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雪待つ花は死の香り〜ノマド転生者の姉妹は幸せになりたい  作者: 里井雪
プロローグ

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3/11

勇者と私

「……だけどね、血塗られ、呪われし我が身を見て気付いたよ。どんなに人族を殺しても、妹が蘇ることなんてない。『復讐など虚しい』というのは自明の(ことわり)、宇宙の公理とでも言えばいいかもしれない。それに……」


「それに?」


「人族が、村人たちが、妹を食糧にしたことは許し難い。だけど、真の悪党、諸悪の根源は本当に人族か? ってこと」


「あなたの、仰る意味が分かりません」


「バカ! ちゃんと勉強しとけ! 世界を動かすのは人ではない経済だ! 魔帝との戦いにより、人族の経済は疲弊している。飢饉が来たら蓄えもない村人はカニバリズムに走る。結局、諸悪の根源はコイツよ!」


 私は、床に転がり、恨みがましく瞳孔を開いて虚空を見つめる魔帝の生首を蹴っ飛ばして話を続けた。


「すなわち、コイツを殺せば、ちっとは世の中ましになるってことに気付いたってわーけ」


「……」


「でもね。私も、あんたをバカにはできない。こんな、当然の理屈に辿り着くために、十年の歳月が必要だったのだから」


「いえ、そんなことはございません、同じ転生者である私の浅慮、汗顔の至りです」


「褒めていただけて光栄だけど、どうかなー、偉そうに御託を並べちゃったけどさ、私もう疲れた、また転生して妹と再会したい、というのが本音かもね? この気持ち、同じ転生者なら分かるでしょ?」


「分かります」


 勇者はシニカルな笑いを浮かべた。同病相憐むってことかな? まー、彼もさー、不幸な星の下に転生したことには違いない。「人族の星」とかなんとか祭り上げられて、魔帝との一騎打ちという無理ゲーに強制参加させられたんだから。


「そろそろ、人の気配が近づいてきたね、一思いにグサッとやって」


「では」


グサッ!!!


 目の前が暗転した。何度も何度も経験している死の瞬間、この虚空の遥か彼方に見える光に向けて泳いでいけば、次の転生が待っているはず、はず、なのだが……。


アレ?


ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー

おめでとうございます!

最強の力に目覚めたあなたは女神のエージェントとなる資格を得ました!!

<条件>

女神が提示するミッションをクリアすること

<報酬>

妹さんとの幸せな人生♡


「同意する」「拒否する」

ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー



 なんじゃ、こりゃ? 初めて見るぞ! 前世でシステムエンジニアをやっていた私にはお馴染みの画面、いわゆるオプトインダイアログなわけだが、剣と魔法、異世界転生モノの世界観に合わなくない?


 いやー、でもないかー、最近のアニメ、ちゃんとした説明もなしにRPGのステータス画面が出たりしてるしねー


 って、どうする? コレ、女神様の加護を得られるってことなの? だけど、条件付きとか、わざわざオプトイン求めるとか、怪しい、めっちゃ怪しい。


 フィッシングサイトに誘導され、ランサムウェア仕組まれる、身代金の支払いで借金まみれ……、なーーんてのは現世(うつしよ)のお話、だったよね?


 今の私に失うもんなんてない! ヨシ! 決めた!!


「同意する」 ポチっとな。








 本日は初日ということで、三話まとめてリリースしました。以降は、一日一話、6月26日まで連載が続きます。


 いやー、私としては二年ぶりの異世界モノ長編です。朗読劇の脚本とか、短編書いて同人誌出して文学フリマ出店とか、書くには書いてた、というか書きまくっていたのですが、長編を書く時間がない! そんな中「ながら書き」の「技」を会得できたんじゃないかな?


 今回はTSじゃない百合っぽいのにしてみました。なーーんか、私の作品の常連キャラは多数出てきますが、主役と妹、それから、姫君の妹は、私的には「新キャラ」かな?


 あとわぁー、古今東西の好きな小説ネタや2011年以降の深夜アニメネタ(もっと古いのもあるな……)が満載なのは、いつもの通り。異世界モノと言いながらエピックファンタジー寄りで、かつ、シリアス&シニカルなサイエンス・ファンタジーなのも同じ。今回は魔法の仕組みを「物理法則」で説明してみましたw


 「こういう世界設定が好きな方」限定のニッチな作品ではありますが、楽しんでいただければ幸いです。

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