遭難8日目①
ささやかな新築祝いをした次の日、トーマは改めて現状確認を行った。
「飲水の確保、食料の確保、安全かはわからないけど寝床の確保ができたね」
「はい。この島に漂着してから約1週間経ちましたが正直思っていたよりとんとん拍子だと思います」
「一番ありがたいのはこの島に来てから危険そうな動物や魔物に出会っていないことかな」
「そうですね。たまに小動物や鳥は見かけますが・・・それも無人島故なのでしょうか」
「どうだろうねえ・・・ここの近くにいないことは確かだけどこの間見回した感じだとこの島はかなり広いからまだ油断はできそうにないかな」
「油断した途端に襲われるかもしれませんし警戒はしておかないといけませんね」
「うんうん。ということで生活も見通しが立ってきたしこれからは有事に備えて自分を鍛えようと思うんだ」
トーマは拠点に柵を作るなりしてさらに安全な場所にするという案も考えたが野生動物や魔物相手には二人で作るレベルの施設では限界があり、拠点以外の場所で遭遇してしまう可能性もあるだろうと考え、それならば自分を鍛えてしまって襲われた時のリスクを減らすことに時間を費やした方が良いだろうと考えたのだ。
「鍛える・・・ですか?」
「うん。鍛えると言っても色々あるけど、魔法を勉強することはここではできないし才能もないと思うから、気を鍛えようと思うんだ」
気とは誰しもが持っている生命エネルギーのようなものだ。新米冒険者を卒業するには二通り方法がある。魔法を使えるようになるか気を扱えるようになるかだ。
大抵の冒険者は才能や環境の問題で魔法を習得することがほとんどできない。しかし気は訓練を行えば大抵の人が扱えるようになるのだ。
もちろん才能や努力、それを教えてくれる人によって個人差は大きく出るが。一流の冒険者となると気で強化した体で大木を薙ぎ倒すことができるとか・・・そのためほとんどの冒険者は気を扱えるようになるために訓練を重ねる。
「気を鍛えるというのは具体的にはどう言ったことをするのですか?」
「基本的には自分の中にある気を感じ取ることができるように瞑想をすること、そして感じられるようになったらその気を操って体の強化に使ったりしてさらに練度を上げていく・・・らしい。正直今まで事務職でやってきた俺は聞いたことがあるだけで実際にやったことはないんだけどね」
トーマは気とは何かを新米冒険者に教えたり熟練の冒険者に気の扱い方がどんなものか教えてもらったりしてきたためなんとなくは習得の仕方を知っているのだ。
「なるほど・・・。気が誰にでも使えるなら、私も一緒に訓練することは可能ですか?」
「もちろんだよ!無人島に二人きりだからどちらも気を扱えた方が絶対良い。どのくらいの期間で習得できるかは個人差がかなりあるらしいけどやってみよう!」
「ここの生活に慣れてきたら一人で行動することも増えると思いますので私も是非習得したいです」
「おぉ・・・俺が見てきた女性はあまりそう言ったことに積極的じゃなかったから、ミーアさんはなんだかすこいなあ」
「そ、そうでしょうか・・・」
ミーアは急に褒められたことが嬉し恥ずかしくて少し俯きながらもじもじした。
「うん。素直にすごいと思う!じゃあ午前中は食料調達や拠点の整備に使って、午後から時間ができたら気の訓練というスケジュールでどうかな?」
「わかりました。頑張りましょう!」
ミーアは元気に返事をする。
「じゃあ食料調達に出発!」
トーマもミーアが気の習得に積極的なことに嬉しさと頼もしさを感じ元気よく出発の合図をした。




