遭難43日目〜
廃村で手に入れた斧で拠点周りの整備を行ったトーマは廃村周りの探索を試みることにした。
「拠点周りの整備もあらかたできたし、この間見つけた廃村の周りを探索してみない?」
「そうですね。私も気になっていましたので賛成です」
「じゃあ今日の罠チェックが終わったら早速廃村に向かってみようか」
探索の準備をした二人は早速出発し、前回見つけた廃村近くの沢に辿り着いた。
「今から廃村を探索してもすぐ暗くなってしまうだろうし今日はここで休んで明日の朝から探索しようか」
「わかりました」
薪を集めたり食料を調達したりと野営の準備を開始する。
野営にも慣れてきたので二人はそれぞれの役割を把握しテキパキと行動していく。
次の日、早朝から廃村周りの探索を開始した。
「人が住まなくなった理由はなんなんでしょうか」
「うーん。辺鄙な場所だから単純に人口減少とかじゃないかなあ。まあ俺の故郷も辺鄙な場所だけどねえ」
話しをしながら村のさらに奥へと足を進める二人。
「うーん。何にも見当たらないねえ」
「そうですねえ」
辺りをかなり探索したが人工物らしきものは見つけることができなかった。
元はあったのかも知れないが人に使われなくなってから月日が経ち朽ち果てたりしたものもあるのだろう。
何かないかと辺りを見回している時にふと違和感を感じるトーマ。
「ん?ここ一帯に生えてる植物はこの島に来てからみたことがないな」
「確かに拠点の周りではみたことがない種類ですね」
「もしかするとここに住んでいた人が何か栽培していたのかもしれないね」
「ですが実がなりそうな植物でもなさそうですねえ」
「うーん。もしかすると根の部分が食べられる植物なのかも知れないしちょっと掘ってみようか」
手頃な石や木を持ってきて土を掘り始める二人。
すると地面の中から石ではないゴロゴロとした塊が出てきた。
「これは芋じゃないか!?」
「芋ですか!?」
掘り起こしたものについている土を払い落として短刀で切り分けてみるトーマ。
すると今までにみたことがある芋と同じ色をした断面があらわになる。
「やっぱり芋だ!」
「やりましたね!芋を主食にしている地域もありますから栄養は抜群だと思います!それに芋なら栽培ができるのではないですか?」
「持って帰って拠点の周りに植えてみようか!」
「芋はある程度保存も効きますし栽培ができるようになればさらに食料事情が良くなりますね!もっと掘りましょう!」
二人は嬉しそうにどんどん芋を掘り起こしていく。
ふとミーアが気になったことをトーマに質問する。
「ところでこの芋は本当に食べられるのでしょうか?」
「どうだろう・・・村の近くにあったということを考えると食べられる可能性がかなり高いと思うけどちょっと不安だから実験とかをして慎重に食べようね」
芋を掘り起こした二人は木やツルで作ったカゴに大量の芋を入れる。
その後村の周りをさらに探索しかがそれ以上は何も見つかることはなく二人は沢の近くまで戻り野営を開始する。
焚き火を囲みながら明日の予定について話しをする。
「明日拠点に戻ったらパッチテストをしてみようと思う」
「パッチテストですか?」
「うん。芋をすりつぶして腕に塗りつけてみるんだ。体によくないものが入っていれば皮膚が赤くなったりするんだよね。反応がないからと言って絶対に無害というわけでもないらしいけどね」
「そんな方法があるんですねえ」
「腕で大丈夫だった後は唇。唇も大丈夫だったら舌の上。それでも大丈夫であれば最後は食べてみるっていう感じだね。これまたギルド職員時代に冒険者に教えていた基礎知識の一つなんだ」
「ギルド職員はなんでも知っていないといけないんですねえ」
「まあギルド職員は知っているだけで実践できるかと言われればできない人の方が多いんだけどね」
「知っているだけでもすごいですよ本当に。現にとても役立っていますしね。ギルド職員もそうですけど冒険者もいろんな知識を覚えないといけないんですね」
「ところがどっこいでさ。そんな細かいことまで覚えたり勉強したりする人はごく僅かなんだ。荒くれ者が多いからね」
「なるほど。でもこうやって窮地に追いやられた時に大事な知識なんですね」
「そうなんだねえ。身を持って体感しているよ。こういう体験をした人が知恵を後世に残そうとして新人冒険者の教育内容とかに入れたのかもね」
「とても大事なことだと思います」
ミーアは心の底からそう思いながら頷く。
そんな話しをしながら二人は交代で眠りにつき、翌日大量の芋を背負いながら拠点へと帰還した。
「早速パッチテストをしてみようか」
「はい。腕に塗ればいいのでしたよね」
「うん。毒に対しての反応は個人差があるから念のために先に俺がやってみて、大丈夫だったらミーアさんがやってみようか」
「わかりました」
それから二人は交互にパッチテストを行ったが、結果は反応なしで毒が無い可能性がさらに高くなった。
「食べられそうだね!最終確認は今夜俺が1つ食べてみることにしよう」
その日の晩、土器をうまく利用して芋を蒸すミーア。
「蒸せたと思います。どうぞ」
「普通に美味しそうだね・・・。あつつ。じゃあいただきます!」
熱々の芋の皮を剥いてかぶりつくトーマ。
「う、うまい!そして甘い!」
「甘い系の芋なのですね。美味しそうです・・・」
ミーアはまだ自分が食べられないので少し恨めしそうに、美味しそうに芋を頬張るトーマを見つめる。
「もっとこう、甘くない普通の芋を想像していたけど想像以上に甘いよ。こりゃあうまいなあ。とても毒がありそうには思えないよ」
「美味しいのであれば大丈夫そうではありますね。でも何があるかわからないので異常があればちゃんと知らせてくださいね」
「うん。ありがとう」
次の日になってもトーマの体に異常は見られなかった。
二人は芋を手に入れた。




