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雪待つ花は死の香り〜ノマド転生者の姉妹は幸せになりたい  作者: 里井雪
冒険者の日々

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19/61

ダフィーネの能力

「ゲホ、ゲホ。砂埃スゲー。なにすんだよー、スノウ、みんな真っ白じゃねぇか!」


 というクロードをスルーして、私は、


「助かりましたダフィーネ、あそこにどんな罠があったのでしょう?」


「罠というか……。あの蛇ね、首を切ると、鼬の最後っ屁技があることが分かったの」


 さすが毒蛇の親玉ということか。あのクロスサーペント、下手に体を切り刻むと、どこかの臓器に蓄えられた特殊な「ガス」を出すんだって。ダフィーネの解説と地球知識をまとめて考えると、こんな感じかなー


 その特殊ガスは空気中の窒素などと化学反応を起こし青酸ガス(HCN)みたいなのになるらしい。


 危ない、危ない。だから、ヤツの倒し方は土で埋めるのが「正解」だったようなのだが……。


「ああ、なるほど、ダフィーネには、見えたんだな?」


「見えた?」


「あああー、説明が中途半端だったな」「そうね。ごめんなさい、スノウ」


 ダフィーネには探知能力があると聞かされていたが、「探知」というのは説明を分かりやすくするため、ニュアンスを変えた表現だったようだ。


 なーーんだ、予知能力と言っといてくれれば、地球を経験した私にはストンと落ちたのに。ダフィーネの魔法は「ラプラスの悪魔」だねー


 正確に言えば、予知ではなく予測。彼女は、五感、そして精神感応という第六感を駆使して情報を集め、未来を予測する。


 このままの状況が続けば次に何が起きるのか? 未来に起きる複数の事象から最も確率の高いものが「見える」ってこと。先ほどのは、蛇の毒ガスで、みんなが死ぬ光景が浮かんだのだと言う。


 お互いが「深い関係」で一心同体なクロードと二人の時は、これを利用し、敵の行動を先読みして効率よく安全に狩りを行っていたらしい。


 私とダフィーネの親密さは二人には及ばないが、彼女はこのダンジョンの中では、精神感応のターゲットを前衛である私に向けていた。常に私の思考を読み、次に私が何をするのか? その結果はどうなるのか? を予測しつつ進んでいたということだ。


 なるほど! 合点がいった。「未来を語る」わけだから、ゼロ秒発動の魔法にも「間に合った」ということだね。


「でもなー、危なったのは(ひとえ)に俺の責任だ。スノウの強さに頼り過ぎて、下調べが不足していた。すまない」


「いえいえ、三人とも無事でしたし、結果オーライですよ」


 とは言ったものの、クロードがA級ダンジョンを甘く見ていたのは事実だろう。リセットして、やり直しができないネトゲ(MMORPG)をさんざん日本で遊んでいた身にはよく分かる。


 高難易度のボス戦を事前情報なしで攻略するのは至難の業だ。ネタバレを恐れたり、ましては怠慢で、何も調べず参戦したら、「ググレカス、一昨日来い」でしょ? ねー


「まだ時間も早いし、馬を飛ばせば夜には戻れるんじゃないかな? この埃、消えるものでもなし、帰ってゆっくりシャワーでも浴びようぜ」


「それがいいですね!」


「ちょっ、ちょっと待って。証、証」


「おっとー」


 この異世界、地球の常識からすると摩訶不思議な法則に縛られているが、残念ながら魔獣は死ぬと消えるだけで魔石になることはないし、お宝箱が出てくるということもない。


 魔石はしばらく安全なこのダンジョンを掘り進むことで得られるのだから、現段階で私たちが魔石を採掘し持ち帰るのは難しい。


 この仕様じゃ、ギルドにクエストをコンプした証拠を見せられない、よね?


 ギルド報告のために(***)、ボスを討伐したら、ボス部屋あたりに、なぜか、もっともらしく、ダンジョン攻略の証、縦二センチ、横五センチくらいの金属製プレートが落ちているはずなのだ。まーー、ざーとらしいよねー


 ここには不思議な文字、と、この異世界の人には見えるのだろうが、どう見てもQRコードじゃね? が記されていて、ギルドの魔道具で読み取ると、ダンジョン名が分かり、クエストコンプリートとなる。


「あのー、埋めちゃったので、土の下ってことはないでしょうか?」


「うーーん」


 と言いつつボス部屋の前まで引き返すと、何? コレ、マジ女神様の作為だねー、ボスを埋めた盛り土の上に、ちょこんとプレートが刺さっていた。


 いや、もう、コレ、ゲームでしょ?


 いやいや違う、それは私の人格が地球人であった時の影響を最も強く受けていて、そこでの常識が染み付いているからだ。地球のリアリティーというものが、全宇宙共通などということはないはずだ! ってことにしておこう。


 一行は馬を飛ばしてフルールを目指す。ダンジョン「葬式の宴」からはずっと下り坂、丸一日かかった行程を約半分で踏破した。


 ここがヨーロッパくらいの緯度で夏なら十時くらいまで明るいはずだけど、残念ながら、この惑星は地軸の傾きがない。ただ、B星の日の入りが遅いから、そうだなー、夕方の明るさなので、今は夜七時くらいかな? 一行は馬を馬屋に返却し徒歩で冒険者ギルドに向かった。


「おおーーい、アリーナ、ボス倒してきたぞ!」


「え!!! 早いですね!! て、そのお姿、ああーー、ボスを埋め殺してきたんですねー」


「あのなー、知ってたら、教えてくれたっていいじゃないか?」


「え? 博識なクロードさんに説法だなんてとんでもない」


「言ってくれるねー」


「それより報酬、報酬」


「はい、こちらに」


 そうなのだ、冒険者は職にあぶれ流れ流れてという輩も多い。だから、ギルドは、いつも、常に、即金、現金払いだ。


「A級ダンジョンですし、あそこは希少な魔石が産出しますから、スポンサーは王宮、白金貨三枚となっています」


 あーー、また三百万ねー、割り勘しやすくていいけど、あそこから魔獣の居ぬ間の鉱石発掘、数千万どころか億といった売り上げが予想される。


 ネットのなんちゃらストアでも、ぼったくるのは三〜四割。そう考えれば、冒険者というのは、命懸けなのに割りに合わない商売じゃないのかな?


「さ、さってと、シャワー浴びて、飲もうぜ! って、スノウはほどほどになー」


「酔っ払ったスノウも、可愛いけどねー」


「私を酔わせてどうするつもり? ちなみに、私、未成年ですので、不同意なんとか罪で一発アウトですよー」


「なに、それ?」


「ああ、前世(**)ネタで」


「ふーーん、百年前は、そんな慣わしもあったんだ」


 あっ! そうか! 前世の記憶があるとは言ったが、前々世のことは説明してなかったっけ。


「企業秘密です」


「ま、まだ、スノウに秘密があるのは分かってるよ、機が熟したら説明してくれ」


「は、はい」


 でしょうねー、みんな鋭いわ。


 ということもあり、三人は、ギルド併営の酒場で、ローストチキンを一本ずつ贅沢に頬張りながら祝宴を上げた。

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