく納得できるような……。


「お前たちの頭は貿易商を装っていたが……。そうやって各国を回っているってことか?」

 ラウルが尋ねる。モネは頷いた。


「そうやって商品と一緒に情報も売っていると聞くわ」

「情報……」


 ラウルと顔を見合わせる。

 ということは、その中で竜紋に関する知識を得たということもありうる。


「どうやらティドロスに入り込んだらしい。ルミナス王国から連絡が来た」

 白い便箋を指でつまんでひらひらさせると、モネはわずかに口の端を下げた。


「……やっぱりシトエン妃をあきらめないのね」

「清掃人が得意にしているのはなんだ? なんでもいい。教えてくれ」


 俺が尋ねると、モネは腕を組んで片足に重心をかけた。


「清掃人によるとしか言えない。閨房術を使って情報を得る者もいれば、ふたつの短剣をつかって暗殺をするものもいるし……。王侯貴族の護衛のために騎士に変装するものもいるしね」

「多様なんだなぁ」


 思わず感心したらラウルに咳払いされた。


「シトエン妃を狙うとしたら、やはり外に出たときか?」

 ラウルが尋ねると、モネは首を横に振った。


「本気になればどこにだって入っていくわ。実際、王城内にも入り込んだでしょう? どこも一緒よ」


 それもそうなんだよなぁ……。


「一番安全なのは、見知らぬ人間を近づけないこと、じゃない? 侍女もメイドも執事も料理人も。古くから付き合いのある人間がいいでしょうね。ま、それでも」


 モネは肩をすくめた。


「カネになびく人間というのは一定数いるわ。それでも揺れないなら、揺れるように人質とるとか、ね」

「……やり方汚ねぇな」

「だって暗殺者集団だし」


 しれっとモネが言い、それから俺に問うた。


かしらを覚えている?」

「まあ……なんとなく」


 思い浮かぶのはあの白煙の中に消えた男。俺に大けがを負わせた男だ。

 ただ、本当に印象に残らない顔……なんだよなぁ。


「サリュ王子のように筋肉隆々というわけではないし、目立つ容姿もしていない。だけど強い。頭が格闘戦で負けたところを見たことはないわ」

「君たちのようなナイフ技が得意なのかい?」


 ラウルが尋ねる。モネは少し考えを巡らせるように天井を見た。


「ナイフも使うけど……。基本、その場にあるものならなんでも。枯れ枝で目を刺すとか、紐で頸動脈を止めるとか。濡れた布袋で窒息、とか」

「こわ……」


「頭が来たら、とにかく手が届く範囲は近づかないこと。多勢で押すこと、ぐらいかしら」

「なるほど、ありがとう」


 礼を言うと、また嫌な顔をされた。なんでだ!


「何度だって言うけど、サリュ王子のためじゃないわ。私たちを救ってくださったシトエン妃のためよ」

「そうかい」

「帰るわ。時間をとってくれてありがとう」


 あっさりした態度でモネが言った。


「もしなにかほかにも思い出したことがあればよろしく頼む」


 モネは軽く頷き、退室するそぶりをみせたものの、足を止めてくるりと振り返った。


「………それと。ひとつ、お願いがあるんだけど」

「珍しい。なんだ」


 ラウルも俺と似たような顔でモネを見ている。

 モネは言いにくそうにちょっと口の端を震わせたけど、意を決したように口を開いた。


「シトエン妃の誕生日の一か月後に、ロゼの……妹の誕生日があるの」

「へぇ、意外だな。いやあ、なんか真夏に生まれた感じがする」

「それ言うなら、団長もですよ。団長は春の朗らかな時に生まれてるんですから」


 いいじゃないか。冬眠あけみたいで。


「その……私がプレゼントを用意するから、王子からということであの子に渡してもらえないかしら」

「ん? いや、別にモネが用意しなくても。俺がなんか選んでロゼに渡すよ。世話になってるから……」

「だめです、団長!!!!!!!」


 うわっ、びっくりした!!!! 急にラウルが怒鳴りだすからめっちゃ驚いた!


「な、なんでだよ。シトエンが世話になってるしさ」

「あの小娘がなんか勘違いしたらどうするですか! あんた、不釣り合いな嫁をもらっているっていう自覚ありますか⁉」


「ラウルが俺にひどいこと言った!!!!!」

「余計な火種を作っているんじゃありません!」


 なんで俺、叱られた上にひどいこと言われなくちゃならんのだ⁉


「モネ! 君も妹のことを思うんなら甘やかすだけじゃなくて、びしぃっと引導渡すときは渡せよ!」

「うるさいわね、わかっているわよ」


 モネは舌打ちし、俺をちらりと見る。


「忘れて。じゃあね」


 そう言って退室した。

 あとには。

 悪態つくラウルと。

 悲しい気持ちになった俺だけが残された……。

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