第41章:酒樽輸送作戦と故郷への凱旋
第41章:酒樽輸送作戦と故郷への凱旋
交易都市ルーセンに誕生した奇跡の近代都市――新工房区『カロン・ニュータウン』の完成と町開き式から数日が過ぎた。
秋晴れの澄んだ青空の下、整然としたコンクリート道路には路面電車が軽快な鐘の音を響かせ、一階の工房群からは活気あふれる槌音がリズミカルに鳴り響いている。街区は連日、移住してきた職人たちや資材を買い求める商人たちでごった返し、空前の大活況を呈していた。
大聖堂工房――『カロン魔導工学研究所 & ルーセン未来技術工房』のメインホールに立つカロンは、広大な作業スペースの一角を見つめながら、深いため息をついていた。
「……やれやれ。感謝されるのは職人冥利に尽きるが、これは少々困ったことになったな」
カロンの視線の先には、天井近くまでうず高く積み上げられた、巨大な木製の酒樽の山があった。
先日行われた町開き式の後、新工房区への入居を果たした職人ギルドの親方たち、中央生鮮市場の商人たち、さらには中州の赤玉ワイン醸造責任者トマス、そして領主ハインリヒ侯爵から「都市建設の偉大な功労者へ」と、熱烈な感謝の品として贈られた酒樽の数々である。
その数、最高級赤玉ブドウのヴィンテージ・ワインが詰まった大樽が二十四樽。
さらに、近隣の麦酒工房から届いた特製エールの大樽が二十樽。
合計四十四樽もの巨樽が、重機械の組み立てラインを占領するように鎮座していた。
ドワーフの社会において、酒樽を贈ることは最大級の敬意と友情の証である。相手に悪気は毛頭なく、むしろ「ドワーフなら飛び上がって喜ぶに違いない」という純粋な善意からの贈り物だった。
しかし――カロンは、ドワーフとしては極めて異端な「完全なる下戸(酒嫌い)」であった。
前世の中山教授の時代からアルコールにはめっぽう弱く、現世で屈強なドワーフの肉体に転生した今でも、一口含むだけで顔が真っ赤になり、酷い頭痛と吐き気に襲われる体質は変わっていなかった。自室での毎日の晩酌も、食堂での食事も、女将さんが用意してくれる冷えた果実水か清らかな水で十二分に満ち足りているのだ。
「いくら保存が利く樽酒とはいえ、一人で消費できる量ではないし、ここに置いておいては次の魔導機械の組み立て作業の邪魔になるな……」
カロンが顎に手を当てて腕組みをしていると、背後からドタドタと足音が響き、ガロニア中央学舎からの留学生十二名が講義のためにやってきた。
「おはようございます、カロン先輩!」
「今日もよろしくお願いします!」
元気よく挨拶して入ってきた留学生たちだったが、メインホールの真ん中に積み上がった壮大な酒樽の山を見るなり、全員がピタリと足を止め、目を限界まで見開いた。
「う、うおおおっ……!?」
「な、なんだこの樽の山は……! 全部、あの超高級なルーセン産赤玉ワインと特濃エールじゃないか!」
「甘酸っぱくて芳醇な香りが、樽の隙間から漂ってきやがる……!」
若いドワーフたちの喉が、ゴクリと激しく鳴った。彼らにとって、これだけの極上の酒を目の前にして手を出せないのは、一種の拷問に近い。
カロンは苦笑しながら、留学生たちに向き直った。
「みんな、ちょうどいいところに来てくれた。実はこの大量の酒樽なんだが……町開きのお祝いとして各所からいただいたものなんだ。だが、知っての通り私は酒がまったく飲めない。どうしたものかと困り果てていてね」
その言葉を聞いた留学生たちは、顔を見合わせ、目を爛々と輝かせた。
(の、飲みたい……! 今すぐタガを外して、樽ごとあおりたい……!)
