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雪待つ花は死の香り〜ノマド転生者の姉妹は幸せになりたい  作者: 里井雪
魔法の学園

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魔法学校の科目

 フレイ、また、新しい仲間かな? そんな期待を持ちつつの翌日は入学式。まぁー、日本みたいに仰々しくはなく、テレビ会議で学園長が挨拶するだけなんだけどね。


 その後は、どの講義を取るか? の書類を提出する事務手続きがあって、翌日から授業開始となるようだ。


 ちなみに、この魔法学校での学問というのは、どこぞの異世界モノにあるような、実地訓練の科目はない。ここは研究機関、魔法のメカニズムを解き明かす学問をする場所だ。


 ざっと科目を挙げてみると、


 まず、物理学、この異世界にも万有引力の法則なんてのは普通にあるようだし、時空についての相対性理論も確立している。これに加え、魔法力学、魔力理論なんてものがある。前に言った魔素と魔力の関係、フレミングの法則の魔法版を導き出すとかだね。


 続いて薬学、生理学、まーー、これはねー、魔法薬の生成方法から始まって、それが身体に及ぼす影響、医学に近いところまで広範な研究が行われている。さらには、魔法技術学というのもあって、魔道具の作成方法などを研究している。


 興味深いのが数学、地球にあるような代数、幾何もあるが、魔法数理というのが面白い。魔法がどのようにして動くのか? の理論を組み立てる学問だ。数学であるには違いなく、定義→定理→証明の世界なんだけどね。地球の情報数理に例えると分かりやすいかな? コンピュータの数学モデルに相当するチューリングマシンの魔法版を考える、って感じ。


 その他、魔法文化、文明によって、この異世界特有の考え方もあるが、経済学、倫理学、政治学、歴史あたりは地球のものに近い。


 ちなみに、この異世界には文学、美術、音楽という学問は存在しない。詩や小説、漫画、絵画、音楽などの芸術はあるのだが、あくまで芸術は芸術、それを体系だった学問として研究するということはしないらしい。


 ジュリエットは魔法数理をメインに、この周辺を学ぶことにしたようだ。


「新しい魔法モデルの構築が理想だけどねー、なんだか楽しそう」


 いやー、やっぱ、すごいわこの子。ジュリエット・マシンが理論構築されて、将来、ジュリエット賞なんてできるのかもねー


 そんなこんなで学園生活も始まった。冒険者の方はシズクのワープと私の瞬殺を組みあせて、大概の場合、午前中に終わる目標は達成されている。その足で学園に戻って、午後からの授業を聴講したり、図書館で調べ物をしたり。


 私たちにとっても、ジュリエットにとっても、なかなか充実した日々が過ぎて行った。


 そんなある日……。


 ジュリエットは周りの寄宿生の手前もあるので、冒険者をやる休日以外は寮に付属する食堂で夕食をとることにしている。私たちもメイドとして同席し、フレイとの交流と深める意味でも四人で食事を共にするのが常だ。


 この学園は貴族に限らず、広く平民にも門戸を開いている。食堂についても、貴族、王族を特別扱いせず、カフェテリア方式というか、ぶっちゃけ学食と大差ない。なにをどれだけとっても無料だが、自分で好きな惣菜を取り、トレイに載せて、共用テーブルで食べる。


 ただ、全てのメニューが人族向けだ。獣人である私たちは特に問題ないのだが、エルフのフレイは、動物性タンパク質を多量に摂取すると体調不良になるなど、いろいろ制約が多い。メニューを選ぶのに時間が掛かり、三人が先に食べ出しているケースが多いのだが……。


「なに言うてんの? ぶつかって来たのは、自分らやろ?」


「蛮族の分際で無礼な物言い、許し難い」


「蛮族やと! アホか、お前ら?」


 どうやら、人族のバカがフレイにぶつかり、お茶が溢れて服が汚れたとか何とか、難癖を付けているらしい。


「貴っ様、その物言い、後悔させてやる」


 ちょっと、ちょっと、なんですか、ソレ!


 当然だが学園内での帯刀は禁止されている。だが、時々、不良を気取りたい厨二病患者が、校則違反をやることがあるんだよねー、そのバカは、腰に挿している刃渡り一メートルほどサーベルに手をかけた。


「そこに直れ、土下座して命乞いするがよい!」


 単なる脅しなんだろうけど、フレイとて、こんなことで土下座なんぞできないだろう。


「あいつ、マチアス・シュヴァリエって言うんです、勘違い貴族というか学園でも札付きのバカなんでが、彼は、公爵家の三男。ここでフレイがヤツを叩きのめすのは、ちょっとまずいですね」


 今までの付き合いで、フレイは弓の名手であるととも、武術の心得もあるエルフだと分かった。バカの構えからして、素手で戦っても、後れを取ることはないだろう。


 とはいえ、公爵家の男をボコボコにしてしまえば、どんな災禍が降ってくるやら分からない。


「私が腕を切り落としましょうか?」


「いえ、それもまずいです、フレイが魔法で斬った、と誤解されるわ」


「あーー、そうか」


「あ! ちょっと、その手袋、貸してください」


「なるほど!」


 私とシズクは使用人としての体裁を整えるためメイド服を着用している都合上、いつも白手袋を嵌めている。私は、ジュリエットの意図に素早く気付き、左の手袋を渡した。


 手袋のような軽いものを十メートルも飛ばせるというのは、おそらく彼女が持つ魔法の加護によるものだろう。シルクの白手袋は、狙い違わず、マチアス君の額を打った。


「な、なにをする!」


 マチアス君が手袋が飛んできた方向に目を向けると、そこには、ジュリエット姫の刺すような視線が待っていた。


「丸腰の相手を剣で威嚇するなど、騎士道に悖る所業、我が名はジュリエット・ド・ナヴァール、義により貴様に決闘を申し入れる」


「なんだと!」


「明日正午、場所は学園裏の丘、我は従者二人を従え、果し合いに望まん」


「が、学生が、決闘だと?」


「あら、校内での帯刀は校則で禁止されておりますが、生徒が決闘してはならぬ、という校則がありまして?」


「くっ、言わせておけば、生意気な奴。よかろう女、決闘である以上、命を落としても文句は言えぬのだぞ! 首を洗って待っていろ」


 マチアスは取り巻きの金魚の糞五人を連れ、スタスタと食堂を出て行った。


「ジュリエット、気を使わせもうて、申し訳ない」


「ジュリエットやフレイさんが手を下す必要はありません。餅は餅屋、殺しは殺し屋、取り巻き含めて、全員の首を飛ばしますから」


《お姉ちゃん、それはダメなの》


「スノウ、その顔で、平然と『首を飛ばす』とか言われると、逆に怖いわ」


「スノウさん、敵を殺さずに気を失わせる方法、ありませんか?」


「うーーん、ちょっと考えますが……。あー、あの手袋、シルクのいいやつだったので、拾ってきますねー」


 ってどうする? あ! そう言えば!!!

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