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無限回廊

 壁に開いた穴から廊下に出る。


「うわ」


 奇妙な光景にベリアルは息を飲む。

 廊下は左右にどこまでも続いている。

 ベリアルは思わず壁にしがみついた。

 廊下が壁に、壁が天井に、螺旋を描く様に捩れていた。

 奥の方を見つめていると、自分が闇の中に落下していると錯覚した。


「デリアはどこにいった」


 走る足音と、甲高い笑い声が反響している。


「ッチ、逃げられたか」


 廊下に一歩踏み出したベリアル。

 その足を優しく包み込む感覚に思わず、


「柔らかい」


 ベリアルはしゃがみ込んでカーペットの毛先を撫でまわす。


「ごろにゃーん」


 我慢できず、

 寝そべったり、

 転がったり、

 泳いだり、

 スライディングしたり、

 ひとしきり遊んだ。


「ここに住んでもいいかな」


 と、冗談混じりに呟いた。

 ベリアルは大きな窓が嵌められていることに気が付いて、そこから外の様子を覗き込む。


「不思議な世界だな」


 眼下に玉座が見える。


「この廊下はあの玉座を取り囲んでいるみたいだけど」


 ベリアルは身を引いて、廊下の先を眺めた。


「廊下はまっすぐなのに、窓の外の建物は曲がっている」


 窓はガラスが嵌め殺されていて開けることができない。


「うーん、気持ち悪いな。頭が混乱する」


 窓から光が差し込んでいるのに、廊下は薄暗い。

 遠方を見ていると目が回りそうになる。


「ここはかなり歪んでる」


 さて、どうするか、と考える。

 視界の左上に示された文字が目に入る。

 ここに来た時から、ずっと変化がない。


「とりあえず、書いてある通り女神の庭に行ってみるか」


 ベリアルは足元の矢印が示す方向に歩みを進めた。

 数メートル進んで、窓とは反対側の壁にドアを見つけた。

 重厚な作りの見るから高価たかそうななドア。

 蝶番やドアノブは金色に光り輝いている。

 白いプレートには【2】と書かれていた。

 ベリアルは何も考えずにドアノブに手をかけ、力を込めて回した。


 ガチャガチャ。


 びくともしない。


『鍵が必要だよ』


 不意に誰かに話かけられた気がして、ベリアルは振り向いた。


「誰?」


 答えはない。

 背後には誰もいない。

 どこかで聞いた声だった。

 今度は恐る恐るドアノブに触れて、耳を澄ました。


『諦めろ。この扉は壊せない。開けるなら鍵が必要だ』

「私の声だ……」


 集中しなければ聞き取れない、とても小さな声。

 ドアノブを握っていると、だんだんこのドアを開けるには鍵が必要だと思えてきた。

 ベリアルは思わず手を離した。


「なるほど。龍を倒せる勇者が、鍵のかかったドアを開けられない理由がわかった」


 その手を見つめながら、ベリアルは不思議な表情を浮かべた。


「呪いだったんだ」


 ベリアルは、このドアを開けることを諦めて先に進んだ。

 数歩進んで、今度は【3】と書かれたドアを見つけた。

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