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第九ダンジョングルメツアー

「久々に現金を使いました」


 聞き込みに行ったユージが戻ってきたら、串焼きを右手に装備していた。


「食べます?」


 第九ダンジョン前の広場には様々な露店が並んでいる。

 冒険者向け、地元の住民向け、そして観光客向け、様々なニーズを満足させている。


 串焼き屋は最新の流行。

 あちこちの店で肉の焼ける匂いを通りに充満させて客を誘引している。

 ユージもそれに釣られたのだろう。


「味は鶏肉に近いけど、独特な臭みがスパイスによく合ってて美味しいです」


 ユージが差し出した串焼きを見て、ベリアルは首を横に振る。


「ダイエットしているから、大丈夫」


「店主に聞いて見ましたが、怪しい奴は見てないそうです」

「地元の人間は露店で串焼きを買わないからね」

「そうか、これは冒険者向けか」

「どっちかというと観光客向けかな」


 ベリアルが路地を指差す。


「じゃあ、地元向けの店に行ってみようか。犯人がここの住人なら、あそこに立ち寄っているかもしれない」


 ユージが最後の一切れを口に入れた。

 キョロキョロと辺りを見回している。


「どうした?」

「いや、ゴミ箱ないかなと」

「ゴミ箱? ここにそんなお洒落なものはないよ。みんなそこら辺に捨ててるだろ」


 通りの端をよく見るとゴミが散乱していた。

 小さな動物がその上をちょろちょろと走り回っている。


「うへえ」


 ユージは露骨に嫌な顔。

 懐紙を取り出して、串をそれに包み、懐に戻した。


「ネズミ、苦手なんですよ」


「……へー。そうなんだ」


 ベリアルは何故かニヤニヤ笑っていた。



 大通りから二本ほど奥に入ると人通りは一気に減る。

 店の種類も大通りから変わって日用雑貨とか生鮮食品といった住民向けの店が多くなる。

 その中の一軒にベリアルは入っていった。


 リストランテ『アウレウス』


 ユージは、店の看板を見上げた。


 アウレウスって、確か、黄金だっけ?

 それに、どう見ても大衆食堂なのにリストランテ。

 大げさな店だなと、ユージは思った。


「あれ? まおーちゃん、今日シフトだっけ?」

「こんにちは店長。今日は客として来ました」

「男連れなんて珍しい、デートかい?」


 ベリアルは即答する


「違うから!」


 店長はベリアルから放たれる鋭い殺気を感知した。


「この人が店長に聞きたいことがあるって」


 ベリアルは、後ろで照れ笑いしているユージにムカついて、仕事を全部投げつけた。


「水を垂らす生首を持った人間なんですが」


 ユージのざっくりとした質問に、店長の眉間にシワが寄る。


「そんな人間……」


 店長はユージの服装を値踏みする。

 黒いスーツに使い込んだ革靴。

 無意識に周囲を警戒している身のこなし。

 店長はかつてダンジョンで助けられた勇者の姿を思い出していた。


「店長さん?」

「すまんすんまん。昔の恩人がおみゃあさんに似とって。そんで、生首を持った人間だっけ?」


「ええ」


「そんな人間、ここら辺にゃ、ありふれとるからな」

「そうですよね、そんな人間、ええ??」

「ダンジョンから戻ってくる奴を見てみい」


 ユージとベリアルは軒先から顔を出す。

 ダンジョン入口はここからだと左側。


「お、誰か来た」


 原色系の装備をまとった三人パーティーが歩いて来た。

 楽しそうにおしゃべりしているその手にはビニール製の大きな袋。

 ユージはその目を細めた。


 袋からは透明な液体がポタポタと地面に垂れていた。


「ど、どういうこと?」


 その様子を見ていたベリアルが堪えきれなくなって笑い出す。


「みんな、あっちの店に行くだろ」

「ええ」

「あれはダンジョンからとれた素材を換金する店だよ」

「素材って?」


 笑い転げているベリアルに代わって店長が答えた。


「ダンジョンモンスターの首だわ」

「じゃあ、あの液体って……」

「魔汁。ここじゃ、おみゃーさんのいう人間はありふれとるんだわ」


 ベリアルがうなだれるユージの肩をバンバン叩いた。


「知ってたんですね……」


 恨みがましい目つきのユージにベリアルは舌を出す。


「洗濯物の恨みだ、思い知れ」


 そんなやり取りを微笑ましく見ていた店長が、ポツリと一言。


「そういや、一人だけ反対側から来たのがおったな」


 ユージとベリアルは瞬時に喧嘩を止めて、店長に振り向いた。


「それ、詳しく!」

「ただで情報を聞こうなんてやらしいでよ」


 店長はユージにメニュー表を渡した。

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