遭難11日目
トーマは魚の動きが活発になる早朝が過ぎてから昨日設置した罠の確認に向かった。
服を脱いで潜り罠を引き上げると30cm程の魚が3匹入っていた。
「やった!」
まさか一発で、しかも3匹も魚をとることができるとは思っていなくて声に出して喜ぶトーマ。
持ってきた短刀で血抜きをして内臓を取り出す。
子供の頃に見たことがある魚なので食べられることはわかったが、内臓まで食べられるかどうかはわからなかったため万が一のことを考えて内臓は捨てることにした。
身は食べられても内臓に毒がある魚は結構いると聞いたことがあるためだ。
トーマは罠に餌をつけ直してそのまま同じ場所に罠をしかけて小屋に戻ることにした。
「ミーアさん見て見て!」
ミーアにとれた魚を見せつけるトーマ。
「わぁ!魚がとれたんですね!」
「うんうん。まさかこんなにうまくとれるとは思っていなかったよ」
「しかも3匹もとれるなんてすごいです!」
「同じ場所に罠を設置し直してきたから夕方また見てくるよ。今日の食料調達は少なめでいいね」
「食料調達の時間が削れるのであれば他に色々やることができますね」
「そうだね。今日は成果も出たことだし罠を何個か増やそうかな。沢山とれるに越したことはないし干物にできたら保存もできるしね!」
「何個か作成するのであれば私も作ってみたいです。二人で作れたほうが早いでしょうし」
「材料さえあれば簡単に作れるから二人で作ってみようか」
二人は森で材料を集めて罠を作成することにした。
トーマはミーアに罠の作り方を教えていく。
「できました!」
「できたね!初めて作るのに俺のよりうまいじゃないか!ミーアさんは手先も器用なんだねえ」
「家にいた頃は編み物もしていたのでこういうのは得意かもしれないです。あと気を手に集中させていたので力が必要な場面で苦労することなく作ることができました」
「気を戦闘ではなくものづくりに活用するとは・・・冒険者相手のギルドで働いていたからか全然思いつかなかったよ」
「なんとなくできる気がしたのでやってみました。指まで意識を集中する必要があるので訓練にもなって良いと思います」
「集中力が必要になるけどいいことづくめじゃないか!俺ももう少しうまく操れるようになったらやってみるよ」
「力が必要な作業は全般的に気を使うようにしてみたいと思います」
二人は手探りだが気の訓練方法を昇華させていくのだった。
二人が追加で作った罠は一人当たり2個で計4個だ。
ミーアに潜り方と設置の仕方を教えるために一緒に海へ来た。
「ミーアさん泳いだことは?」
「恥ずかしながらないです・・・」
「じゃあまず泳ぐ練習から始めようか」
「はい。よろしくお願いします」
そうして下着姿になった2人は浜辺から少し深いところへ行って泳ぐ練習を始めた。
ミーアの下着姿は何度見てもいい意味で目によろしくないがこの島に来てから何度か見ているので初めて見てしまった時に比べてトーマは落ち着いて対応することができるようになってきていた。
「じゃあ俺がゆっくり後ろに下がるから、ミーアさんは俺の手に掴まって足をバタバタさせて泳いでみようか」
「はい。やってみます」
「これは簡単にできたね。じゃあ次は俺が横についているから1人で泳いでみよう」
そんなこんなでトーマの指導のもとミーアは泳ぎ方と潜り方を覚えた。
若い女の子に泳ぎ方を海で教える。時たま不慮の事故でボディータッチもある。なんて最高の日なんだ。女性経験が皆無だったトーマは一生の思い出として心に刻みつけた。
泳ぎの練習をして罠を設置し終えた頃には夕方になったため早朝に仕掛けた罠を確認したところ魚が1匹入っており2人は喜びながら拠点へと帰還した。
帰還してから昨日ミーアが作成した貝の干物を確認したところ、大分水分が抜けておりおおよそ成功しているように見えた。
干物作りは成功しそうである。
「今日は暗くなってしまったし魚の干物は明日以降とれた魚でやってみようか。今日取れた分は全部食べてしまおう」
「このサイズの魚を2人で4匹も食べられるなんて幸せです・・・」
魚は今日の夕飯のメインディッシュにしようと二人で相談して全部とっておいたのだ。
調理方法はあいも変わらず木に1匹丸ごと刺して焚き火で焼くだけだ。
この島にきてからものを食べられない日はなかったが満腹になった日は新築祝いをした日やタコが取れた日を除いてなかった2人は夢中でかぶりついた。
「うまい!やっぱり海の幸は魚が一番だね!」
調味料がないため焼く前に海水に付けただけだがそれでもホクホクに焼けた身にトーマは舌鼓を打った。
自分で初めて作った罠でとれた魚が美味しくないはずがない。
「美味しいです!船に乗る前に食べた海鮮料理も格別でしたがシンプルに焼いただけのこの魚も全然負けていません!」
「この環境で食べているっていうのも表現が良くないかもしれないけど一種の調味料かもしれないねえ」
「間違いなくそれはあると思います。街で暮らしていると当たり前のことでもこの料理のようにここでは幸せに感じてしまいます」
「裕福な暮らしだけが幸せじゃないって実感するなあ。まぁ無人島に2人きりっていうのはちょっとやりすぎだけどねぇ」
「ふふっ。そうですねえ」
「まあなんとか脱出できるように、そして生き延びれるように頑張っていこうね」
「はい。頑張りましょう!」
魚を食べ終えた2人は改めて生き延びることへの決意を新たにした。




