私の「能力」
「これ、なんてムリゲ?』
そんな私のツッコミに気付いたのだろう、女神様はウィンクしながらこう言った。
「いやいや、不老不死であるところが狙い目なのよー、彼は『死による脱出』ができなくなった」
不老不死ということは、魔帝が転生の無限ループから外れる存在となったってことだよね? で、死ねない、ってことわー、絶対に出られない場所に封印されてしまえば、死に戻りできない彼はずーーっと閉じ込められたままとなる、はず。
「あなたと妹さんの能力をうまく使って、ヤツを宇宙の果てに捨てて来てほしいのよー」
どうやら、神様たちは、宇宙の中でそれぞれテリトリーを持っているらしい。アストリアのテリトリー内にある知的生命体が住む星は地球と例の異世界、ケンタウスル・アルファの惑星。そこから見て、数億光年先にでも捨ててきてしまえば、実質上、永遠に戻って来れない。
「それじゃ、よろ!」
「って、あの、妹は?」
「いやーー、実は彼女、うまく例のオプトインに引っ掛けられなかったからさー、どこに行ったか分かんない、テヘペロ」
「あのですねー」
「大丈夫、大丈夫、彼女が転生したNPCについては調査済みだから、双子の姉にあなたの魂を入れてあげる」
「NPCって、ゲームのノンプレイヤー・キャラクター(Non-Player Character)のことですか?」
「そそ、知的生命体って、だいたいはNPCなのよー、そんないっぱいの魂、管理してれるかっつーの」
「ええええ! てことは、そのNPCに私の魂が宿り、PC、プレイヤー・キャラクター(Player Character)になるって意味?」
「ま、そういうことね。魂がある、すなわち、転生の記憶がある人がPC、ない人がNPCとも言えるんだけどね。でもさ、自我とはなんぞや? というのは、哲学的問題でしょ? そも、自身がNPCだったとして、それを自ら知覚できると思う?」
「それは……」
「なーーんで、こんなことを説明するのかって言うとね。ほら、賢いあなたは、知的生命体を『乗っ取る』ことを倫理に悖る行為だと感じるでしょ?」
「ああ、異世界アニメとか見てて、これ、元の人の自我は消えるの? なーーんて思ったこと、ありますね」
「ま、だから、気楽に行ってらっしゃいな。あーー、そうだ! 忘れてた。あなたの力、もうちょっと具体的に解説しておかなくっちゃ。ちょっと誤解してるみたいだから」
神の言うには、私の能力は物を「切っている」のではないとのこと。物体のある空間を僅かに「ずらせ」ているだけ、なんだそうだ。
ということは、私が持つ空間魔導士としての力はごく小さい。一方、今までの転生では全く気づかなかったが、妹の能力は私に比べて、とてつもなく大きい。空間を歪ませワープすることができる能力なのだから。
だけど私の方、空間魔導士としてはショボイわけだが、時間魔導士として最強の能力を有しているらしい。
すなわち、過去に情報を送ることができる! 何で、それが凄いって? 「シュタイ●ズゲート」みたいに皮肉な結果を生むだけじゃん? ってかー
ノン、ノン。あのねー、私の知る異世界での魔法というものはRPGのそれとはちょっと違う、そこが肝なんだな。
車のエンジンに例えれば分かり易いかな? 回転数が上がれば上がるほどスピードが出る=大きな魔力を行使できるってこと。
すなわち、同じ火魔法でも、レコード並みの33rpmなら線香花火程度だが、30万回転させることができればメラゾ●マ級の火の玉を呼べる、といった具合。どこまで上げて魔法を発動させるか? も、魔法のテクニックのひとつだ。
ただ、どれだけ素早く魔力にあたる回転数にを上げられるかは、その人次第。能力の高い人、すなわち魔法加速度が大きい人は素早く大魔法を行使できるし、そうじゃない人は、エッチラオッチラ詠唱しても、暖炉に火を点けるのがせいぜいということになるわけ。
そう、もう分ったね!
私の情報遡行魔法で、詠唱開始を遥か昔、過去に飛ばしたら、どうなるかなー
延々一億年詠唱した魔法の威力たるや、そりゃ凄まじいでしょ? しょぼい空間ずらし魔法だったとしても、星を真っ二つに割ることすらできてしまう。
さらに、さらにだ。魔法というものは常にシリアライズされる。すなわち、詠唱してからその結果が生じるまで、次の魔法を行使することはできない。だっけどさー、「過去に飛ばす」能力さえあれば、並行詠唱なんていっくらでも可能、数億レベルの多重でも、できちゃうわけですよ。
いやー、前世では人の首を飛ばすだけの「処刑人魔法」という認識だったけど、なんか、チートはホドホドにー、って感じだね。
でも、まー、魔法の核心は知らなくてよかったよ。怨念にかられて殺しまくってた時の精神状態で、万一、この仕組みに気付いていたら、私、マジで星ごとぶっ壊し、全てを道連れに自殺を図っていたに違いないもの。
「それと、もう一つ、分かるわね。過去に魔法詠唱を飛ばせるということは、今、本当に今、ゼロ秒で魔法を発動させられるってこと。普通、魔法を唱えようとしたら、どんなに魔法加速度の大きい人でも、考える時間があって詠唱時間がある、それすらも上回れる、このことをよく覚えておいてね」
こちらも、無意識に魔法を使っていたけれど、言われてみれば納得がいく。魔帝の必殺技、魔法カウンター発動より早く、彼奴の首を落とせたのは、このゼロ秒発動に寄るところが大きいんだろう。
「分かりました。じゃ、ひとまず、私のミッションは『妹を探す』ことから開始でしょうか?」
「いんや、そこまで慌てることないわ。あなたの行く異世界は、あなたが死んでから百年ほど後だけど、魔帝復活までは、少々猶予があるはず」
「百年後の世界に慣れることからですか? ところで、私、また兎獣人じゃないんでしょうね?」
「あーー、それは違う、もちろん、違うけど……」
「って、なんですか、その笑い」
「まーー、転生してのお楽しみにしときましょう。じゃー、いってらっしゃい、よい旅を」
って、ネトゲのGMかよ! とツッコむ間もなく、私はまたしても例の渦に飲み込まれていた。
これ、いや、いやなのぉぉぉ! めっちゃ、気ん持ち悪いし、そもそもあの天界を歩いたのって何だったんだよー、って、まだ加速するわけ?
うーーん、ギャァァァl!、死ぬ、死ぬ、逝く、イックゥゥゥ!!!




