デルタフォース
城砦の中は、炎に包まれ、まさに阿鼻叫喚。堪らず敵は跳ね橋を下げた。
市民を逃し、死兵となって討って出る、彼らにそれ以外の選択肢はない。自暴自棄になり狂ったように武器を振り回すオーガ兵は、待ち構えていたオーク、人族兵に易々と討ち取られて行く。
これはもう戦いとも言えない。だが、だとしても、攻撃の手を緩めるわけにはいかない。
人族もオーク族もエルフ族も兵は皆、知っている、全て分かっている。だから、虐殺の快楽に走る者など一人もいない。逃げ出した非武装の市民は見逃しつつ、鎮痛な面持ちで敵の命を刈っていく。
やがて、A星、B星が西に落ち、夜の帷が降りた。
「火が収まってきしたね」
「行きましょう!」
私、シズク、ジュリエット、フレイ、クロード、ダフィーネ、ヨリミツ、キントキのデルタフォース八名は、魔法のポンチョを羽織る。
ポンチョには炎避けの魔法が掛かっていて、かつ、特殊な素材でナパームが張り付かないようになっている。この戦いのため、魔法学園の特別チームが作ってくれたらしい。
そうかー、結果、こんな事態になることは、ジュスティーヌ女王のみならず、各国の幹部も、そしてあのメルクーリ学園長も折り込み済みだったんだろね。
私たちは跳ね橋を走り渡る。ついに私たちは城壁内への侵入に成功した!
城壁の向こうには一般市民が住む街になっている。うわー、これは、予想以上に酷い、酷すぎる有様だ。太平洋戦争末期、空襲を受けた日本の大都市はこんな感じだったのかもしれない。
黒く焼けこげた家屋、炭のような黒い物体は、かつてオーガであったものだろう。手足すら明確ではないから、形からの判断はできないが、小さいのは子供かもしれない。
焼け焦げた臭い、人が焼けた臭い、火葬場で嗅ぐ臭い、まだ、炎は収まり切らず、各家の中で燻っている。
覚悟はしていたのだろうが、みんな、顔色が悪い。若いジュリエット、フレイにとって、ここまでの惨状は酷いトラウマになるかもしれない。嘔吐するのを必死で堪えているのが分かる。
酸鼻極まる街を抜け、私たちは魔帝の王城前に辿り着いた。白亜の尖塔が左右に二本、真ん中は浅葱色の屋根を抱く大きなドームになっている。おーー、昔に比べて随分立派になったねー、でも、三階建てなのは同じ、最上階の奥に魔帝の居室があるのだろう。
百段はある長く無駄に広い階段、なんなんだぁ〜、王宮はいつもこれ、を上ると巨大な鉄の扉が待っていた。
「少し、下がってください」
高さ約五メートル、リベットで補強された厚さ五センチの鉄扉だけど、ねー、私の魔法の障害にはなり得ない。危なくないよう、五センチ角くらいに刻んで壊す。
ガラガラガラ!!
大きな音を立てて鉄の扉が消失した。
走り込む八人、槍を構えたオーガ兵が行手を阻むが、あっさり首が飛ぶ。正面の階段を駆け上がり二階へ。
「この先、罠が」
「サンキュー、ダフィーネ」
三メートル先の床を切り裂くと、下から剣が突き出して来た。
「あそこにも」
あー、毒針かな、仕掛けを壊しながら進む。って、ことは、まー、私たちの侵入は読まれてたのかもしれないねー、ちょっと不安もあるな。
「あっ」
後ろから弓を射ようとするオーガ、すかさずフレイがこれを射抜く。すごいな、私より勘がいいかも。
「おい、おい、気をつけてくれよ」
「かたじけない」
部屋から突如飛び出してくる敵の刃に手を負傷したヨリミツをすかさずクロードが手当する。右から左から飛び出し、襲いくる敵兵、そこかしこに仕掛けられた罠、なんていうか、アレよ、アレ、ゾンビが突然出てくるゲーム、バイ●ハザードみたいだねー
ゲームといえば、メタルギ●ソリッドみたく隠れつつ進んでるんだけど、嗅覚も鋭いオーガ族を欺くのは難しいみたいだね。
やっとのことで三階へ続く階段前に到達した八人。
階段の上には、多数のオーガ兵が手ぐすね引いて待ってるんだろね。彼らには私の魔法の欠陥はお見通し、直接視認されないよう、各所に身を伏せているらしい。
「行きましょう! 私に見られたら終わり、という点を敵は熟知しているようです」
「そうだな」
「階段を上ったら、部屋の向こうにワープすればいい。少し時間がほしいの」
「うん! その作戦いいね。シズク」
「シズク殿の支援は我らに任せられよ!」
階段を駆け上がったら大広間が広がっている。横から来る敵は私が切り裂く。八人はシズクを守るよう円形に展開した。
おそらく、ここは魔帝の謁見の間ということだろう。舞台のように一段高く玉座が設らえられており、その奥に鉄扉がある。
「シズク殿、あの扉の先に魔帝がいるはずだ!」
「分かったの、あそこの前へ」
シズクが魔法を詠唱する五秒間、その間にも飛びかかる敵が三人。
ゲートができた!
「飛び込め!」
八人は部屋の向こう側、魔帝の居室に続く大扉の前に立っていた。
「魔帝様をお守りしろ! ここから先へは行かせぬ!!」
周りから湧き出るようにオーガ兵が飛びかかってくる。倒しても倒してもキリがない。次から次、まさにゾンビが湧き出るように迫り来る敵。
私一人では対処しきれなくなってきた。すかさず、ジュリエットの剣が、フレイの弓が、キントキの斧が、ヨリミツの長剣が支援する。ついに、クロードとダフィーネも短剣を抜いた。
八人の、魔法が剣が弓が、HaKaを舞う。寄せては返す波のような敵だが、次第にその勢力が弱まってきた。
そろそろ頃合いか。




