初デートでファミレスを選択するのは、あり、なし?
「端っこのカリカリ、楽しみにしてたのに!」
店内にベリアルの怒号が響いた。
視線がベリアルに集まる中、空気を読めない猫型ロボットが、
『どいてニャ。通れないニャ』
と繰り返す。
こいつ。
絶対に悪意があるだろう。
ベリアルは着席して、咳払い。
『ご注文のお料理を持ってきましたニャー』
プリンを手に取り、受け取りボタンを押した。
『ご注文ありがとニャン。お食事楽しんでニャン』
ベリアルは頭を抱えた。
「ロボットにも負けた……」
カトラリーボックスからスプーンを取りだして、紙ナプキンで綺麗に磨く。
スプーンを構えてプリン越しに自分を撮影した。
「一つのドリアから一つしか取れない希少部位だぞ」
未練がましく、ちょっと硬めのプリンをパクついた。
熱いドリアで痛めつけられた口蓋上皮細胞に冷たいプリンが染み渡る。
「私は、大人だからな。今日はこれで勘弁してやろう。ん?」
ユージの視線が熱い。
「感動しました! 配信と同じじゃないすか。まおーちゃんの日常。」
配信の反応は、だいたい二つに分かれる。
一つは、反発。
リアクションを作っている、計算している。
彼(女)らはそのように主張する。
でもそれは、私の中に自分の姿を見出したからに過ぎない。
私を否定して、自分の姿を否定。
否定の否定で、自分を肯定。
そうやって自分を上げる。
一つは、ギャップ。
これは単純で難しい。
自分の価値観との違いが原動力。
馬鹿にする、下に見る。
そうすれば自分の存在を認めることができる。
ユージはどれなんだろう。
ユージは目を輝かせている。
憧れる、尊敬する。
そうなりたいと思うのは、上向きの力。
眩しい。
魔族には、それは、純粋に眩しい。
何か話題が必要だ。
空気を変える話題が。
「あの猫ロボット、中身が魔族って噂あるよね」
「ネットでは定番みたいですね。携帯会社が開発した案内ロボもそんな噂がありましたけど」
「ああ、機種変した時にさ、そいつ見たことあるよ。テレビに話しかけててさ、誰もいないのに一生懸命。なんか悲しくなっちゃった」
「ヒト型だとそういう噂って現実味がでてきますよね」
「サロメもそうなの?」
「サロメって?」
「ああ、言って無かったね。我が家の流しに転がっている生首の名前」
「皮肉な名前ですね、ヨカナーンの首を抱きしめたサロメが、生首になるなんて」
「え? なにそれ、怖い」
「え? オスカー・ワイルドのサロメが元ネタじゃないんですか?」
「それは知らないけど。いや、顔がさ、オンラインサロンの講師の女みたいだから」
「ああ、そういう意味でサロメ」
「あの正体、あんた、知っているでしょ。正直に言いなさいよ」
ユージは両手を胸の前で広げて見せた。
「そうですね。情報を共有しましょう。聞きたいこともあるし。その前に、珈琲をおかわりさせて下さい」
ユージが立ち上がる。
「え、混ぜる?」
「混ぜませんよ。何か欲しいのはあります?」
「私は、これがあるからいいよ」
ベリアルは、自ら調合した三種混合ドリンクを誇らしげに見せつけた。
「……お水もってきますね」




