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二人は女王様に謁見する

 二人は同時に驚嘆の声を上げた。


「今、何が起きたんだ」


 ベリアルは周囲を警戒している。


「ここは壁の内側?」

「前に見えていた壁が、今は後ろにある」

「あれを見て!」


 目の前には、すり鉢状の巨大な広場。

 背の高い構造物が同心円状に配置されていた。


「あなたが言っていた図書館って」

「そう、ちょうどこんな感じだよ」


 棚に近づいて見上げるベリアル。


「ちょっと大きい気もするけど」

「引き出しが六角形ね」

「蜂の巣みたいだ」


 ベリアルは、目の前にあった取手に手をかけて、引き抜いた。


「うわ」


 ずるずる、と音を立てて引き出しが引き出された。

 大きな幼虫と目が合って思わず悲鳴を上げた。


「虫だ……卵に、蛹もいる」


 引き出しは小さな区画に仕分けられていた。

 その一つ一つに生命体が宿っていた。


「蜂の巣みたいというより、これは蜂の巣そのものだよ」


 アンナも別の引き出しをゆっくりと開けた。


「こっちも同じね。あっ」


 今、蛹から羽化したばかりの黒い蜂が広場の中心に向かって飛んでいった。

 落ち着いて耳を澄ますと広場は羽音で満ちていた。

 一際騒々しいハム音に誘われるように二人は通りを抜けてかどを曲がった。


「黒!」


 それが第一感。

 その棚は他と比べて異様な様相を呈していた。

 色が黒い。

 ただの黒ではなく、吸い込まれそうな漆黒。

 引き出しが少し開いては、中から赤い蜂が飛び出して、また閉じる。

 ひっきりなしにそれが起こるので、引き出しが奏でるリズムが羽音とセッションしているようだった。

 ベリアルは棚に近づいて、引き出しを凝視した。


「け、つ、だ、ん?」


 引き出しのラベルを読み上げる。


「いや。せ、だ。せつだん……切断!?」

「ねえ、ベリアル、あっちにも黒い棚があるわ」

「そっちにもある」


 二人は黒い棚が広場のあちこちに点在していることに気がついた。

 そこから大量の赤い蜂が発生して、広場の中央に向かって飛んで行く。

 蜂の数があまりに多いから、赤い煙が移動しているように見えた。


「広場の中心に行ってみよう」

「この分だと、地平点に温泉はなさそうね」


 アンナは特大のため息を漏らす。


「仕方ないわね。行きましょう」


 二人は巨大な棚が作る迷路を進む。

 幸いにも迷うことはなかった。

 赤い蜂の塊が定期的に中心に向かって移動するためだ。

 中心に向かうほど、黒い棚が増えていく。

 棚から張り出した脈動する根が地面を捲り上げ、だんだんとまともに歩けなくなっていく。

 何十回と、かどを曲がり、何十回も根を越えた。

 そして、とうとう二人は地平点に到達した。


「温泉だわ」

「温泉だね」

「本当にあったのね」

「本当にあったんだな」


 二人の前には湯気を湛えた小さな湖が広がっていた。


「いい湯加減」

「塩水かな?」

「どうだろう」


 アンナはちょっとだけ躊躇ってから、指を舐めた。


「しょっぱくはない。酸っぱくもないわね」

「入っても大丈夫なんだろうか?」 

「どうなんだろう?」


 二人が躊躇ったのには理由がある。

 温泉には先客がいた。

 白くて、ツヤツヤとした、巨大な卵が浮いている。

 直径で大体十メートルほど。

 温泉の大半を埋め尽くす巨大な卵だった。

 二人が迷っていると、卵から話しかけてきた。


「ふーあーゆー」

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