これから
ジョージの家で食事をした翌朝。トーマは二日酔いに襲われていた。
「き、気持ち悪い・・・。そして頭が痛い・・・」
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫。面目ない。昨日の後半の記憶がほとんどないよ・・・」
「かなり酔われていましたからねえ」
「な、なんか変なことしてないよね?」
「と、特に何も・・・」
ミーアはそっと目を逸らす。
実は宿に帰ってから寝るまでの少しの間、トーマはミーアに絡みまくっていたのだ。内容は主に好き好きアピールだった。
「その反応は・・・きっと何かやったんだね・・・不快な思いをさせてしまったなら謝るよ・・・」
「不快な思いは何も!むしろ嬉しかったといいますか・・・」
「そ、そう?じゃあ深くは聞かないでおくよ・・・」
「そ、それでなんですが、昨日の帰り際にアンナさんから伝言を頼まれまして、今日のお昼すぎにもう一度来て欲しいとのことだそうです」
「そんな大事なこと言ってたの?全然記憶にないや・・・。昨日話しそびれたことでもあるのかなあ」
「ジョージさんが話したいことがあると言っていました」
「なるほど。じゃあお昼ご飯を食べたらいってみようか。そ、それまで横になっていていいかな?」
「はい。無理はなさらず・・・」
お昼まで休憩したトーマは二日酔いもだいぶ回復しミーアと共にジョージの家へと向かった。
「お、おうトーマ、ミーアさん。よく来てくれたな。と言っても昨日ぶりだが」
案の定ジョージも二日酔いに襲われているようで若干青白い顔をしながら2人を出迎えてくれた。
昨日食事を食べた場所に再び案内される。
「トーマ。お前昨日のこと覚えてるか・・・?」
「い、いや。ほとんど覚えていないんだ・・・。ジョージは?」
「実は俺もなんだ・・・」
「そうか・・・。深く考えるのはよそう・・・」
「そうだな・・・」
「男2人揃ってだらしないねえ。ねえミーアさん」
突然のアンナの振りにしどろもどろになるミーア。
「えっ!?そ、そうですね。あ、あのたまにはいいかな・・・と、思いもしますというか・・・」
「ミーアさんは誰かさんと違って優しいなあ」
「あんたそれ、どういう意味だい・・・?」
キッと横目でジョージを睨みつけるアンナ。
「ひっ!じょ、冗談だよ。あははは・・・」
昨日から薄々と感じていたがジョージはかなりアンナの尻に敷かれているらしい。
「そ、それで本題なんだが」
「あ、あぁ。話っていうのは?」
「2人はこの町でしばらく過ごしたいっていう話しだったと思うんだが、あてはあるのか?」
「いや、特にないからまずは役場でも行ってみようかと思っていたんだが」
小さいこの町では役場で仕事の斡旋も行っているのだ。とはいえ基本的に親の仕事を継いだり知り合いのところで働くことの方が多いが。
「やっぱりそうだったか。実は俺がお世話になっている船の船員が一人引退してしまって人手が足りてないんだ。それでトーマのことを親方に話したら是非どうだって言われたんだがどうだ?」
「本当か!?それは願ってもない話しだよ!」
「おっ!そうかそうか!でも何か他にやりたいことがあるなら無理強いはするつもりはないからよ。返事はまだでいいから少し考えてくれねえか?」
「あぁ!前向きに検討させてもらうよ。ミーアさんとも色々相談したいしな」
「ちなみに親方の元実家が今空き家だからそこを貸しても良いって言ってたぞ」
「えぇ!?至れり尽くせりじゃないか・・・。なんだか逆に不安になってきたかも・・・」
「警戒することはねえよ。面倒見がいい人なんだ。アンナと出会えたのも親方のおかげだしよ。やることさえしっかりやってれば大丈夫だ」
「あぁ、ありがとうなジョージ。そう言った人が多いのが田舎町のいいところだもんな・・・」
「そうそう。それぐらいしかいいところがねえんだから!」
はっはっはっと大袈裟に笑うジョージ。
「まさかジョージに就職の世話をしてもらうことになるとはなあ・・・」
「腐れ縁ってやつだな。まさかお前が戻ってくるとは思わなかったが。まぁ俺も父親になるからよお」
ジョージは自慢げに子供ができたことをカミングアウトする。
「父親?・・・もしやアンナさんに子供が!?」
「おう。実は俺も昨日知らされてよう」
「本当か!それはそれは、おめでとう!ジョージ、アンナさん」
「ありがとう、トーマさん」
アンナが嬉しそうに返事をする。
「あのジョージが父親かぁ・・・もうそんな歳かあ」
「そうだぞトーマ。この町だと俺らの歳じゃ遅いくらいだからなあ」
「そうだよなぁ・・・」
それから他愛もない話しをしてジョージの家を後にした二人。ジョージの働いている船で働くかどうかは明日の夜返事をすることにした。
宿への帰り道のこと。
「子供かぁ・・・」
「いいですねぇ・・・」
「いいよねぇ・・・」
「一応明日の夜に返事することにしたけど、俺はジョージの働いている船にお世話になろうと思う」
「わかりました。私はどうしたら良いでしょうか?」
「うーん。ちょっと考えがあるから、宿に戻ったら話すよ」
トーマは考え込むような顔をして答えを保留する。
「わかりました」
宿へと戻った二人。
いつになく真剣な表情で話し始めるトーマ。
「ミーアさん。さっきの話の続きなんだけど・・・」
「はい」
「その、驚かないで聞いて欲しいんだけど」
「わかりました」
「ミーアさんを・・・奴隷から解放しようと思う」
「はい・・・。え!?解放ですか!?」