それが彼らの偽らざる本音であった。
しかし、彼らはガロニア中央学舎の誇り高きエリート留学生であり、カロンを心から尊敬する弟子たちである。
「先輩がもらったお祝いの酒を、弟子である自分たちが勝手に飲み干すわけにはいかない」という職人のスジと矜持が、強烈なアルコールへの欲望にブレーキをかけていた。
留学生のリーダー格である若者が、ゴクリと唾を飲み込みながら、姿勢を正して提案した。
「カロン先輩! それでしたら……このお酒、故郷ガロニアの『工房区親方会(親方衆)』へ、先輩からの贈り物として送られてはいかがでしょうか!」
「ガロニアの親方会へ?」
「はい! 今、ガロニアは先輩が広めてくださった規格化のおかげで、金属板の注文が殺到して空前の好景気です! バログ大親方も、先輩のお父上のガイル親方も、他の親方衆も、連日連夜『カロン坊主のおかげだ!』と大酒を飲んで大騒ぎしていると手紙にありました。……この本場の極上ワインとエールを親方たちに届ければ、間違いなくガロニア中がお祭り騒ぎになります!」
他の留学生たちも、「そうです!」「親方会へのこれ以上の手土産はありません!」と力強く頷いた。自分たちが飲めないのは惜しいが、故郷の親父たちや師匠たちが狂喜乱舞する姿を想像すれば、これほど筋の通った使い道はなかった。
「なるほど、それは名案だ」
カロンは手を叩いて納得した。
「ガロニアの皆さんには、発電所の建設や送電線の工事で多大な力を貸してもらった恩義がある。それに、規格鋼板の増産で毎日汗を流してくれている親方衆への労いとしても、これ以上の贈り物はないな」
方針が決まるやいなや、カロンの行動は迅速だった。
「よし、善は急げだ。本日の講義と研究は一度休講とし、これからガロニアへの『お酒輸送作戦』を決行する! みんな、積み込みを手伝ってくれ!」
「「「おうっ!!」」」
メインホールの天井クレーンが唸りを上げ、太いワイヤーが四十四基の巨大な酒樽を次々と軽々と吊り上げていく。
大聖堂の前庭には、大型の二軸荷馬車が二台連結され、その先頭にはカロンが自作した銀色の電気自動車(EV)が連結されていた。
留学生たちが声を掛け合いながら、荷台へ隙間なく樽を並べ、頑丈な麻縄とラッシングベルトでガッチリと固定していく。
「積載完了! 重心バランス、タイヤの空気圧、固定ヨシ!」
二十四樽のワインと二十樽のエール――総重量数トンにおよぶ超重量貨物列車のような隊列が完成した。
「カロン先輩、道中お気をつけて!」
「親方たちによろしくお伝えください!」
留学生たちに見送られ、カロンは電気自動車の運転席に乗り込んだ。
魔導キーを回し、サンダーストレージから高出力ブラシレスモーターへと電流を送り込む。
キィィィン……!
力強い励磁音が響き、カロンがアクセルペダルをゆっくりと踏み込んだ。
スゥッ――。
驚異的な低速トルクを誇るモーターが、数トンの酒樽を積んだ長大な荷馬車隊をものともせず、滑らかに前進させ始めた。
大聖堂の専用引き込み線から町の大通りへと出たカロンの車列は、路面電車のレールに沿って東門へと向かった。
沿道の住民や職人たちが、ずらりと並んだ酒樽とそれを引っ張る銀色の車を見て歓声を上げる。
「おい見ろよ、カロンさんが酒樽の山を運んでるぞ!」
「またとんでもない大荷物だ!」
東門に到着すると、警備詰所からガース隊長が笑顔で駆け寄ってきた。
「カロン殿! ガロニアへの里帰りですかな?」
「ええ、新工房区の完成祝いにいただいたお酒を、ガロニアの親方たちへ届けてきます」
「おお、それはガロニアの連中が泣いて喜びますな! 門を開けろーっ!」
警備兵たちの敬礼に見送られ、車列は東門を通過。
川にかかる頑丈な石橋を渡り、東へと延びるガロニア街道へと躍り出た。
街道に出たカロンは、アクセルを一段深く踏み込んだ。
ドオォォッ――!
