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遭難118日目〜

 島の1区画目と2区画目をかなりの日数をかけて探索した2人はついに3区画目の探索を開始した。


「多分今回探索するエリアがサーベルタイガーの縄張りだと思われるから気を引き締めていこう」


「そうですね。1区画目と2区画目にもいなかったので個体数は少ないのでしょうか」


「おそらく多くはないんだろうね。まあそこそこ大きい島と言えど食料も限られているからあまり増えないのかもしれないね」


「なるほど。個体数が少ないのであればあまり殺さない方が良いかもしれませんね」


「うん。食物連鎖のバランスが崩れてしまうだろうから極力は殺さないでおこう」


「わかりました」


 2人は会話をしながら探索を進めていく。

 これまでかなりの範囲を探索してきた2人はこの島だけで言えば探索のプロになっており進むスピードや動物を発見する速さが探索を始めたばかりの頃と比べてかなり早くなっていた。


 探索を開始してから三日目の夕方。


「いました!サーベルタイガーです!」

 ミーアはついに森を歩いているサーベルタイガーを発見し声を潜めながらトーマに伝える。


「やっぱりここら辺が縄張りだったんだ。理由はわからないけど太陽の当たり方とかが関係しているのかもね」


「あの余裕そうな感じを見るとやはりこの島で一番強いのはサーベルタイガーかもしれませんね」


 ひそひそ2人で話しているとサーベルタイガーは徐に2人がいる場所に視線を向けた。

 サーベルタイガーは嗅覚も鋭いためかなり距離が離れていても獲物の匂いがわかるのだ。


「ん?気づかれたか!」


 トーマがそう言ったと同時にサーベルタイガーが一気に距離をつめてくる。

 この島で頂点と思われるサーベルタイガーはどんな動物でも自分の獲物でしかないのだ。サーベルタイガーの目には獲物は二匹並んでいるように見えているのだろう。

 襲って来なければどうこうするつもりはなかったが、襲われてしまえば話しは別だ。


「トーマさん。下がっていてください。私が応戦します」

 ミーアは気をたぎらせながらトーマに言う。その声には有無を言わさぬ強い意志が宿っていた。


「わかったよ。後ろから援護するからね」

 トーマはミーアの様子を見て素直に後ろへ下がる。


「グルルル・・・」


 サーベルタイガーは2人のそばまで近づき、5m程離れたところで一度足を止める。

 前回同様この距離から一気に襲いかかってくるつもりなのだろう。

 ミーアは前回の経験を生かし、逆に自ら攻めることにした。

 その踏み込みは常人では捉えられないようなスピードであった。


「ふっ!」


「グルッ!?」


 この島の動物たちはサーベルタイガーを見ると途端に逃げるか睨み合いながらゆっくり後退する。その経験しかなかったサーベルタイガーは突然距離をつめてきた獲物に困惑し声をあげる。


 サーベルタイガーが困惑した一瞬の隙にドッっという音がしてサーベルタイガーに槍が突き刺さる。ミーアの気はもはや上級冒険者クラスになっておりスピードはサーベルタイガーを遥かに上回っていた。


「グルルルアアアァァ!」


 突然の痛みに理解が追いつかずに悲痛の叫び声をあげるサーベルタイガー。


「あなたに恨みはないですが、サーベルタイガーを屠ることは私にとって意味があります。死んでください」


 ミーアはゾッとするような冷めた声でサーベルタイガーに話しかけ、さらにひと突きして止めを刺す。

 それはあっという間の出来事だった。個体は違えどもサーベルタイガーとの戦闘の結果が前回とは全く異なることにトーマは不思議な気持ちになりがらミーアの背中を見つめる。


 ミーアはずっと悔やんでいたのだ。自分の方が気の扱いに長けており、集中していればサーベルタイガーに初めて襲われた時に避けることぐらいできたこと。奴隷である自分が主人であるトーマに守られたこと。さらにそのせいでトーマに大怪我を負わせてしまったこと。怪我のせいで高熱を出してしまいトーマが死にそうになってしまったこと。

 あらゆる悔しさがミーアの胸の奥にはずっとあって、自分の手だけでサーベルタイガーを仕留めることができれば少しは胸のつっかえが取れるのではないだろうかと思っていたのだ。


 死んだサーベルタイガーを悲しそうな目でじっと見つめるミーア。


「やりました。なんだかあっけなかったですね」


「ミーアさんは強くなったからねえ」


「こんなに簡単に仕留めることができました。あの時この力があればと、心の底から思います・・・」


「そうだねえ。でも、あの時を乗り越えたからこそ、今があるんだよ」


「そうなんです・・・そうなんですが・・・・・どうしてもそう考えずにはいられません。あの時のことを心のどこかでずっと後悔している自分がいます」


「後悔?」


「はい。サーベルタイガーの攻撃を避けることができたはずなのに、萎縮して避けることができずにトーマさんに大怪我を負わせてしまったことが・・・悔しくて・・・」


「ミーアさんは気の扱いは達人級だけど戦闘経験なんてなかったんだからああなって当たり前だと思うよ。俺だってあの時かっこよくミーアさんを守りきれなかったことが悔しくてたまらないしさ」


「それはっ!」


「だから後悔してしまっているなら、これからまた同じことがないように努力しよう。お互いにさ」


「そう・・・ですね。そうですね。後悔しているのは私だけではないんですもんね・・・」


「うんうん。頑張ろう、2人で!」


「はい。頑張りましょう。2人で!」


 2人ともから元気かもしれないがお互いを励ましあう。2人しかいないこの島で生きていくためには後ろ向きになんてなっていられないのだ。


 それから2人はその後数匹のサーベルタイガーを見つけたが接敵することはなく、気づかれないように慎重に探索を進め10日ほど時間をかけて3区画目の探索を終了させた。

 

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