スク水セーラー
そこうこうしている内、先にダフィーネが戻ってきた。
「すごいの! SSランクの防具がなんと、なーーんと、九割引き。可愛いスノウちゃんにピッタリだと思うわ」
うん? なに? この親しげな感じ。感情共感能力が強いと彼女は言っていたが、ASD(自閉スペクトラム症)傾向の強い私は、どうしても戸惑ってしまう。だけど、私の論理が結論した。「これは悪いことじゃない」と。
「あのー、褒められるのは嬉しいですし、買ってきていただいて、こんなこと言うのもなんなんですがー、九割引きって……、その、なんか?」
「サイズがね、ほら、スノウちゃん小柄でしょ? ピッタリだと思って」
なるほど! そういうことか。人気の洋服、ラインナップを揃えようと五号を作ったが、買う人がいなかった、みたいな?
百年一昔だねー、ダフィーネによると、洋服にはサイズ調整の魔法が掛かっているとのこと。ただ、あくまで「調整」であってアジャスト限界があり、Lサイズの服が私にはダブダブであることに変わりはないらしい。
って、言いながら、ダフィーネさん? なぜすぐその袋から、服を出さないわけ?? うん?
「なんだけど……、ちょっとデザインがさ。ああ、でもこれから冒険者やるんだから、実用第一ってことでねー」
恐る恐るという感じでダフィーネは、買い物袋から濃紺の、なんか、を取り出した。
「こ、これですか!!」
あーー、そういうことねー、ああ、なるほどねー
私たちのように「放浪する」タイプは例外中の例外なのだろうけれど、女神様の言からも察するに、転生者が、この星だけ、地球だけを巡っているとは限らない。この異世界にも地球の記憶を持った人がいるのだろう。
その何者かが、連休と年末にビッグサイトに通うのを至上の喜びとするヤツらであったとして特段不思議はない。胸の白い布、名札を省略したのは画竜点睛を欠くかもしれないけどねー
それは、図ったように正確に再現されたスクール水着、いわゆる「水抜き穴」が付いた旧スクというタイプだった。ポリエステルってことはないよね? だけど、手触りまで、そっくりなんですが。
「クロッチのところが前でボタン止めになってるから、お手洗いも問題ないわ」
おおお! これは誰の意匠だろうか? きっと『ストライクウィ●チーズ』宮●芳佳のコスプレを経験した女性じゃないのかな? トイレの個室に入ってハタと気づく、「小用足すだけのために全裸になるんかいっ!」ってね。
「あ、ありがとうございます」
「さ、さ、着てみて、着てみて」
ひとまず全裸になって、特別に開けてもらったという「尻尾穴」に、フワフワ、真っ白、自慢の一物を差し込み、水着を着る要領で足を入れ引き上げる。
なんだけどさ……。肩紐を掛けるまではスムーズでしたよ、こ、これが噂の魔法による調整ってヤツ??
ウッ、グググググ!!!
き、キツイ、ギズイ、なに、なんなの? この締め付け感!! グ、グルチイ、いやいや、私、ドMとかじゃないし、あーーん♡ 君の縄、イイのー♡ とかないし。
前世、殺し屋であった私、ドレスアップなどするのはごく稀だったが、魔帝の世界制圧記念祝賀会で、イブニングドレスを着たことがある、一度だけだけどねー
あの、いまいましいコルセットに近い感触だが、元々極細のウエストが特に苦しいわけでもなく、胸の締め付けが強い、いやん♡、強よしゅぎりぅぅー、息できないぃぃぃ! 念の為、言っとくが、私、ハイボクシフィリアの性癖もないよ?
