茶番はこれまで、お仕置きの時間だ
「あとは、姉さんが持ってくる胸パーツが揃えば完成だよ」
築山サムソンは袋から取り出した頭部を五芒星の頂点の一つに置いた。
「姉さんから連絡を受けた時はびっくりしたけれど、なんとか回収できて良かった」
サムソンは壁に貼り付けた姉、築山デリアの写真に一人語りかける。
「まさか、あいつらが追いかけて来るとは思わなかったけれど。大丈夫、僕が育成したネズミが退治してくれるから」
身振り手振りを交えて彼は続ける。
先ほどからダンジョンが微かに揺れている。
「二回ぐらい大きな音があったから、きっとネズミがあいつらを倒したんだよ」
サムソンは横置きの大型冷蔵庫の蓋を開けた。
「あ、そうだね、準備するよ」
中からビニールでぐるぐる巻きにされた荷物を取り出して、テーブルの上に置いた。
「待ってて、今ハサミを取ってくるから」
ダンジョンの揺れが収まらない。
寧ろ激しさを増してるようだ。
「え、心配? 大丈夫だよ。 万が一突破されるようなことがあっても、通路に仕掛けたトラップがあるから、地下四階のここには絶対にたどりつけない」
梱包を丁寧に剥ぎ取り、中身を持ち上げた。
その時、ドアが激しくノックされた。
「あれ、予定はもう少し後だったけれど、早く来てくれたのかな」
サムソンは嬉しそうに、一歩を踏み出した。
その瞬間、ドアが勢いよく開いた。
いや、吹き飛ばされた。
「あちょー」
ベリアルが片足を大きく上げてポーズをとっていた。
サムソンは唖然として動けない。
ベリアルはサムソンの手にある人造臀部を見咎めて叫ぶ。
「このヘンタイ野郎!」
サムソンははっと気付いて、それを机の上に置いた。
ベリアルの瞳が怒りに燃えて青白く光っている
「おじゃましますー」
ユージが銃を構えながら部屋の中に入ってきた。
「おやおやおや」
床の五芒星とその上に置かれた人間のパーツ。
それを見て頷く。
「何なんだお前ら」
「魔法庁の調査官ユージですけど」
「魔王ベリアル。人呼んでまおーちゃん」
「魔王と魔法庁が何でつるんでるんだ」
二人は顔を見合わせた。
「なりゆき」
「推し活」
サムソンは呆れ顔。
「しかし、お前らこの短時間にどうやってここに」
「どうやって? 普通に降りて来たけど」
「罠はどうしたんだ」
「罠? そんなのあった?」
「さあ?」
「振り子のギロチンとか、鉄球とかあっただろう!」
ベリアルは、右手を二回握り込んだ。
てのひらに出現した小さなリボルバーをサムソンに見せつけた。
優雅に安全装置を外し、銃を壁に向けると、ためらいもなく引き金を引いた。
ぱすん。
気の抜けた音を発して、弾丸が発射された。
視認できるほどの弾速。
その飛跡を三人が目で追った。
「何を……!」
壁に当たった弾丸が、半径二メートルほどのブラックホールに成長した。
光、音、壁全ての障害物が内側に爆発するように吸い込まれて消える。
「……」
サムソンは文字通り、開いた口が塞がらない。
どこまで続いているのか分からないトンネルを見つめたまま、動くことができなかった。
「床を抜いて来ちゃった♡」
ベリアルがウインクしてペロンと舌を出した。
「すみませんね、いろいろ準備して頂いていたみたいですけど。まおーちゃんがどうしてもって聞かなくて」
「ここは魔素が濃いからな、位置の特定は簡単だったよ」
「撃ったのは私ですけどね。二人の共同作業です」
「気持ちの悪いことを言うな」
ベリアルはサムソンに指を突きつけた。
「さて、茶番はここまでだ。ここからはお仕置きの時間。覚悟してもらおう」




