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メガ女神からクール便が送られてきた件、しかも、着払いで!

「二千エンです」


 宅配業者から告げられたクール便の着払い料金を聞いて、ベリアルは片眉を釣り上げた。


 二千エン。

 バイト二時間分。

 私の食事二日分。

 昨日我慢したシュークリームが五個も買える。

 払えない金額じゃない。

 でも、この月末にその出費は地味に痛い。


 差出人は「メガ女神」

 知らない仲じゃない。

 フォロワー数二十万人の中堅配信者。


 忘れもしない半年前。

 某死にゲーの実況中に侵入されて、ボコボコに殺られたことがきっかけで仲良くなった。

 オフでは会ったことがないけれど、メインの人形撮影チャンネルにたまに降臨してくれる。

 受け取りを断ることも可能ではある、可能ではあるが……。


「ちょっと待ってください」


 この部屋にインターホンは無い。

 ベリアルは部屋の中で叫んだ。


 鞄から財布を取り出して中を見る。

 残金三千エン。

 バイト代までの残り数日をこの千エンで乗り切らねばならぬ。


 しかし、品物はクール便。

 中身は不明だが送り状には生物なまものと書いてあった。


 もしかして蟹?

 蟹なのか?


「おまたせしました」


 ベリアルは意を決して扉を開けた。


 ☆☆☆


 受け取った荷物はずしりと重たい。

 ちょうど米袋(五キロ)と同じぐらいの重さ。


「なんなのよこれ」


 台所によいしょと置いた荷物の差出人はメガ女神。

 極めて独特な、非常にクセのある書体。

 住所は書いてないけれど、料金からみて同一圏内なのは確か。

 少なくとも離島や海外ではないようだ。


「さてと」


 腰に手を当てて荷物を見下ろし、目を細めた。

 ベリアルは配送品に何度か負けている。

 その嫌な記憶が蘇ってきたのだ。


 最初の敗北は、現世に降臨した直後。

 初めての通販に興奮していたベリアルは、開封が待ちきれなくて段ボールに指を突き立てた。

 その結果は、右の中指の爪を剥がす、見事な敗北。


 二回目はナイフが見つからなくて、指でこじ開けようとして失敗。

 一度目の教訓は生かされず、爪が縦に割れる大惨事だった。


 三度目の敗北は前回。

 さすがに学習してカッターナイフを用意して臨んだけれど、刃を出しすぎて中の包装まで切ってしまい、美麗なパッケージに傷を入れてしまった。


 今度こそ、今度こそはリベンジしたい。


 ベリアルには秘策がある。

 丁寧な作業を心がけるため、秘密兵器を用意した。


 はずだった。


「あれ? ここだと思ったのに」


 100均で見かけて、これだ!と思い購入した刃が数ミリしかでない開封専用のナイフ。 なぜか、文房具を入れている道具箱には見つからない。


「えー?」


 淡い期待を込めてカトラリーボックスを見てみたが、そこにもない。


「あれ、どこにしまった?」


 残る可能性としては、クローゼットの中だが、今、開けるとカオスが溢れ出して、開封どころではなくなる。


「これって呪いじゃね?」


 もう一度、道具箱を薄目で覗き込み、ゆっくりと目を開けた。

 妖精が三匹、開封用安全カッターを担いで箱に戻す姿、なんてものは見えるはずもなく、相変わらず、ちびた鉛筆やら、書けなくなった赤色のボールペンしか入っていない。


「まあ、いいか、そのうち出てくるか」


 ベリアルはカッターを手にして、チキっと刃をだした。

 段ボールにあてがい、力を込めた。


「あ、そうだ」


 注文したはずの品物が別の品物にすり替えられていた事件を思い出した。

 そのスレッドでは、開封動画を撮ることを推奨していた。

 それに、開封の儀は、PV的にも美味しい。


「せっかくなら、配信しよう」


 ベリアルはナイフを置いて、携帯を取り出した。


 住民税諸君!

 緊急生配信!

 メガ女神からクール便が送られてきた件

 しかも、着払いで!

 11時から開封の儀を執り行います。

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