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雪待つ花は死の香り〜ノマド転生者の姉妹は幸せになりたい  作者: 里井雪
合戦

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非情の掃討

 あーー、やっぱねー、そういうことだよねー


 敵が布陣して待ち構えていたのは、人族軍の奇襲はサルジュ単独だろうと踏んでたからなんだろね。どう頑張っても五千が最大数のサルジュ人族軍に対し、オーガ軍は一万の軍勢を準備できていた。だから、正面から対峙して打ち負かす選択肢をとった。


 だが、彼らはシズクの能力を知らなかったか、過小評価していた。まさか、七万五千の大軍が押し寄せるなど、考えもしていなかったのだろう。しかもその大軍は、突如目の前に現れ、もはや戦うしかなくなって、午前、大敗を喫した。


 このまま戦い続ければ全滅だ。だからこそ、一騎打ちを持ちかけたのだろう。


 しかも、しかもだ、彼らの大将が負けることも予期していたんじゃないかな? ジュリエットは計算外だったとしても、サルジュには、キントキ、ヨリミツという豪傑がいることは、彼らも知っていたはずだ。


 「大将首三つと引き換えに撤退を許してくれ」ということなんだろねー


 だが、だが、しかし! 駄菓子かし。


 目的のためなら手段は選ばなぬジュスティーヌ女王は甘くない、眉ひとつ動かさず極悪非道な虐殺をやってのける。


 いんやー、情け容赦ないのは、彼女が女だからかもしれないね。女の辞書には「玉虫色解決」なんてないから、彼女は私たちが魔帝封印を失敗した時のリスクヘッジまで考え決断している。


 それはさー、敵、敵となりうる者の数を一人でも多く減らし、私たちが再び転生して戻るまでの時間稼ぎをすること。すなわち、彼女はサルジュのオーガ軍を皆殺しにしようと考えている。


「追え! 掃討せよ!」


「待ってください! 伏兵がいます!!」


 ダフィーネの忠言に迷わず従う女王、こういうところもさすがだ。


「止まれ!! 戻れ!!」


 と言うが早いか、平原に異様な土饅頭ができる。地中からは、胴の直径三メートル、伸ばした足を入れると十メートルもあろうかという巨大な土蜘蛛が三匹現れた。


 あのまま突撃していれば、多くの兵は、鉄をも穿つ蜘蛛の足にあっさり串刺しになっていただろう。まー、円●プロは、私ですかねー


「さすがに、ここはお任せを」


 進み出た私は巨大な蜘蛛の胴体を右から左に断ち切った。


ブシャァァァ!!!


 青い血をあたり一面に撒き散らしながら、三匹の蜘蛛はあっさり倒れる。


「ダフィーネ、蜘蛛、まだいるんじゃない?」


「ええ、あそこに三、あちらに四、城門付近に二、ですね」


「うーーん、困ったなー、私、目視できないと斬れないのだけど」


「そこは、我々にお任せを」


 うん? カマル王が進み出てきた。


「このような時の魔導士隊です」


 あーー、なるほど! 魔法の国カマルには強力な魔導士も多い。特別に編成された魔導士部隊だが、その大半は女性。まー、戦闘狂のお二人もいるが、この異世界での戦争は男の仕事となっている。


 先ほどからの血生臭い戦いで、みんな、青い顔をしている魔導士部隊だが、勇を鼓して進み出てきてくれた。


「お願いします。ここから三百メートルほど北へ」


「構え、打て!!!」


 三十名の魔導士が魔法陣を描き、火の玉が宙を飛び着弾する。三十名の息はぴったり、照準を合わせた精射は、鍛錬の成せる技だろう。


ドカーーン!!


 地に落ちる火の玉は、まるで空爆、高位の魔導士ともなれば、その魔法で作る火の温度は三千度に達する。地球の武器に例えれば、サーモバリック爆薬に相当する。


ズル、ズル


 そりゃ、魔獣だって熱いよねー、熱に耐えられなかったんだろう、着弾点に土饅頭ができて土蜘蛛が這い上がる。もう、見えちゃえばねー、勝つる、あっさり、私の餌食になって青い血を撒き散らす蜘蛛さんたち。


 次、その次、あっと言う間に、平原は蜘蛛の死骸と青い血のオブジェに彩られた。って、自分でやったのだけど、コレ、結構、グロいわー、まーー、しばらくしたら消えるんだけど、シュールレアリズム彫刻みたいだ。


「あーー、あの土蜘蛛ですけどね。手足は結構美味しいんです。包丁じゃ切れないから、バラバラにしておきましょうか? 焼いたり茹でたりしておくとですねー、なぜか消えないんですよ」


「い、いや、いいから、いいから」


 でも、アレだね。この蜘蛛さん、オーガに操られてたんだろね、こんなにあっさり土木工事ができたのも、あの子らのお陰なのかもしれない。


 まー、殺した私が言うのもなんだけど、使うだけ使って、スケープゴートにして自分たちは逃げる。オーガの野郎、魔獣とはいえ、ひっどい使い方するもんだ。


 ということがあったので、敵は全て城に籠ってしまった。五メートルはある城壁、十メートル幅の堀、まー、これ以上の進軍は無理だねー


「ここからは、デルタフォースのみで行きましょうか?」


「いや、まだだ」


 って、ジュスティーヌ、さすがにさー、それは、さー、地球じゃ戦時法違反だよ? 皆殺しったって「兵士に限る」くらいにしておかないと。これ以上やったら、一般市民も巻き添えになるよ?


 だが、それでも、女王は引かない。


「弓、構え、打て!!!」


 エルフの弓隊が弓を引く、強弓から放たれた矢は城砦を超え、敵陣深くに落ちるだけ、だけなんだけどさ、矢の先には妙な球体の珠が取り付けられている。


 あーーあ、これさー、大量破壊兵器で有名はヤツ、地球じゃ遠の昔に使用禁止になってるよ?


 ジュスティーヌは地球の知識を持っている。だから、こういう戦いを見越してヤバイ、とーーってもヤバイ薬品を開発させていたらしい。


 薬品の名はナパーム、ガソリンなどの燃料に増粘剤混ぜ、ゼリー状にした焼夷剤だ。標的に粘り付いて燃え続けるため、消火は極めて困難。いわゆる「地獄の炎」というやつだ。


 こいつを仕込んだ玉を矢の先に付けて飛ばす。着火は、もちろん、先ほどの魔導士隊の火魔法ということになる。まー確かに、火魔法たって、魔獣とのサシの勝負なら有効ってくらいのレベル。大規模な火災を起こすとなれば、こういう方法になるのだろうけど、さー、うーーん。


 うわぁー、酷いな、オオエ城、城壁の中が火の海になっているが分かる。轟々と音を立て炎は街を焼き尽くしていった。

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