初夜
翌朝、1階にある食堂で朝食を食べ終えて一息ついた頃2人のもとに役場の職員が迎えにやってきた。
2人は役場に行き、昨日対応してくれた職員から詳細な聞き取りや保険金についての説明を受ける。
改めて水竜に遭遇した時の状況やその後の島での生活などを説明するトーマ。
一通り説明を終えた次は保険金について役場の職員が説明する。
「率直に申し上げますと保険金は一人当たり金貨2枚になります」
「金貨2枚!?随分と多いですね・・・」
「えぇ。船での遭難は助からない可能性が非常に高いので他と比べると高めに設定されております。費用は乗船料金の一部で賄われています。一応乗船手続きの際に説明することにはなっているのですが説明すると不安を煽ってしまうこともあって言わないことが多いのです」
「そういうものなんですね・・・」
トーマが驚くのは無理もない。金貨2枚はトーマがギルド職員として働いていた頃の年収と同じである。しかも2人分なので金貨4枚だ。ミーアはトーマの奴隷なのに保険金が貰えるものなのだろうかとふと疑問に思うトーマ。
「その、ミーアは俺の奴隷なのですがそれでも貰えるものなんでしょうか?」
「えぇ、奴隷でも乗船料金を1人分お支払いしていれば1人とカウントされます。保険金を得るのは主人であるトーマさんになりますが」
役場の職員は淡々と説明する。ミーアがトーマの奴隷であることは聞き取りの際に確認済みだ。
「わかりました。ありがとうございます」
「聞き取りと説明は以上になります。保険金については手続きが完了するまで5日程時間がかかりますのでそれまでは宿でお待ちいただけますでしょうか?」
「はい。外に出歩いても大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫ですよ。もし不在でしたら宿に言伝を残しますので」
「わかりました。何から何までありがとうございます」
「いえいえ、これが仕事ですから。それに被害にあったのはあなた方2人なのです。生き延びてことの真相を報告していただけたこちらの方が感謝をいう立場ですよ。ありがとうございました。そして長い間の遭難生活、本当にご苦労様でした」
役場の職員はトーマとミーアに労いの言葉をかけ、説明を終わらせた。
それから2人は保険金を貰うまでの間、お金がなくて特にやることがないため島での経験を生かして冒険者ギルドでお小遣い稼ぎをすることにした。
まさかギルド職員として働いていた自分が冒険者の仕事をすることになるとは思っていなかったトーマは複雑な気持ちで初心者が受ける薬草採取に勤しんだ。
薬草を取り終えての帰り道。
「これが冒険者の仕事かぁ〜。思っていたより楽しいかも知れないなあ」
「ふふ。無人島での生活が体に染み付いているのか薬草探しがしっくりきた自分がいます」
「あはは。そうだよねえ、冒険者より冒険者みたいな生活をしていたもんね」
2人は笑い合いながら島での生活を思い出す。
トーマはせっかく冒険者の仕事をしているのだからもっと色々なことをやってみようと思いミーアに提案をする。
「明日は魔物の討伐依頼とかを受けてみない?初心者のクエストならサーベルタイガーを相手にしてきた俺たちなら余裕だと思うし」
「そうですね。大丈夫だと思います。やってみましょう」
「よし!じゃあギルドに戻って達成報告をしたら明日受けるクエストの下調べをしようか」
トーマは生き生きしながらこれからの予定を立てる。
ギルド職員だった頃は仕事内容的に受動的だったし考える暇もないくらい忙しかったため、それから解放されたトーマは働くことに対してやり甲斐や面白さを初めて知るのであった。もちろん冒険者業は体が資本で命の危険も伴うことから楽しいだけではないということは理解しているが。
その日の夜、湯浴みも終えてさっぱりした2人は部屋で寛いでいた。
「いやあ今日も疲れたね。そろそろ寝ようかな」
「そ、そうですね」
いつもの調子で話しをするトーマに対してどこかよそよそしいミーア。
トーマは不思議に思いながらも布団に入り込む。
「ふぁ〜〜今日は結構歩いたから疲れたねえ。ベットがあるって幸せだなあ。おやすみ〜」
「は、はい。おやすみなさい」
そう言って部屋の灯りを消すミーア。
部屋が暗くなって少し経ってから。
「トーマさん。起きていますか?」
「ん?まだ起きているよ」
少し眠たそうに返すトーマ。
「そ、そのトーマさんに話したいことがあるのですが・・・」
「うん?」
「そ、そそその、トーマさんは、その、いいい、いつ私を抱いてくださるのでしょうかっ」
「えっ?えええ!?あっえっ!?」
ミーアの突然の爆弾発言に仰天するトーマ。
「トーマさんが、その、無人島にいた頃から夜な夜な、その、林の影でゴソゴソしているのは知っていたので・・・」
「えっ!?知って?えっ!?」
突然の爆弾発言の次は突然カミングアウトにもはや言葉が出てこないトーマ。
「わ、私ではだめでしょうか!?」
「だ、だめじゃないよ!?」
「もう無人島でもないですし、その・・・準備はできておりますのでっ」
ミーアはもう恥ずかしさの限界だというように隣のベットでトーマと反対の方へ向く。
「で、でも俺なんかでいいの・・・?」
「ト、トーマさんがいいんですっ」
「・・・」
動揺のあまり何も話せないトーマは少しの間沈黙し自問する。
男トーマ、今攻めずしていつ攻めるのか。覚悟を決めよう・・・今夜卒業します。
トーマはそっとベットから立ち上がりミーアが寝ているベットに近づき腰掛ける。
それに合わせてミーアも体を起こしトーマの方へ向く。
なんとか心を落ち着かせようとするが心臓が張り裂けそうなほど激しく鼓動している。
それを悟られまいとゆっくり話しをするトーマ。
「ミーアさん・・・。その、ミーアさんが俺の奴隷とか関係なく、短い間かも知れないけど、無人島で2人で力を合わせて困難を乗り越えてきて、これからもずっと一緒にいたいっていう気持ちが強くなって、人としてあなたを好きになって、だからその、男女の関係にもなりたい。いい・・・かな?」
「はい・・・。私も・・・お慕いしております」
「ミーアさん・・・」
「トーマさん・・・。あっ」
トーマはミーアをそっと押し倒して優しく唇を奪う。
そこから先はただただお互いの気持ちと欲望をぶつけ合い、長くて熱い夜を過ごした。
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