四輪の独立懸架サスペンションが未舗装路の段差をしなやかにいなし、銀色の電気自動車は快調な走行音を響かせながら、秋風を切り裂いて街道を疾走していった。
通常の荷馬車隊であれば、これだけの重量物を運ぶには何頭もの輓馬を連ね、丸一日以上をかけてノロノロと進まねばならない難路である。
しかし、カロンのEVは馬の疲労を気にする必要もなく、一定の高速度を維持したまま、木々が黄金色に色づく山道をぐんぐんと登っていった。
山道を駆け抜けること数時間。
前方に、切り立った赤褐色の岩山と、その山肌をくり抜いて築かれた巨大な要塞都市の威容が見えてきた。
ドワーフの鉱山都市――『ガロニア』である。
「よし、予定通りの時間で到着したな」
カロンがガロニアの巨大な外門の前へと車を滑り込ませると、門番のドワーフ兵士たちが目を丸くして手斧を取り落としそうになった。
「な、なんだあの銀色の鉄の箱は……!? 馬もいねえのに、山のような荷車を引っ張って走ってきやがったぞ!?」
「待て……運転席に乗っているのは……カロン坊主じゃねえか!?」
「カロンが帰ってきたぞーッ!!」
門番の叫び声は、瞬く間に要塞都市の内部へとこだました。
ガロニアの街並みは、巨大な竪穴状の地下空間と断崖絶壁に沿って何層にも広がっている。地上搬入口に到着したカロンの電気自動車と荷馬車は、巨大な魔導油圧昇降機へと丸ごと載せられ、中央の都市フロアへとゆっくりと降ろされていった。
昇降機が最下層に到着し、重厚な鉄柵が上がった瞬間――
「「「うおおおおおおおおっ!! カロン坊主が帰ってきたぞおおおおっ!!」」」
地鳴りのような大歓声と、数千人のドワーフたちの怒号のような拍手が、巨大な地下空間全体を激震させた。
昇降機の広場を埋め尽くしていたのは、見渡す限りの屈強なドワーフたちだった。
その最前列には、筋骨隆々たる巨躯に白銀の髭を蓄えた鍛冶ギルドの総元締め・バログ大親方と、カロンの父であるガイルが、満面の笑みを浮かべて仁王立ちしていた。
「カロン! よく戻ったな!」
ガイルが駆け寄り、カロンの肩を砕けんばかりの力でバシバシと叩いた。
「カロン坊主! ルーセンでの大活躍、全部聞いてるぞ!」
バログ大親方も太い髭を揺らして豪快に笑う。
「発電所を動かし、路面電車を走らせ、アストル教の悪党どもをぶちのめし、今度は規格化部品で世界中から鋼板の注文をガロニアへ引っ張ってきやがった! おかげでガロニアの溶鉱炉は昼夜フル稼働、鍛冶ギルドは創設以来最高の大黒字だ! お前はガロニアの……ドワーフ族全体の誇りだぜ!」
「父さん、バログ大親方、皆さん……ただいま戻りました」
カロンが照れくさそうに頭を下げると、ドワーフたちの視線が、車列の後ろに連結された荷馬車へと一斉に注がれた。
「……おい、ガイル。あの荷台に積んであるデカい樽は……まさか……?」
バログ大親方の鼻腔がピクピクと動いた。
カロンは胸を張り、荷台の幌を取り払った。
「ルーセンの新工房区の完成祝いにいただいた、本場中州の最高級赤玉ワイン二十四樽、そして特濃エール二十樽です。日頃から規格鋼板の生産を支えてくださっている、ガロニアの親方衆への感謝の贈り物として持ってきました!」
その瞬間――
「「「キ、キタアアアアアアッ――!!」」」
地下都市の天井が吹き飛ぶかと思うほどの大絶叫が巻き起こった。
「ルーセンの赤玉ワインが二十四樽だとぉぉぉっ!?」
「特濃エールも二十樽もあるぞ!」
「さすがはカロン坊主! わかってるじゃねえか!」
「おい野郎ども、今夜は仕事は店じまいだ! 宴だ! カロンの凱旋祝勝会だあああっ!!」
