猫ですが
う、うーーーん、なーーんか、頭痛ったーい。でも、着いたのな異世界。
あれ? 待てよ? 今、私は私、天界からの記憶が連続している。そういえば、前の転生、いや、それより前もずーっと、私は転生を繰り返すノマド民であることは知覚していたが、途中からNPCの体に入ったなどという記憶はない。
今まで知っている転生の常は、生まれて間もない赤ん坊に魂が宿り、成長とともに前世を思い出す、すなわち「私は転生者だった」との自覚が生まれるケースのみだった。
成長したNPCに魂が入りPC化するというパターンは、神だけがなしうるチート行為なんだろねー
手を見る、五指ある人の手、小さめでほっそりしているから人族の女性だろうか。顔をなでて耳……、ああああ!! まった性懲りもなく私は獣人のようだ。耳の形から猫? 尻尾は? と目を下に向けたら。
「なんじゃ、こりゃ!!」
胸、胸ぇぇぇえええええ!!!
デカ過ぎじゃね? いや、華奢な体でアンダーバストが細いから大きく見えてる気もするけど、ざっと見積もってEカップくらいだろうか? って、そもそも今着てるのは下着? いあ、コレ、かつて日本にいた頃、見たことがある。マイクロビキニというエロ装備だ。
黒の光沢というマニアックな素材のブラ、と表現していいものか? 極小の正三角形が、かろうじて乳首は隠しているものの、乳輪がはみ出してるんですけどぉ!
乳を「開いて」かろうじて見える下半身は、黒光沢の逆三角形に紐が付いただけの代物が、幼女系プニ●ンを覆っているのみ。あーー、そこ、助かったというべきか……。この子、猫のくせに毛深くない、アンダーヘアーのモザイク処理は不要、下着の上のスジだけならセーフだよね?
という欠陥ばかりに目が入っていたが、尻尾は長めで、雪のように真っ白、なかなかお洒落な一品だ。兎の時は小さ過ぎて尻尾を動かすこともなかったが、おーー、自由自在に曲がる、くねるぅぅん♡
どうやら私は白猫さん、妹も同じシャレ乙姿なんだろねー
……ああーー、なーる、なるほど!
NPCの記憶はネット検索の要領で辿ることができた。分った、分っちゃったよ。どうやらこの子は、性的なサービスをするために作られた特別な猫獣人らしい。すなわち、エロイ肢体となるように、遺伝子操作されて生まれてきたってことかな?
魔法によるゲノム操作、出生という神の御業に手を加える行為は昔からこの異世界でも行われていた。この子はそんな不幸な星の下に生まれた、生けるラブドール、性奴隷として誰かに売られたんだろね。いやー、だとしても、どうだろ、この巨大な胸はなー、豊胸手術とかされてる気もしないではない。
やっと自身を把握できたので、周りを見回す。私は薄暗い納屋みたいな木造の建造物に首輪を付けられ繋がれていた。隣の建物だろう、男たちが酒を飲んで大声を張り上げている。
再び、NPCの記憶を検索すると、やつらは盗賊団。どうやら、今日は大きな盗みに成功したようで、仲間みんなで、さんざん、この子をレ●プした後、酒盛りを始めているらしい。
「まずはっと」
私は丈夫に作られた鉄製の首輪を両断した。隷属魔法がかかった魔道具だと思う。魔封じなどの機能はなさそうだから、この子は魔法を使えなかったのだろう。
この種のアイテムは、無理に外そうとすると警報装置が作動するはずだが、さすが「ゼロ秒魔法」、警報機能の発動前に壊してしまったようだ。
むしろ、警報発動して駆けつけた奴らを皆殺しにしたかったんだけど……。
落ち着け自分! 復讐の虚しさは骨身に染みているだろう? そう、そうだ、ヤツらを殺したところで、この子の、私の、心が晴れるのか? 百年前を思い出せ!
私は「ひとまず逃げる」決断をした。
納屋の扉は鍵も掛かっていなかった。こっそり開けると外は夜。夜風は寒いが、凍えるほどではない。おそらく、今の季節は夏なんだろ。
この惑星から最も遠い恒星、暗く小さな赤色矮星プロキシマ・ケンタウリは公転周期が五十万年もある。百年経ったところで、位置関係はほぼ同じだろう。今夏なら赤い恒星は宵の明星、これが空にあるということは、まだ日は暮れたばかりのはずだ。
外は鬱蒼と茂るトウヒの森だが、私、猫でよかった。夜目の効く私には遠く向こうに町の明かりらしきものが見える。
よし! 走ろ……、おっとっと。
なんだ? どうした、この体、二足歩行をするにはやたらバランスが悪い、足を踏ん張れない。と思って、裸足の足の指を見る。
クッソ、あの野郎たち! やっぱ戻って、血祭りに上げてくれようか!!
この子、足の指がそれぞれ四本しかない! 親指は切り取られたのか、あるいは、遺伝子操作で元々ないのかは分からないが、脱出防止策ということだろう。
しょうがない、そう、私は獣人だ! 恥も外聞もない、四本足になれば、どうということはない!
走れ、走れ! 走る、走る、走る!
速い! 兎の時ほどではないが、猫もなかなかのものだ。しなやかな動作で障害物を避けられる分、森の道なき道を行くには好都合かもしれない。
しかも、そうか! 私、性奴隷なんだ、ってことは、ちょっとやそっと「使った」くらいで壊れられては困る。だからという理由は癪だけど、体がとっても丈夫にできている。
身長は百四十センチくらいあるが体重は三十キロ前後ではないか? 痩せているのにこの子の体力はハンパない。さらに、さらにだ、笹や尖った石で怪我をしても、速攻治る治癒能力。なーーんか、猫最強に思えてきた。
ものの三十分ほどで山中を十キロほどを走破し、私は小さな田舎町の入り口らしき場所に到着した。
「ウエルカム・トゥ・フルール」
そういえば、地球からこちらに転生した時に思った。
この異世界の言葉と地球の言葉は酷似している。まーー、あの女神様が統治する二星なのだから、当然、そういうこと、なんだろうねー
フルールはフランス語で花、これから出てくる国の名は花鳥風月、雪月花をアラビア語にしたもの、です。
ヒロイン姉妹の挿絵をCanvaで作ってみましたが、なかなか言うことを聞いてくれません^^; オッドアイ指定がどうしてもダメだったので、画像ソフトで入れ替えました。まー、イメージってことで……。




