図書館
それからは四方山話に移行し学園長との会食は楽しく続いた。二時間後、部屋に戻った私たち。
「フレイさんを信用していなかったということでは、ありませんから」
「いや、そんなこと、気にせんといて。信用してるかどうかは関係ない、情報が広がって、この魔法が悪用されたらとんでもないことになる。補給も不要で、なんの前触れもなく、他国に兵団を送れるっちゅうことやからな」
「実際、そのように使われたことがあるのです」
「え!」
ジュリエットは魔族侵攻の話を手短に解説した。
「そうなるわなー、シズクちゃんも酷い目にあった、ちゅうこっちゃな」
「もう、これで、私たちの間に一切の秘密はありません。だから、今日の夜は、みんなでブランシュ=ネージュに行きましょう! 紹介したい人たちもいますし」
シズクも大きくかぶりを振った。
私たちは連れ立って、ブランシュ=ネージュに行き、フレイをクロードとダフィーネに紹介した。その夜は、冒険者ギルド併設食堂での会食となった。
そうだよね、やっぱ、これも女神様のお導きというか、権謀術数の一環なんだろねー、ま、でも、フレイ、気の置けない好エルフだし、いいんじゃないのかな?
ということで、一波乱あったけれど、そこそこ平穏な学園&冒険者生活が続いている。だけどさー、シズクの「言葉」だけは、なんとかしたいと思ってる。
だからこその、魔法学園図書館ですよ!
ペンタゴンの地下にある図書館、蔵書は一億冊を超えるらしい。異世界ラノベとかだとさー、グリモア、なーーんてあるけどさ、残念ながらこの異世界の本はただの無機物、それ自体に魔法を含むことはないみたい。
あくまで原則は一つ。図形(魔法陣)や数式といった数学モデルに依拠した「想い」が魔素と反応し、魔力という力(force)となって具象化、物理現象となるのが魔法だ。
物理現象とは、私の魔法のように空間がずれる、シズクのように空間が歪む、炎、水、氷、風、雷。あるいは、治癒魔法のように物があるべき姿に戻る、などなどだ。
すなわち、宇宙を支配する四つの力、重力、電磁気力、強い力、弱い力に加え、この異世界には魔力が存在している。言い方を変えれば、この異世界には魔法の元である魔素があり、五つ目の力である魔力の存在を認知できる。
まー、ここからも、あの女神様の作為なんだろねー
もし、魔法の元である魔素が全宇宙に存在するのであれば、地球でも「想い」さえあれば、魔力が生じ、魔法が使えるはず。だが、そんなことはなく、魔法の存在はこの星限定になっている。
というのは余談だが、って、司馬遼太郎かよ。
魔法図書館にある全ての本は電子化されており実体がない。というか、この世界で、本と言えば、魔法の珠から映し出されるホログラムだ。手紙や書類の類も全て実体はない。まー、百年前には紙に印刷されてたんだけどね。この百年でせっせせっせと本を自炊した結果ということだね。
この学園の地下には、サーバーに相当する巨大な魔法の珠が、本番、予備の二台設置されている。当然だが、ここまでの蔵書数、BCP(事業継続計画)も完璧で、約千キロ離れた施設に三台目の珠があり、随時、データがバックアップされてるんだよね。
だから、ここ閲覧室には、サーバーの端末である小さな珠が真ん中に置かれたテーブルと椅子が百脚ほど設置されているだけだ。
というところも含めて、全部、本で調べたんだけどねー、ネットのように検索もできる図書館システムなのだけど、「呪い」の情報はかなり少ない。
ひとまず分かったこと。
ー、呪いの原理は魔法と同じ、呪者の想いが魔力により呪いとなって被呪者が呪われる。
二、シズクのような被呪者が呪われた状態のままなのは、呪者の想いが残っているから。
三、すなわち、呪いを解く最も手っ取り早い方法は、想いを消す=呪者を殺すこと。
四、かけられる呪いの強さは呪者と被呪者の「格の差」による。
五、シズクの格はかなり高いため、呪者は彼女を「殺す」ような強い呪いを掛けられなかった。
六、「殺す」なら直ちに決着可能なのに、それができず、呪者はあえて面倒な「言葉を奪う」呪いを掛けた、と推測される。
本で調べられる限りの解呪方法を試してみたが、全て失敗した。五、六あたりから推測するに、シズクとほぼ同格、すなわち、魔王クラスの者で、かつ、魔法に秀でた者が呪いを掛けた、ってことだろう。
魔王といっても、マモンのようなノウキンではない。おそらく、女だねー
女の魔王というと、北方の国、地球のヨーロッパだと、スウエーデンやデンマークあたりの国アスフールにいるアスモデウスかなー、あー、やなヤツ、というかさ。
実は彼女、魔帝を私が殺した後、迫り来る人族の軍勢から、まんまと逃げおおせた、唯一の生き残りだ。
七罪でいうところの色欲担当。やったら巨乳で、くねくねしてて、女の私からすると「マジ、キッモー」の一言なんだけど、なぜですかねー、男は、バカで単細胞なんでしょねー、色香に迷って奴隷にされてるヤツ多し。
とはいえ、人族から見ればお尋ね者の身である魔王、従う者はごくわずか。アスフールは国と称してはいるが、自治領程度の大きさで、彼女は守りを固め生き延びるためだけに腐心しているようだ。
怪しいっちゃぁそうだけど、サクッと行って殺してくるのもなかなか厄介な場所にいるし、そもそも、彼女の持つ魔法がねー、私の天敵なのですよ。うーーん、ま、犯人と決まったわけでもなし、今のところ、魔帝再誕の情報は皆無だし、ならば、これも「明日考えよう(After all, tomorrow is another day.)」だねー




