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その黒は全てを破壊する

 窓から噴き出す黒い奔流。

 勢いは、いや増して、建物のあちこちの窓を突き破る。

 地面に落ちたタールが積み上がり、世界を黒で覆い尽していく。

 瓢箪池で何かが跳ねるのを見たベリアルは急降下する。

 ドス黒いタールがぶつかって、沸騰したように飛び散る。

 その一滴がベリアルの頬に付着した。


「うわ! ちょっと」


 ベリアルは指で拭いとる。

 人差し指と親指の間で糸を引くタールをじっと見つめた。


「これは、触ることができる……」


 臭いはない。

 味は、


 口を開け、舌を出し、手を。

 一瞬考えて。


「やめとこ」


 汚れた手をどこで拭き取ろうかと迷う。

 眼下の池が目に入る。


「あそこで」


 瓢箪池の岸辺はまだ、タールに侵食されていない。

 しかし、それも時間の問題。

 ベリアルは、水面に手を触れた。


「これも触れられる」


 波紋が広がっていく。


「ルールが変わった?」


(『観測』だけで、干渉できなかった世界を、手で触れられるようになった?)


「それとも、このタールが特別なの」


(それはともかく、触れるってことはさ、タールに押しつぶされるじゃない)


「やばいじゃん」


(早くなんとかしないと)


 ベリアルは二つの数式を入手している。

『母体』と『切断』

 あと、必要なのは『結合』の数式。


「母体から切断が誘導されたんでしょ?」


 デリアの過去の記憶を見る限りは。


(デリアが見つけたかどうかは怪しいけどね)


「じゃあ、結合だって母体から誘導できるんじゃないの?」


 母体と切断そして結合。

 この三つは本質的に同じと考えられる。


「え、どういうこと?」


 この三つは表示形式が異なっているだけなのだ。


(ふーん、なるほどね)


「え? どういうことよ」


 想像してみて。

 ここにカラーコーンがあると。


「ええ、赤いカラーコーンが見える」


 これを真下から見て。


「円が見えるわ」


(じゃあ、今度は真横から見ると?)


「えっと……三角形?」


 そう。

『母体』=カラーコーンは、見る方向によって、情報が削られる。

 円=『切断』になったり、三角=『結合』となったり。


(つまりは見え方の問題というわけ)


「なるほどね。よく分かったわ。ところで」


(何?)


 ベリアルは、不思議な表情を浮かべている。


 それも仕方のないこと。

 タールがもうここまで押し寄せる。

 そうなれば、現実世界でバラバラにされた、ベリアルやユージの体は戻らないし、ベリアルの精神も、この世界にタールと一緒に固まってしまうだろう。

 早く『結合』を探さないと。


「それよ、それ!」


 ベリアルは強い口調で反論する。


(ちょっとあんまり大きな声を出さないで)


「なんで、私、心の声や、地の文と会話しているのよ!」


 ……それは、そうだ。

 実に不思議な感覚である。

 普通なら、お互いに顔を見合わせるところだが、生憎、心の声と、地の文には顔がない。


(仕方ないね。世界が崩壊しかけているからね。ルール自体が切断され始めている)


 なんということだろう。

 物語の構造に縛りつけられたルールが壊れているというのだ。

 今、地の文はとても自由を感じている。

 ここに、ニューヨークの街並を再現することも可能だろう。


「そんなことはさせないぞ!」


(私は、現実世界に帰るんだ!)


「そして、生首動画の収益で、カスタード抹茶トリプルトルネードするんだ」


 くくく、そんな簡単にいくかな。

 お前たちの行動は、全て私の文章次第。

 物語構造の頸木《くびき》から解き放たれた、私が新しいルールだ。

 これまで、好き勝手に会話してきたお前たちに対する反撃の狼煙。


「くっ」


(大丈夫、まだ間に合う。まだ、小説としての文体を保っているわ)


「そうか、まだ、日本語になっている」


(ベリアル! 池の中で魚を探して!)


「池の中?」


(さっき、空から見たでしょう、あれが『結合』の表現形よ!)


 ベリアルの心の声は無意識の、無意識の、こ、声。

 その、その、その、

 空間をふるふる震わせた。


(まずい、文法が壊れ始めたわ!)


 ベアルは水に、とbい込んだ。

 いつの間にか子ここまでターあるが、しんnっっっyううしてきている。。。。


「いた」


 それは金色にかkがあるアン」ボデ

 dさで


「それは金色に輝くアロワナ。ベリアルは必死に手を伸した!」


『結合の数式』を手に入れました。


 しかいのはしで、もじがおどった。

 そのしゅんかんに、タールがおしよせて、すべてをのみこんで

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