遭難63日目〜
なんとか熱が下がり命の危機を回避したトーマだったが当然左腕に受けた傷はまだ治ってはいない。
「なんとか右腕でできることをやるよ。と、行っても薪を拾ってくるくらいしか活躍できそうにないけど」
はははと笑いながら自分の役割について話すトーマ。
「食料調達方法も安定して余裕がありますのでトーマさんは無理をなさらず安静にしておいてください」
「わかったよ。そうだなあ、次襲われた時に足手まといにならないよう気の訓練を重点的にやろうかな。座っていてもできるしね」
「それはいい案ですね。とにかく腕の傷を治すことに専念してくださいね」
それからトーマの傷が大方塞がるまで10日程の時間を費やした。
食料調達は主にミーアが行い、トーマは片腕でできる雑用をこなしながら気の訓練を行っていた。
かなりの大怪我だったため傷の状態がよくなるまで2週間以上かかることを想定していたトーマだが思っていたより早く治ったことに驚いていた。
早く治ったのは気の訓練を行っていたことが大きな要因であると考えられた。トーマが気の訓練をしていた時怪我を負っている場所に気を集中させると痛みが和らぐことに気づき、気づいてからは四六時中腕に気を集中させていたのだ。
気は身体能力の向上だけではなく治癒能力も向上させるということが判明した。
「大分傷がよくなったよ。ちゃんとした治療をしていないからかなり引き攣った感覚が残っているけど」
「ここまで治れば私も安心です。また高熱がでたりしないかとても心配でした」
「本当に心配をかけたねえ。でも今日から日常生活を再開できそうだよ。この島での生活を日常生活と呼んでいいのかは微妙なところだけどね」
「ここでの生活ももう長くなりますし日常生活と言っても良いのかもしれませんねえ。ところで療養中は気の訓練をかなりしていたと思うのですが何か変化はあったのですか?」
「うーん。正直変化があったかどうかは検証していないからわからないんだけど、感覚的には結構上達したと思う。ミーアさんの超越体験後の能力計測も兼ねてまた2人とも検証してみようか」
「そうですね。お互い能力が上がっていると思いますので楽しみです」
それから2人は前回同様、垂直跳びと重い石をどこまで持ち上げられるかで能力の検証を行った。
結果は気を使わない状態と比べてトーマが1.8倍程、ミーアが4倍程であった。
トーマの1.8倍でもかなり変化を感じられるのにミーアは4倍程である。もはや化け物である。そりゃあサーベルタイガーを撃退できそうとか言うわけだ。
「俺は前回1.5倍程でミーアさんが2.5倍くらいだったよね」
「そうですね。正直自分がこんなに強くなるとは思いもしませんでした・・・」
「俺も驚いているよ・・・。ていうか俺の1.8倍でも結構すごいと思うんだけど!?4倍ってもうすごすぎてよくわからなくなってきちゃったよ!もうミーアさんの才能について驚くのはやめようと思っていたけど無理だったよ・・・」
「超越体験をしたのが大きかったのだと思います。あの時から明確に自分の中に感じる気の質が変わりました」
「超越体験かぁ。俺もしてみたいなあ・・・」
トーマは遠い目をして空を見上げる。
「冒険者だとどのくらいの割合で超越体験を体験しているのですか?」
「うーん。多分全体の1割に満たないと思うなあ。手っ取り早く超越体験するには自分より格上の相手に挑むのが一番なんだけど普通格上の相手と戦ったら死んじゃうし、勝てたからと言って必ずしも超越体験できるわけじゃないらしいしね」
「私の場合は後ろから攻撃しただけなんですが・・・」
「超越体験するための細かい条件なんかは判明していないらしんだ。似たような条件でも超越体験をする人もいれば、しない人もいるって聞いたことがあるし個人差が大きいのかもしれないね」
「なるほど。個人差ですか。私はたまたま条件に合致したと言うことですね」
「そうなるかな。俺は格上の相手に挑むなんてしたくないから超越体験は一生無理かなぁ・・・」
そう言うトーマだが男たるもの強くなりたいのが性である。いつかは体験してみたいと思いを馳せるトーマであった。
ふと思い出したようにトーマが話し出す。
「そういえは身体能力の向上もいいんだけどさ、戦える武器を作った方がいいと思ったんだよね」
「確かに槍などがあると獣相手に有利に戦えそうです」
「そうそう。それとこの間は遠距攻撃が石を投げるくらいしかできなかったでしょ。だから弓矢もあるといいと思うんだ」
「遠距離攻撃で牽制や手傷を負わせつつさらに近づいてきたら槍などで応戦するといった形ですね」
「うん。まあ、あのサーベルタイガーみたいなやつに弓矢が有効かは微妙なところだけどねえ・・・」
「しかし石を投げつけるよりは効果があると思います。小動物などの狩りにも使えると思いますし」
「狩りかぁ。今までは魚や芋がメインだったけど狩りができるようになればお肉を食べられるね!」
「お肉を食べられるようになれば食事のレパートリーが増えるので良いと思います」
自衛目的なのか狩猟目的なのかがわからなくなってきたが2人は武器を作ることを決めた。