ドワーフの親方たちが我先にと荷台に群がり、何百キロもある酒樽を一人で軽々と担ぎ上げて広場の特設酒場へと運び出していった。
熱狂の渦に巻き込まれた中央広場の宴を親方たちに任せ、カロンは父ガイルと共に、久しぶりに懐かしい生家へと戻ってきた。
分厚い花崗岩で組まれた頑強なドワーフの家。重厚な木製扉を開けると、そこにはカロンの帰りを待ちわびていた母――フラウの姿があった。
「カロン……! 本当にお前なのかい!」
小柄ながらふくよかで温かみのある母フラウが、エプロンで手を拭きながら駆け寄り、カロンを力いっぱい抱きしめた。
「母さん、ただいま。元気にしていたかい?」
「元気も何も、お前の噂が毎日届いて、母さんは嬉しくて誇らしくて……! 怪我はないかい? ちゃんとご飯は食べてるのかい?」
「ええ、ルーセンの食堂の女将さんが毎日美味しいご飯を作ってくれているよ」
カロンが笑顔で答えると、フラウは目元を拭い、満面の笑顔を咲かせた。
「さあさあ、座っておくれ! カロンの好物をたくさん作って待ってたんだよ!」
木製の頑丈な食卓には、フラウが腕によりをかけて作ったガロニアの伝統家庭料理が所狭しと並べられていた。
鉱山特産の岩キノコと塩漬け肉の濃厚なシチュー、表面をカリカリに焼き上げた大麦のハードブレッド、根菜と燻製ソーセージの蒸し焼き、そしてカロンのために用意された搾りたての山葡萄の果実水。
「いただきます」
カロンがスプーンで熱々のシチューを口に運ぶ。
素朴ながらも素材の力強い旨味が広がり、懐かしい故郷の味が全身に染み渡っていく。
「美味いよ、母さん。やっぱり母さんのシチューは最高だ」
「ふふっ、お世辞でも嬉しいねえ。お代わりはいくらでもあるからね」
食卓を囲みながら、カロンはルーセンでの出来事を両親に語った。
水力発電所のタービンの稼働状況、電灯が灯った時の子供たちの笑顔、路面電車を走らせた時の侯爵の興奮、アストル教の地下迷宮での激闘、そして新工房区の建設。
ガイルは深く頷きながら、手元のジョッキを傾けた。
「カロン、お前のやっていることは、単に便利な道具を作っているだけじゃねえ。人と人を繋ぎ、町と町を結び、世界を前へ進めているんだ。ガロニア中央学舎のボルト先生からも手紙をもらったよ。『カロンはドワーフの枠を遥かに超えた真の巨匠だ』とな。……父親として、これほど誇らしいことはねえ」
「父さん……」
「ガロニアから送った十二人の若造どもはどうだ? 役に立っているか?」
「ええ、みんな本当に優秀で熱心です。今では新工房区の建物の配管や配線を自分たちでこなせるほどに成長していますよ」
「そうか、そうか……! あいつらにも良い勉強になってるなら何よりだ!」
家族水入らずの温かな団欒の中、夜は穏やかに更けていった。
外の中央広場からは、親方衆の陽気な歌声と乾杯の怒号がいつまでも響いていたが、生家のリビングには何物にも代えがたい安らぎが満ちていた。
翌朝、爽やかな光がガロニアの岩壁を照らす頃、カロンは身支度を整えて中央広場へと向かった。
ルーセンでの工房運営や留学生たちの指導があるため、今日のうちに帰還しなければならない。
しかし、広場に足を踏み入れたカロンは、目の前に広がる光景に思わず足を止め、目を疑った。
「……な、なんだこれは……!?」
そこには、心地よさそうに大の字になって爆睡している数十人のドワーフの親方たちの姿があった。
そして広場の隅には、昨日カロンが運んできたはずの巨大な木樽が、綺麗に横倒しになって積み上げられていた。
その樽のすべてに、注ぎ口の栓が外され、中身が「一滴残らず空っぽ」になっていたのである。
(に、二十四樽のワインと、二十樽のエールが……一晩で全部消えた……!?)
