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デリアの記憶世界に関していくつか分かったこと

 ベリアルがどこにいるかって?

 今、ベリアルは地上三十メートルの何も無い空中で体操座りしている。

 特に何か考えているわけではなかった。

 ただ漫然と、漠然とデリアの研究室を遠くから眺めている。

 ここから見ると、建物の構造がよく見える。

 それはデリアの記憶の構造でもある。


 デリアの研究室の周りの解像度はとても高い。

 随分離れているのにカレンダーの数字が読めるぐらい。

 それから、建物の前の瓢箪池の周辺も詳細。

 どうやらそこら辺でお弁当を食べているようだ。

 ただ、それ以外はモザイク状。

 かろうじて、木とか車とか判別はつくけれど。


(まるでゲームの世界だね)


 念のためにと、遠くに見えていた街まで来てみた。

 ところが街はどこにもない。

 街を描いた巨大な絵が置いてあるだけで、何も収穫は得られなかった。


(そんなことはない。研究室以外に興味がないことがわかったよ)


 研究室にはあと二つ、まだ開けていない部屋がある。

 一つは実験室の横の部屋。

 鍵が開いたのはこの部屋。

 ベリアルはこれからこの部屋に行くつもりだ。


 もう一つの部屋は、闇の中。

 外から眺めても、その部屋は真っ暗。

 壁抜けして入ったところで、ベリアルは記憶に干渉できないから、電気も点けられない。


(つまり、手順。それが重要ってことだな。まあ、記憶世界だから当然と言えば当然か)


 芋蔓式に記憶を辿る、そんな言葉の通り、記憶を思い出すには手順が必要なようだった。

 今回の場合は、デリアの数式を得たことが、隣の部屋の扉を開けたようだ。


(恐らく)


 と、ベリアルは予想する。


(暗闇の部屋には何か封じたい記憶があるんだろう)


 実験室の廊下にはまだ扉が幾つかある。

 ただ、外から様子を見る限り、部屋は存在していない。


(あとは、あの階段かな)


 外から眺めると、その階段は、なんの変哲もない。

 解像度はともかく、六階の研究室から下は一階まで、上は屋上に繋がっている。


 ベリアルは実際に降りて試してみた。

 六階から階段を使って下の階に降りると、そこは六階だった。

 同様に、六階から階段を登ると、その先は屋上ではなくて、六階だった。


(時間もループしてるのかな?)


 その答えはまだ分からない。


(まあ、その答えが、あの闇の中ににあるのかもしれない)


 ベリアルは立ち上がり、空を滑るように移動した。

 目指す場所は、鍵が開いた部屋。


 じゃがいもを茹でていた細長い部屋から見て右隣りが暗闇の部屋。

 目的の部屋は廊下を挟んで反対側。

 その部屋の扉が開いている。


 扉は分厚く、扉にはエアロックのような大きな取手がついていた。

 中に入ると部屋の手前でデリアが作業していた。


 一人目のデリアは、じゃがいもの茹で汁の入った鍋の中、白い粉を加えている。

 二人目のデリアが、柄の長いスプーンで、鍋をかき混ぜていた。

 三人目のデリアは鍋の中身を瓶の中に注いでいる。

 四人目のデリアは瓶を抱えて部屋の奥に進んだ。


 奥にはもう一つ金属製の大きな扉。

 こちらもエアロックのような複雑なロック機構が備えられていた。

 五人目のデリアがその扉をゆっくりと開けた。

 中から白い煙が溢れ出して、地面に這い出す。


(寒!)


 白煙と同時に冷気が押し寄せて来た。

 どうやら中は大きな冷蔵庫のようだ。

 扉の上で赤いランプが点灯した。


 使用中。

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