表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/59

梯子における先後の力学

「あれ?」


 163号室の中に躍り込んだベリアルが思わず声をあげた。


「あれ?」


 ユージもつられて声をあげる。

 室内探査術には自信があったのだけど、予想と大きく異なる結果。


「何か普通の部屋だね?」


 ベリアルは匂いが気になるのか、クンクンと鼻を動かしていた。


「広い空間に繋がっていると思ったのですが……」


 ユージは首をひねりつつ部屋を見て回った。

 といっても、店舗だった正方形の空間を仕切っただけの簡単な構造。

 クリアリングはあっという間に終わる。


「誰もいませんね」

「というか、生活感がなくない?」


 自炊しているベリアルは直ぐにピンときた。


「冷蔵庫も、コップもない」


 直ぐに流しの様子に気付いて、ベリアルは台所を探索した。


「流しが濡れている……」


 ベリアルは引き抜いた髪で触れてみた。

 髪の毛から白い煙が上がる。


「ユージ。当たりだ」


 流しの下を開けてチェックすると、ゴミ袋が無造作に詰め込まれていた。


「ここで水漏れに気付いて、袋に詰め直したか?」

「まおーちゃん。ちょっと来て下さい」


 リビングを見ていたユージがベリアルを呼んだ。


 そこも生活感がない。

 テレビもベッドも無い。


 ユージがベリアルを手招きした。

 壁に貼られた写真や書類を指差す。


「女の方は築山デリアですね。男の方が窃盗犯でしょうか」

「弟かな? どっちも背が高いし、雰囲気が似ている」


 どこかの旅行にいった時の写真だろうか。

 二人はピースサインで笑顔だった。

 そんな写真ばかりが壁に貼られていた。

 デリアの業績を称える記事や、彼女の名前が載っている論文も貼られていた。


「なぜかカーテンで隠されていました」

「ここは犯人の祭壇なんだな」


 姉が好き。

 写真の中の笑顔はそう告げている。


「昔の写真ばっかりだな」


 姉を尊敬している。

 と同時に姉を恐れている。


 カーテンで隠すのはその証拠だろう。


 姉に従うことでかつての関係を取り戻したい。

 そう考えているのかもしれない。


「あれ、目? どうしました」

「ん? 目?」

「赤いですよ」

「聖水のせいじゃない?」


 ベリアルは携帯で自分の顔をチェックしてみた。


「あれ」


 何かに気付いて素っ頓狂な声をあげた。


「どうしました?」

「ユージ、ちょっと部屋の電気を消してみて」

「何か気になることでも」

「いいから、早く!」


 ユージが照明から垂れ下がっている糸を引っ張った。


 カチン。少し暗くなる。


「早く早く!」


 カチン。豆電球。


「なんか落ち着くよね、この状態」


 カチン。真っ暗になる。


「みてみて!」


 闇の中でベリアルの瞳が赤く光っていた。


「魔王みたいだ」

「気付かない? これ魔素だよ」

「魔素? ダンジョンでもないのに?」

「この部屋に入った時から懐かしい匂いがするなぁ、と思っていたけど、間違いない」

「魔王の力が反応しているんですか」


 ベリアルが頷く。


「まあ、夜目が効く程度で、魔法が使える濃度じゃないけどね」

「じゃあ、室内探査術が広い空間を探知したのは」

「この部屋にダンジョンの入口があるんだよ」

「その口調だと、入口がどこか分かったんですね」

「ふふふ、私を褒め称えなさい」


 カチン。ユージが再び照明をつけた。

 ベリアルが顔をしかめた。


「照明を落としたおかげて分かったわ」


 ユージはベリアルが指差す押し入れを開けた。


「ビンゴです」


 押し入れの床下に、闇に続く梯子が顔を覗かせていた。


「ハッチが開いている」

「慌てていたみたいですね」


 ベリアルとユージは、お先にどうぞと手を差し出す。

 ほぼ、同時だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