大樽一つで数百リットルの容量がある。合計で一万リットルを超えるであろう莫大な量の酒が、わずか一晩の宴で完全に飲み干されていたのだ。
そこへ、頭に手ぬぐいを巻き、赤ら顔で二日酔いの気配すら見せないバログ大親方が、千鳥足で陽気に歩み寄ってきた。
「おう、カロン坊主! おはようよ!」
「だ、大親方……あの、この酒樽は……?」
カロンが恐る恐る指差すと、大親方は豪快に鼻を鳴らして笑い飛ばした。
「ガハハハハッ! いやあ、美味かったぜ! 本場の赤玉ワインは格別だな! ガロニア中の親方衆と鉱夫どもが集まっちまってよ、『カロン坊主に乾杯!』『ルーセンの新工房区に乾杯!』『規格鋼板に乾杯!』ってやってたら、夜明け前には綺麗さっぱり空になっちまったわい!」
「四十四樽ですよ……!? どれだけの胃袋と肝臓をしているんですか……」
カロンが心底呆れ果てて額を押さえると、大親方は太い腕でカロンの背中をバシッと叩いた。
「何を言うか! 最近のガロニアは景気が良すぎてな、みんな財布が金貨でパンパンよ! 普段なら節約しながらちびちび飲む高級ワインを、昨日は浴びるように飲めたんだ。みんなカロンに感謝してもしきれねえって泣いてたぞ!」
「は、はあ……喜んでいただけたなら何よりですが……」
カロンは苦笑いを浮かべるしかなかった。
ドワーフという種族の底なしの酒豪っぷりと、経済の好循環が生み出した凄まじい消費エネルギーに、工学者としての計算能力すら完全にショートしてしまったのだ。
やがて出発の時刻となり、地上へと続く大型昇降機の前には、目を覚ました親方衆や町民たち、そして母フラウと父ガイルが総出で見送りに集まってきた。
「カロン、身体に気をつけてな!」
「母さん、父さん、また顔を出すよ」
カロンは両親と固い抱擁を交わし、銀色の電気自動車に乗り込んだ。
荷台には、親方会からのお礼として、ガロニア特産の最高純度ミスリルインゴットや、特殊耐熱魔導鋼のブロックが満載されていた。
「カロン坊主、留学生のガキどもを頼んだぞ!」
「また美味い酒ができたら持ってこいよーっ!」
バログ大親方たちの威勢のいい野太い歓声と無数の手振りに送られ、昇降機がゆっくりと地上へと上がっていった。
地上に出たカロンは、電気自動車のアクセルを踏み込み、朝日に輝く街道を西へと走り出した。
心地よい秋風が運転席の窓から吹き込み、頬を撫でていく。
(お酒輸送作戦、これにて無事完了だな……)
空っぽになった樽と、満面の笑顔で酒を酌み交わしていた故郷のドワーフたち。
自分は酒が飲めずとも、自分が生み出した技術と経済の循環が、故郷の人々を豊かにし、あのような底抜けの笑顔と幸福を生み出している。
前世の中山教授として培った知識、そして今世の魔導工学。
それらが確実に二つの都市を結び、人々の絆を強固に繋ぎ止めていることを実感し、カロンの胸には温かな誇らしさが満ちていた。
「……さて、ルーセンに戻ったら、留学生たちと次の研究テーマに取り掛かるとしよう」
カロンは満足そうに微笑み、銀色の車体を滑らかに加速させながら、愛する弟子たちと子供たちが待つ交易都市ルーセンへの帰路を軽快に駆け抜けていった。




