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ベリアルの首を切断したメガ女神 暴力では何も解決しないと主張する

 ベリアルの頭部が宙を舞う。

 理解よりも先にユージの体が動く。


 銃を構える。

 だが、何かおかしい。

 ユージの脳が漸く異常を認識し始める。

 銃が無い。

 いや、銃どころか、それを握る右手がない。


 ごとり。


 足元にベアリアルの頭が転がってきた。


 ベリアル自身も何が起きているのか分かっていない。

 そんな表情を浮かべている。


 ユージの視界の中で何かが動いた。

 部屋の中央、魔法陣の上。

 長身の女がしゃがみ込んで女性の胸パーツを五芒星の中央に置いていた。


 ドタ。


 大きな音。

 ベリアルの体が倒れた音だ。


 切断された首から血は一滴も出ていない。

 しかし、無色澄明の液体が滲み出していた。

 それはユージの右腕も同様。


 痛みは……ない。


 ベリアルの口が微かに動いている。

 何かしゃべろうとしている。

 だが、声にならない。


「貴方が探しているのはこれ?」


 女がユージの右手を持ち上げて揺らした。

 銃に絡まった指を外し、不要となった『掌』をユージの方に放り投げた。


 ユージの魂は今にも剥離しそうだった。

 一日で二回はすでに新記録。

 若干クセになっている。

 これ以上、剥離した場合どうなるのか、ユージにも分からない。

 必死に抗うユージの耳元で誰かが囁くのを聞いた。


「……お前がメガ女神。築山デリアだな」

「私が質問しているんだけれど」


 デリアが立ち上がる。


 大きい。

 写真の中で見た築山デリアは高身長だったが、実物はより大きく感じる。

 いや。

 実際、こいつは大きい。


 耳もとの声が次第に大きくなる。

 もはや囁きとは言えないレベルだ。

 ユージは左手で耳を押さえた。

 だが、耳を塞いでも、知らない言葉が鼓膜を震わせ続ける。


「築山デリアの90%は人形だ」


 時折、ラジオのチューニングが合うように理解できる言葉が混ざる。


「へー、良く分かったわね」


 無意識に口に出していたらしい。


 デリアが指を胸元で滑らせた。

 着ていた白いワンピースが音もなく左右へ裂けた。

 露わになった肢体を見て、ユージは息を呑む。


 ベリアルの『まおーチャンネル』で見た海外製の球体関節人形。

 その構造が、人間の身体の中に組み込まれていた。

 指先の暗黒色の鋭い爪がトロンと光った。


人形神(ひんながみ)P360……」


 デリアは、築山サムソンのそばにしゃがみこんだ。


 ユージは自分の目を疑った。

 目で追っていたはずなのに、デリアを一瞬見失った。

 まるで、瞬間移動したみたいだった。


「『認識阻害?』」

「貴方。誰と話しているのかしら。私のこと随分と詳しいのね」


 サムソンはベリアルの攻撃的回復魔法のせいでまだぐったりしている。

 指の背でサムソンの頬を優しく撫でたデリアは、とても悲しい表情を浮かべた。


「暴力では何も解決しない。それは歴史が証明しています」


 サムソンを優しく起こして、抱きかかえた。


「痛みと恐怖による支配、服従。そのような前時代的な犯罪行為は、けっして許されません」


 その声は、まるで平和を説く聖職者のように穏やかで自信に満ちていた。


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