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第九ダンジョン飯

「まおーちゃんはここでバイトしているんですか」

「うん」


 メニューを広げたユージ。

 見慣れない料理が並んでいる。

 文字からはイメージができそうにない。


「おすすめは?」

「どれでも好きなの頼みなよ。ここのは安全だからさ」


 安全という単語に何か含みを感じた。



 ミソニコフ


「北方系移民からもたらされた冬の伝統食です。極太麺を味噌で煮込みました。真っ黒な色が特徴的。土鍋で提供されますので、蓋を取り皿にして下さい」


 なんだかんだでベリアルは説明してくれた。

 淀みがないから、普段もこんな感じなんだろう。


「なんかしょっぱそう」

「見た目ほど塩辛くはないよ。コクのある優しい味」

「よく食べるんですか?」

「食べないよ。マンションの住民は自宅で作るから」

「観光客向け?」

「そだね。熱いから火傷しないようにね」



 小倉マーガリン


「コッペパンに小倉餡とマーガリンを挟んだサンドイッチです。甘いとしょっぱいが貴方を至福の世界に誘います。

 最近、小倉餡を単なるこしあんや、粒あんに変更したジェネリック品が増殖していますが一緒にしないで! マーガリンをバターに変更した高級品も域外で出回ってますが、それは別物です」


「これは外でよく見かけますよ」

「それ偽物だから!」

「まおーちゃんは好きそうですね」

「私は食べないね。さっき安全と言ったけど、こいつだけは危険」

「危険?」

「横に巨大化するから」



 キシコロ


「あ、これは知ってますよ」

「へー、どんなの?」

「女騎士、くっコロせ の略」

「どんな食いもんなんだよ」


「『きしめん』という短冊状の麺に『ころ』という醤油だれをかけた汁無し麺です。

 提供が極めて早いことが特徴で、注文から提供までの時間は長くて2秒。

 麺を『うどん』に変更したものは、何故か『コロうどん』と呼ばれます」



 アイガケ


「『うどん』を注文したけど『蕎麦』が気になることはない?

 そんな夢を実現したのがこの第九ダンジョンオリジナルのアイガケ。

 例えば

『うどん:そば=1:1』や『そば:ラーメン=2:1』という組み合わせだけじゃなく、きしめん、パスタ、そうめん、ひやむぎ、蒟蒻麺も選択可能。全部食べたいという贅沢な貴方には、三種類の麺を組み合わせたトリプルガケもオススメ。

 汁も和風出汁、ラーメンスープ、冷やし中華と選べるから、麺とスープの無限の組合わせが楽しい一品です」


「選択肢が多くて逆に悩みますね」

「店長に提案すれば何でも作ってくれるよ」

「ひょっとして、小倉餡も選べるとか?」

「それ、店が違うね」


「全体的に麺類が豊富なんですね」

「ここはダンジョンに潜る冒険者が多いから」


 店長が水を持って来てベリアルの代わりに説明した。


「即提供、簡単に食べれて、即エネルギーになる麺類が好まれるんだわ。兄さん注文決めた?」

「私、くりゼン! 因みにクリームぜんざいの略ね。ホイップクリームじゃなくて、ソフトクリームなのがポイント」

「お好きなんですね」

「おみゃあさん、また太るぞ」

「それじゃあ、私は……このキシコロをお願いします」

「あいよ。キシコロお待ち」


 メニューから目を上げた瞬間に、ユージの前に丼が置かれた。


「はや!」

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