故郷へ
保険金を貰い船の予約をした2人は旅支度をすることにした。
今2人が今着ている服は船長のアレックスが気を利かせて譲ってくれた簡素な服だ。遭難していた頃に着ていた服は丈夫な服だったとはいえ度重なる探索やサーベルタイガーとの戦闘などでボロボロになってしまっていたことから一応手元には置いてあるがもう着ることはできそうにない。
船が出るのは5日後らしいのでそれまでの予定を決める。
「船が出るのは5日後。やっとお金が手に入ったことだし、数日分の着替えくらいは買わないとね」
「最初の街を出発する時に買っていただいたものも全てなくなってしまいましたし、結構な買い物になりそうですね」
「仕方がないさ。必要経費だからじゃんじゃん買おう!」
それから2人は旅支度に2日ほどかけ、船が出るまでの暇な時間はギルドで簡単な依頼を受けるなどして過ごした。
そして予定通り船は出発し、ついに旅の目的地であったトーマの故郷に到着する。
船から降りて町を一望する2人。
「やっと着いたなあ」
「やっと着きましたねえ」
この町を目指した時の予定では長くて3週間程度で着く予定だったが、実際に到着するまで約半年もかかってしまったのだ。やっと着いたという言葉の重みを知るのは2人だけだろう。
「知り合いがまだいるかもしれないから宿を決めたらちょっと町を探索してみよっか」
「はい」
小さい町なので宿も少ないためすぐに決まり町を探索する2人。
「10年以上離れていたけど思ったより変わっていないもんだなあ」
「そうなんですね。のどかな町並みですねえ」
「うんうん。それしかいいところがないんだけどねえ」
はははと笑いながら成人まで過ごした町並みを懐かしそうに眺めるトーマ。
「あそこが幼馴染の家だったはずなんだけど・・・」
昔の記憶を頼りに知り合いである幼馴染の家を見つけ尋ねるトーマ。
コンコンとドアをノックして大きい声でごめんくださーいと呼びかける。
「はーい!今でまーす!」
ガチャっとドアを開けて出てきたのは幼馴染であるジョージの母親、メアリーおばさんだった。
「あら?あなたは・・・もしかしてトーマかい!?」
「久しぶり。メアリーおばさん」
「やっぱりトーマじゃないかい!これまた大きくなったもんだねえ」
メアリーは懐かしむようにトーマを見つめる。
トーマも懐かしい気持ちと、この歳にして大きくなったなんて言われて恥ずかしくなり頬をかく。
「色々あって帰ってきたんだ。ジョージは今どうしているんだい?」
「ジョージは結婚して近くの家に住んでるよ!今漁に出ていて夕方には戻ってくるはずだよ。いつこの町に着いたんだい?」
「あいつは今漁師をやっているのか。この町に着いたのは今日なんだ」
「そうかいそうかい。長旅で疲れてるだろう?ジョージももう少しで帰ってくるだろうからお茶でも飲んで行かないかい?後であいつの家まで案内するよ」
「ありがとうメアリーおばさん。お言葉に甘えようかな」
「さあ入んな!」
今までトーマに意識を集中させていたメアリーはトーマの後ろにいるミーアに気づく。
「あら?あんたはもしかしてトーマの嫁さんかい?トーマも隅に置けないねえ!」
「い、いえ、嫁というわけでは・・・」
「じゃあ彼女かい!まあとりあえず入んな!」
2人はメアリーの勢いに飲まれて結局正式な関係を伝えることなくジョージが帰ってくる時間までトーマの昔話を聞かされるのだった。
ミーアはメアリーによるトーマが小さい頃の昔話に聞き入ってしまい気がつけば夕方になっていた。
「そろそろあいつが帰ってくる時間のはずだよ。案内するから着いておいで」
メアリーは2人をジョージの家へと案内する。するとちょうどジョージが漁から帰ってきたようで玄関の前で鉢合わせる。
「母さんこんな時間にどうしたんだ?ん?・・・もしかしてお前はトーマじゃないか!?」
「あぁ。久しぶりだなジョージ」
「やっぱりトーマか!成人して出ていってからだからもう10年以上になるなあ!」
「元気そうでよかったよ。久しぶりにこの町に来たからお前に挨拶しておこうと思ってさ」
「そうかそうか!お前も元気そうで何よりだよ!しかも別嬪さんまで連れちゃってよ!」
「ま、まあな。お前も結婚したそうじゃないか」
「そうなんだよ。これまた厳しい嫁さんでよ!お前にも色々話したいことがあるし、明日家で夕飯でもどうだ?今日と言いたいところだがこれから準備はできそうにないしよ」
「あぁ。じゃあ明日お邪魔するよ!お前の嫁さんも紹介して欲しいしな」
トーマはジョージと夕飯の約束をし少し話しをしてから、メアリーに案内の感謝を告げてジョージの家を後にした。
宿に戻った2人は食堂で夕食をとり部屋で一息つく。
「メアリーさんといいジョージさんといい気持ちのいい方達でした」
「漁師町だからね、みんなあんな感じさ」
「なるほど。トーマさんも昔はあんな感じの喋り方だったのですか?」
「そうだねえ。そうだったかも。でもギルド職員として働いてきたから言葉遣いはその頃より丁寧になったかもなあ」
「ふふ。ああいった喋り方をするトーマさんも見てみたいです」
「今更難しいかもなあ」
ミーアの冗談に笑いあう2人。
「明日はジョージの家で夕飯をご馳走してくれるそうだからそれまではこの町の観光をしようか」
「はい。楽しみです!」
明日の予定を決め、2人は明日に備えて眠りについた。




