遭難157日目
2人が島全体を探索し終え、一番の脅威がサーベルタイガーだということがわかり安心し、順調に生活を続け1か月近くが経過した頃。
お手製の罠で捕獲した魚を捌いて干物の作成をしていたトーマはふと海を見る。
今日も船は見えないなぁ。と思っていた時、視界の端にいつもは見えないものが映る。
「ん?」
もう助けが来ることを半ば諦めていたトーマはそれが何か理解するまで少しの時間を要した。それは間違いなく船であった。
「船・・・?船だ!ミーアさん、船!」
「船ですか!?」
「ほら!あれ!急いで狼煙をあげよう!」
「は、はい!」
トーマはミーアに船の場所を指をさして伝え、前回船が去ってしまった経験からいつ船がきても狼煙をあげられるよう備えていた煙が出る葉等をありったけ焚き火に投入していく。
ミーアも急いで作業に加わり焚き火の炎はどんどん大きくなり、黒い煙をモクモクと出していく。
「気づいてくれっ」
「少しずつ近づいてきていませんか!?」
「そんな気がする!声を出そう!おーーーーい!」
「おーーーーい!」
2人は浜辺に近づいて手を振りながら必死に叫び続ける。
前回船が去ってしまった時とは違いゆっくりと船が島へと近づいてくる。
「気づいてくれたんじゃないか!?おーーーーーい!助けてくれーーー!」
船は島から少し離れたところで止まり、甲板に人が見えたと思うと手を振り返してくる。
「こちらに手を振っていませんか!?」
「ほんとだ!きっと気づいてくれてるんだ!おーーーい!助けてくれーーー!」
船の上で数人が何か作業している様子が見え、しばらく見ていると船から小舟を海へ下ろし出した。
そして人が乗り込み島へとゆっくり近づいてくる。2人は必死で手を振りながら助けを求める。
するとついに小舟に乗っている人から返答があった。
「聞こえてるぞー!今行くから待ってろー!」
「おぉ!ついに助けがきたよミーアさん!」
「やりましたねトーマさん!」
2人は興奮しながら小舟が近くに来るのを待つ。
そしてしばらくして人を3人乗せた小舟が島へと辿り着き、その中でも一番偉そうな男が話しかけてくる。
「あんたたちどうしてこんな島にいるんだ?ここは無人島だったはずだが・・・」
「それが・・・」
トーマは今までの経緯をその男に伝える。
港町から故郷の島に船で移動中に水竜に襲われたこと。なんとかブレスを避けて生き延び、2人だけがこの無人島に漂着したこと。漂着してからもう5か月以上経過していること。
「あの船の行方がわからなくなっていたのは水竜に襲われたからなのか・・・」
「俺たちが乗っていた船について何か情報が?」
「あぁ、と言っても5か月程前に突然消息を絶った船があったから捜索隊を出したが見つかることはなかったっていう話なんだが・・・」
「ということは水竜に襲われたことは知られていないんですね・・・」
「そうなるな。今までわかっていなかったということはおそらくあんた達以外に生き残りはいないんだろう・・・この島の近くに人が生き延びれるような島が他にあるわけでもないしな」
「なるほど・・・生き残ったのは俺たちだけか・・・」
「にしてもよく無人島で5か月も生き残ることができたな。俺も船に乗っているからわかるが知識がない奴が無人島で5か月も生きていくなんてかなり難しいだろう」
「俺はもともとギルド職員で初歩的な知識なら結構あったんです。それでなんとか・・・」
「そういうことか。でも知識があるだけじゃうまく行かないことも沢山あっただろう?よく生き延びてくれたよ」
「運がよかったんです・・・たまたま飲み水に苦労することもなかったし、危険な動物に襲われることも・・・あったけどなんとか乗り越えられたし」
「そうかそうか。色々あったんだな・・・。詳しい話を聞きたいところだがまずは話しを進めよう。俺たちはあんたが出発した港町に向かっている最中なんだ。あんた達を乗せてもいいと思っているがもちろん乗っていくだろう?」
「もちろんです!ずっと助けを待っていたんです!よろしくお願いします!」
「よしっ!俺たちも仕事があるんであまり待つことはできねえ。荷物があるかは知らんがあるなら早速ここを出る支度をしてもらえるか?」
「はい!すぐ済むと思います。ところでお名前をお伺いしても?私はトーマといいます。こちらの女性はミーアといいます」
「あぁ、自己紹介がまだだったな。俺はあの船の船長をしているアレックスっていうもんだ。よろしくな!」
アレックスはニカっと笑って船乗り特有の太い腕をトーマ達に差し出し、それぞれと握手をする。
それからトーマ達は拠点に戻り、短刀と斧、そして初めて戦ったサーベルタイガーの牙と食料を持ち今までお世話になった拠点に別れを告げ、アレックス達が待つ小舟へと戻った。
「お待たせしました」
「早かったな。まあ漂着して無人島生活していたんじゃ荷物なんてたいしてねえよなあ!まあ乗りな!」
アレックスは豪快に笑いながら2人を小舟へと促す。
そしてついに小舟が出発して船へと向かう。
トーマとミーアは約5か月もの間過ごした無人島を感慨深そうに見つめる。
2人はついに無人島を脱出することに成功した。
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