「ふっ、ふぅ」
しばらくすると、呼吸ができないような感覚は収まってきた。
「あ!!!」
「そう、そうなのよ、これがレアなのはね、バストのサイズダウン機能が付与されてるから」
おおおお!! 素晴らしいじゃーないか! 下を向いても決して見るを能わなかった足がクッキリ視野に入っているじゃーないか。
「それから、これ、何気に温度調整機能もすごいのよ」
魔法技術の進化は著しいねー、今は夏だからみんな薄着なのかな、と思っていたが、どうやら冬になっても同じ服で大丈夫らしい。下着などに付与された温度調整機能があるからだ。
この装備のそれは格段に高く、北極から砂漠までこれ一枚で旅ができるほどの代物らしい。ちなみに、温度調整をする「魔法エアコン」はソーラーバッテリー方式、太陽光をエネルギーとして取り込み半永久的に作動するんだって。
「それ一枚で、スノウちゃんなら問題はないと思うけど、一応、防具をね」
いやいや、一枚の機能は秀逸だけど、私だって多少は見た目に拘りたい。これじゃぁ、マイクロビキニと大差ないばかりか、むしろキモイ人が寄ってきてしまうじゃないですか?
て、なに、それ、なに!!!!
「とっても可愛いなー、って思って、防具としてはB級なんだけど、予算がねー、ごめんね」
「いえいえ、そんな」
まて、まて、ますますキモイ人を呼ぶコーデなんですが。
彼女が取り出した上着は白の長袖夏服セーラー、小さめの関東襟、胸当てとカフスが紺色で、スク水との相性はバッチリ、きっちりデフォの三本線が入っている。しかも臙脂のリボンタイ(蝶結び)付き、首から吊るすタイプではなく、襟の裏にボタン止めするようにできている。
で、まーー、こうなるとねー、もうボトムは確定ですわな。島●君スタイルのミニプリーツだが、おおおお! なんとマニアックな仕様、いわゆる「前箱」だ!
一般にプリーツスカートは時計回りの車ひだなのだが、前と後ろで切り返し、左手は時計回り、右手は反時計回りになっているタイプを前箱と呼ぶ。セーラーを制服に採用しているお嬢様学校仕様なのですよ、知ってた?
さらに、ダフィーネの配慮だろう、お尻のところに切れ込みを入れてくれていて、尻尾を出しても捲れない。「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」にはならない模様? いや、多少は見えてる、クロッチあたりがチラだから、むしろヤラシさが増してないか?
スカートは、横ホックがあるわけではなく、サスペンダーで吊るようになっている。細すぎる私は前述のアジャスト限界を超えているようで、ウエストでは止まらず腰に引っかかるようになってるけどね。
ますます、マニア垂涎だねー、マジでヨ●カちゃん? いやいや、セーラー丈が短い&スカートありの相違点は厳然として存在する。
で、来るよね、来るよね、もう、覚悟は決めた。紺のニーソに黒のメリジェーン靴。ローファーじゃないの? あれ、この靴?
「これね、差し出がましいようだけど、歩行補助機能付きなの」
あっ! 彼女、気付いてくれてたんだ。私の足に親指がないことに! 事故で足が不自由になった冒険者用ということらしいが、わざわざ、探して買ってきてくれたらしい。
「あ、ありがとうございます」
スカート、セーラー、靴下、靴の順番で試着した私は、そっとダフィーネの手をとった。
「本当に、ありがとうございます」
「いいのよ、いいのよ、もう私たち仲間、うううん、親友じゃない。でもー、少しお礼貰っとこうかな」
ダフィーネは私に軽く口付けた。アレ? スマートに逃げようと思ったのに、なぜか、避ける方向を先読みされた気がする。
「これで、ますます、共感できるわ、ありがと」
この異世界、魔法世界では共通だよね? 性的な接触をすると互いに精神がシンクロする。ダフィーネの想い、善意の気持ちが流れ込んできた。って、なにやってるんだよー、私、頬が火照るのは、「そういう場面だから」と論理的に判断してるから?
「遅くなった。おおーーー、スノウちゃん、いいね!!! ますます、可愛いじゃないかっ」
クロードが戻ってきた。
まー、猫耳&尻尾付きなわけで必然的に某アニメを連想してしまいます。この間、アラサーの友人に聞いたら「十代で観てたと思いますが知ってます」とのこと。安心したよ。




