緊急会議
言葉にしちゃったから、その言霊かもしれないけど、私のその手の勘は鋭い。まー、悪い予感は当たる、というのはよくあることだと思うけど……。
遊び尽くして疲れ果て、ブランシュ=メゾンで寝て、翌朝、学園に戻ると、ジュリエットは不在で書き置きがあった。
〜 本日、十二時より、緊急会議が招集されました。アネモス王宮の謁見室に参集されたし。お手数ですが、本書状を学園長に届けていただきたく思います。 〜
と、学園長宛の封書が添えてあった。学園長も会議に出ろ、ということかな? てことは召集令状だよねー、なら封書の色は赤だと思うんですがー、発信元がジュリエットじゃなく、ジュスティーヌ女王になってることからも、事の重大性が伺える。
隣の部屋に行くと、フレイも不在、おそらくジュリエットとともに王宮に留まっているのだろう。早々、学園長に手紙を届けた。
「こ、これは!」
「私へのメモには『緊急会議』とだけ記されていましたが、議題について触れられていますか?」
「いいえ、ただ、私への招集理由として、カマル王も出席されるため、とあります」
そうか、国家元首同士のホットラインを使う会議ということになるのか。だから、「王宮に来い」ということなのね。こりゃー、まった戦争か?
「しばし、お部屋で待っていてください。私は、留守中の手配を済ませて、お伺いいたしますので」
「分かりました。では、お待ちしております」
部屋に引き上げ一時間ほど待っていると、ノックの音があった。
「お待たせしました」
ドアを開けると、セージ・メルクーリ学園長がダークスーツの正装で立っていた。
「では、行きましょう」
クローゼットを解錠するとゲートの青い渦がある。
「初めて見ました」
「不安もあるでしょうが、全く無害ですから」
私は学園長の手を引いて渦の中に入る。シズクが続いた。
たちどころに、三人はリーフの首都アネモスにある王宮に到着した。ここも、かなり広いけれど、クローゼットの中ですよー、キョロキョロ周りを見回す学園長に私は、
「こちらへ」
クローゼットを開けると、いつから待ってたんだろね。侍従長が待機している。
「アーベルさん、お久しぶり」
「スノウさま、シズクさまもお元気そうで……。あ! 失礼しました。侍従長を務めますアーベルと申します。セージ・メルクーリ学園長殿、ようこそおいでくださいました」
「よろしくお願いします」
アーベル侍従長は「この度はカマル魔法学園長をお迎えする栄、恐悦至極にございます」とかなんとかクドクド言ってたが、まーー、いいや、三人は謁見の間に案内された。
謁見の間の奥の方には三十人は座れそうな、巨大なテーブルが設てあるが、部屋の方がさらに巨大なので、遠近法により普通の会議テーブルに見えちゃうね。
普段は女王が座る一段高い舞台は全ての什器が取り払われ、これも無駄に大きい、16:9のスクリーンが二つ、幅が三メートルほどあるので、120インチかな。
スクリーン二つということは三元中継会議だねー、左右スクリーン下と舞台の中央には魔法の珠が置かれている。左右のがプロジェクター、真ん中のはこちらを写すカメラってことかな。
既に一同が着席していた。舞台に近い方の左側にジュスティーヌ女王、そこから出口に向かって、宰相ギルベルト、近衛師団長ハグマイヤー……、王宮の重鎮が勢揃いしている。
女王の向かいがジュリエット、あーー、実質上のナンバー2なわけね。その隣が三席空いているのは、学園長と私たち用の席なんだろ。続いてクロード、ダフィーネの順なのだが、その隣にフレイが座っているではないか!
「なんや、スノウ、ウチがいることに違和感あるんか? あのなー、これでも、王族に連なるトーバルズ家の姫君なんやぞー」
「そんなこと、言ってなかったじゃないですか」
「聞かれんかったからなー」
という会話があって、学園長、私、シズクの順で着席した。
「ジュリエットは今日の会議の内容聞いてます?」
「なんでも、ザフラの王マモンから緊急招集がかかったらしいですわ」
「ザフラですか、意外なところから……」
《ザフラ!》
「魔帝絡みだと思います」
「やっぱりね。でも、魔族であるマモンから魔帝の情報が来るということは、彼ら、寝返った?」
「ということになりますね」
「彼らにとっては、侵略を仕掛けた相手であるリーフに窮地を救われた恩義があるのはもちろん、食糧難に直面し、なにより経済が大切と骨身に染みたのでしょう」
「人族、魔族、いがみ合いはやめ、共存共栄の道を選ぶ時代が来たってことですよね。それに」
「それに?」
「逆らったら、スノウさんに殺されるんですから」
「って、まー、反逆の意図を見せたら、直ちに皆殺しですけどねー」
「長い物には巻かれる賢い選択、いいじゃないですか」
「って、さー、ジュリエット、君いくつだっけ?」
「あら、もう十五歳、大人ですよ?」
そんな話をしていたら。
「では、そろそろ刻限ですので、回線を繋ぎます故、みなさん、お静かに」
そう宰相が告げると、舞台に設置された魔法の珠が、淡い光を放ち、映像が映し出された。今回は映す範囲が大きいからだろう、ホログラムではなく普通のカメラ映像だ。
向かって左がカマル、右がザフラ。カマルは当方と同じく、長い会議机にカマル王始め、その重鎮と思しき人々が着席している。カマル王が向けた視線に学園長が目礼した。
一方、ザフラはカメラ珠の前に、ドカーンとマモン一人が座っているだけ。大写しの豚、というか、猪の異形はかなーり迫力がある。
「本日、司会を務めます。リーフ女王、ジュスティーヌ・ド・ナヴァールです。参加人数が多いため、代表のみご挨拶いただき、他の者は発言する際、その名を告げることとします」
「うむ、カマル王、デーネシュ・フリードリヒ・フォン・ガヴラスである」
なんか、偉そうなヤツだなー
「我は、ザフラ王マモンと申す。議長殿、まずは、当方からの報告をいたしたい」
「了解しました。マモン殿、発言を許可します」
アレ、なーーんか、テレビ会議に慣れてるなー、二人とも。
「単刀直入に申し上げる。極東の国サルジュにて、自称ルシファーという魔族が現れ、魔帝の再来を名乗っておる、とのことじゃ」




