お墓参りと晩餐
予定通り2人はトーマの故郷巡りをする。
トーマは観光の前にまず両親の墓参りをすることにした。墓といってもこの町は海に遺灰をまくので墓の形があるわけではなく遺灰をまいた場所にお参りするだけだが。
「ここで両親の遺灰をまいたんだ」
両親の遺灰をまいた場所をミーアに教えて、座り込み目を瞑る。
特にこれといって報告することがあるわけでもないが、この町を出ていってからのことを思い出す。
両親が死んでしまってちょっとやけになって島を出たこと。行く当てもなくたどり着いた街でギルド職員として働いていたこと。ギルド職員時代が大変だったこと。ついに愛想を尽かして辞めたこと。ミーアを買ったこと。遭難して無人島で過ごしたこと。ミーアのこと。そしてこれからのこと。
島を出てから十数年もたったが思い出してみれば長かったようで短く感じたトーマの今までの人生は実はそれなりに充実していたのかもしれない。
過労死や精神が病んでもおかしくないような働き方をしたり、無人島で過酷な生活したりしても今まで生き抜けたのは健康に産んで健康に育ててくれて、ちゃんと教育を施してくれた両親のおかげだ。
最終的に”ありがとう”という感謝の気持ちだけがトーマの胸の中を支配した。
瞑っていた目を開けるトーマ。
後ろで待機しているであろうミーアに目を向けようとすると、ミーアも同じく隣に座って目を瞑っていた。
そっと目をあけるミーア。
「なにもミーアさんまでお参りしなくても良いんだよ」
「いえ、そんなわけにはいきません。私もお参りする必要があるのです」
「そっかそっか。ありがとうね。よし、行こうか!」
自分の両親なのにお参りしてくれたミーアに嬉しくなりながらその場を後にして故郷巡りを開始する2人。
トーマが昔住んでいた家や両親が働いていた場所、怒らせたらすごい怖い近所のおじさんの家、よく遊んでいた見晴らしの良い丘などを見てまわり、あっという間に夕方になった。
2人はジョージの家へと向かい玄関をノックするとすぐにジョージが出てきた。
「おぉ!待ってたぞ!さあ入ってくれ!」
居間へと案内された2人はジョージの妻であるアンナと挨拶を交わす。
「挨拶はほどほどにして飯でも食べながら話そう!」
ジョージに促されて全員が食卓につく。
「それで、まずはトーマの話から聞かせてくれよ!お前は今までどんなふうに過ごしてきたんだ?この町に帰ってきたってことは何かあったんだろ?」
ジョージの鋭い質問にトーマは一瞬考えた後、先ほど両親へ報告した内容とほぼ同じことを話す。
「それまたお前なかなかひどい生活をしてきたんだなあ」
トーマの今までの経緯を聞き、ドン引きしながらも田舎町では聞けないような話を聞けて楽しそうなジョージ。
「やっと仕事から解放されて自由になったと思ったら遭難ですか・・・まさに波乱万丈ですね・・・」
ジョージの妻であるアンナも驚きながら会話に参加する。
「無人島で生活が軌道に乗るまでは生きた心地がしなかったよほんと」
「そうでしたねえ・・・」
遠い目をする2人。
「で、でもまあ生きてこの町にたどり着けたんだからよかったじゃないか!しかしミーアさんがトーマの奴隷だとはなあ。2人の距離感を見てるととても主人と奴隷には見えないぜ?」
「はい。トーマさんは私にとても良くしてくれますので・・・」
「無人島で約半年も2人で過ごしたんだ。距離も近づくさ」
2人は少し恥ずかしがりながらもジョージの言っていることを認める。
「そうかそうか。そりゃそうだよなあ。相棒みたいなもんだな!」
理由を聞いて納得するジョージ。
「サーベルタイガーに襲われた時なんてどちらか一人だったら確実に死んでたよ。二人だからこそ生き抜けたっていうのは思い返せば思い返すほど事実だからねえ。俺の話はこんな感じだけどジョージはどうなんだ?こんな別嬪さんと結婚しちゃってどんな手を使ったんだよ」
「おう!俺とアンナの話か!アンナは俺が働いている船がとってきた魚を売ってる魚屋の娘でよ!船の親方の手伝いで魚屋に行った時に一目惚れしちまって猛アタックしたってわけだ」
「ほうほう。ジョージの猛アタックなんて迷惑だっただろうに・・・」
「なんてことを言うんだ!」
トーマのひどい言いようにジョージはわざとらしく目を見開いて怒る。
「そうなんですよトーマさん。本当にこの人ったら毎日お花を持ってきて本当に迷惑だったんですから」
「お、お前まで・・・」
アンナまで敵に回ってしまったジョージはたじたじになり、その様子を見てみんなで笑い合う。
「しかもそれを2年も続けられたんです。本当にひどい話でしょう?でもそれを2年も続けられると、最初は迷惑だったことが当たり前になってきて、ある日ジョージがひどく体調を崩して持ってこなかった日があったんです。その日はいつも来るジョージがこなかったことが寂しくって、その時に私もジョージを好きになっていることに気がついてしまったんです」
「へへ、継続は力也ってな」
恥ずかしそうに自慢げに胸を張るジョージ。
「2年も・・・」
「なんだかロマンチックです・・・」
トーマは2年もアプローチを続けたジョージにドン引きしたが、それと反対にミーアはうっとりした顔で話しを聞く。
「それでまあ3年の交際を経て2年前に結婚したんだ」
「そうかそうか。よかったなあジョージ。お前みたいな奴が・・・」
「お、おう。なんか馬鹿にされているような気がするけどありがとよ・・・」
そんな話しをしながら酒も進み、盛り上がりながら夜はふけていった。




