遭難8日目②
食料調達を終えて時間ができた二人は気の訓練を開始した。
「まずは座りながら目を閉じて自然体になる。そして自分の中の気を感じる・・・らしい」
「座って目を閉じて気を感じる・・・やってみます」
二人はあぐらを組んで座りながら目を閉じて瞑想を開始する。
10分ほど経っただろうか。
トーマとりあえずやってみたけど正直何も感じ取れないなぁと思い横に座っているミーアを見る。
ミーアは背筋をピンと伸ばし凛々しい顔をしながらまだ瞑想を続けていた。
綺麗だなあ。単純に顔が綺麗というわけではなくその座っている姿を含めて綺麗。そう感じたのだ。
トーマがミーアに目を奪われていた時、急にミーアの目がパッと開きトーマの方を向いた。
急に目が合う二人。
「あっ、ご、ごめん!」
トーマはミーアを見つめていただけで別に悪いことをしていたわけではないが、なんとなく悪い気がして謝りながら急いで目を離した。
「トーマさん!なんだか暖かい、こう、なんというか力強いものを胸の奥に感じます!」
ミーアはトーマが謝ったことなど気にせずに興奮気味に言った。
「え、えぇ!?もう気を感じ取ったの!?」
「これが気なのかどうかはわからないのですが・・・」
「お、おそらく気だと思う・・・俺に気について教えてくれた冒険者も今のミーアさんと似たようなことを言っていたから」
「そうなんですね!こんなに早く感じ取れることができるとは思いませんでした!」
「いや、早すぎじゃない!?俺なんて全然感じ取れないよ!?」
これが才能というやつなのだろうか。本来は自分が守るべき年下の女の子に先を越されてしまったことにトーマは驚きと動揺を隠せなかった。
「でも、感じ取れたというだけで操れるわけではありません・・・」
「か、感じ取れたら次のステップがあるんだ。気を腕に集中させるイメージをして、今の自分ではあと一息で折れないような枝を折る。折ることができれば少しでも気を操れているって証拠らしい」
「なるほど。やってみようと思います。まずは枝を探さなければいけませんね。ちょっと探してきます!」
そう言ってミーアは小走りで森へ駆けて行った。
「や、やばい。置いていかれてしまう・・・」
トーマは焦ったように瞑想を開始するのだった。
森から枝を持ってきたミーアは太い枝を手に持っていた。
トーマの隣に座り枝を両手に持ちながら再び瞑想を開始した。
そして数分後。
バキッと枝が折れた音が響き渡った。
「折れました!」
嬉しそうにミーアが言う。
「えぇぇ!?すごい!まだ瞑想を開始してから少ししか経っていないのに!個人差がどれだけあるかは詳しく知らないけど流石にこれは早いよね!?きっとミーアさんは気の才能があるよ!」
「えへへ・・・気の才能ですか・・・腕に集中させるのに数分かかってしまったので全然使いこなせていませんが・・・」
小さい頃は両親も自分を可愛がったり褒めてくれていたが、父親がおかしくなってしまってから奴隷として過ごしてきた今まで、人にこんなに褒められたりすることが無かったため素直に嬉しくてミーアは照れ笑いを浮かべた。
「本当にすごいよ・・・俺なんかまだ感じ取れてすらいないのに。いや、ミーアさんが早すぎるんだけどね・・・」
ミーアの才能に若干の嫉妬を覚えながらトーマは次のステップについて説明した。
「次のステップは気を腕に集中させた感覚を体の各部でやることかな?もう多分訓練としては最終ステップだと思うんだけど、この最終ステップを反復練習して練度を上げていくっていう感じだと思う」
「ここから反復練習になるのですね」
「そうそう。強くなるには地道な鍛錬あるのみって熟練冒険者が言っていたよ。ところでその・・・気を感じるコツとかって教えて貰えないかな?」
こんなに差を見せつけられてしまえばプライドもへったくれもない。
トーマは俯き気味に頬をかきながらミーアに教えを乞うた。
「気を感じるコツ・・・ですか。うーん、なんかこう自分の体の中に何か特別なものがないかなって探していたら胸の奥に力強くて暖かいものを感じたんですよね。コツと言っていいのかはわかりませんがそう言った感覚でやっていました」
「なるほど・・・胸の奥に力強くて暖かいものを感じる・・・か。似たような感覚でやってるつもりなんだけどなぁ・・・とにかくやってみるよ!」
正直感覚的な話であまりピンとは来なかったがトーマは瞑想を再開することにした。
「はい!きっとできると思います!頑張りましょう!」
そうして二人は夕方になってお腹が空くまで瞑想を行った。
結局その日、トーマは気を感じとることができなかった。
「とほほ・・・。全然気を感じとることができない。個人差があると言えどもミーアさんにこんなに差をつけられることになるとは思わなかったなぁ」
トーマは空を見上げて一人で悔し涙を流した。
ちなみにミーアはメキメキと気を操れるようになり、その日だけで気を身体中に行き渡らせることができるようになったとか。
才能って恐ろしい。




