第57話― ヴァルトロスの残滓
目覚めてから二日後、サーシャはエララの警告に逆らい、自らの体を無理やり動かした。
全身の関節という関節が、無理に動かされた錆びついた蝶番のように感じられる。左肩の縫合部は熱く脈打ち、深く息を吸うたびに電撃的な痛みの信号を送ってくる。しかし、ミーシャの部屋の方角から続く沈黙は、それよりもはるかに残酷な拷問だった。三日間の無音は、彼女の正気にとって死刑宣告に等しい。
サーシャは今や傷だらけになった銀の鎧を身に着けた。鏡に映る自分の顔から目を逸らす――青白く、目の下には濃い隈ができ、騎士というよりも幽霊のようだった。腰には、剣がいつもより重く感じられる。
「敵に殺される前に、自分で自分を殺すつもりかい」エララの声が戸口から聞こえ、彼女は鎮痛剤の包みを差し出した。
「私が行かなければ、ミーシャが死ぬ」サーシャは平坦に答えた。
オリンがエララの背後に現れ、東地区の古い倉庫の地図を広げた。「忘れるな、サーシャ。シャドウハンドは正々堂々と戦いはしない。奴らは収穫者だ。捕まれば、殺されはしない。標本にされる」
サーシャは無言で地図を受け取った。彼女はヴェイロンから託された緊急召喚のルーンを手袋の中に滑り込ませる。指が一瞬、その石の表面を撫でた。(まだだ。私はまだ、彼女の守護者として役に立つと証明しなければ)
ヴァルトロスの夜は不気味に張り詰めていた。月は厚い雲に覆われ、まるで呼吸しているかのような闇だけが残されている。サーシャは腐った香辛料と朽ちた木の匂いが漂う古い倉庫群の影の中を進んだ。
目的の倉庫は死んでいるように見えた。木板は剥がれ落ち、南京錠は錆びついている。しかし、サーシャの騎士としての感覚は、石造りの基礎の隙間から漏れるごく微かな魔力の輝きを捉えた。低級の魔法偽装だ。
二人の衛兵が正面入口の死角に立っている。サーシャは正面からは攻めなかった。彼女は脆い屋根に這い上がり、左肩が体重を支えることを強いられた際の呻き声を必死に堪えた。最初の衛兵の背後に滑り降り、正確な一撃でその首を折る。二人目の衛兵が振り返るが、サーシャの剣の柄頭のほうが早く、彼の顎を砕いた。
サーシャは木箱の山の裏にある隠し板をずらした。地下の闇へと続く階段が彼女を迎える。
地下では、空気が刺激的な消毒薬の臭いと、腐敗し始めた肉の悪臭が混じり合ったものに変わっていた。石壁は結露で濡れ、天井の魔力クリスタルの薄明かりを反射している。
彼女は曲がりくねった廊下を進み、見たこともない器官の詰まったガラス管で溢れた部屋の数々を通り過ぎた。彼女の足は、鉄格子の独房が並ぶ前で止まる。いくつかの独房には、すでに目の光を失った人間がいた――骨と皮ばかりに痩せ細った獣人や、ただ恐怖に震えてうずくまるしかない子供たち。
しかし、ミーシャはそこにはいなかった。
サーシャはさらに奥へと進み、一番深部にある小さな実験室にたどり着いた。そこには紫色の液体がまだ濡れて光る手術台があった。その台の上で、彼女はそれを見つけた。
ミーシャのローブの、濃紺の布切れ。割れたクリスタルの注射針の山の間に転がっている。布の端には乾いた血痕があった。
サーシャはその布を手に取った。指が激しく震える。(ミーシャ…奴らはお前に何をしたんだ)
「主要被験体はすでにロダニア国境へ向けて移送中だ」隣の廊下からの会話の声に、サーシャの心臓が止まりかけた。「モーデイン教授は待つことを望まれなかった。あのオリジン・フラグメントの安定性は、こんな小さな拠点に放置しておくにはあまりにも貴重でな」
「ああ、ここの残りは清掃班に任せろ」
サーシャはもはや自分を抑えられなかった。怒りが爆発し、戦術的思考を溺れさせる。彼女は剣を抜き、影から飛び出した。「あの子はどこだっ!」
黒衣の二つの人影がぎょっと身をすくめる。魔法警報が施設全体に爆発的に鳴り響き、耳をつんざくような金切り音が轟いた。
「侵入者! 清掃班、第四区域へ急行せよ!」
一人のシャドウハンドが毒塗りの短剣で襲いかかる。サーシャは受け流すが、動きが遅い。左肩が裏切った。突き刺すような痛みが彼女から平衡感覚を奪う。相手の短剣が彼女の右腕を切り裂き、革の防具を引き裂いた。
サーシャは雄叫びを上げ、敵の首を斬り飛ばしたが、すでに三人のシャドウハンドが闇から現れ出ていた。彼らは煙のように動き、瞬時に位置を変える。
強烈な一撃の蹴りが、傷ついた左肩を直撃した。サーシャは倒れ、視界が真っ白になる。剣が手から離れ、石の床の遠くで金属音を立てた。
「折れた薔薇の枝め」実行者の一人が呟き、短剣を振り上げてサーシャの胸を貫こうとした。
その決定的な瞬間、サーシャはオリンから受け取った防護のルーンを起動した。「ヴァルトロス!」
運動エネルギーによる爆発がシャドウハンドたちを後方へ吹き飛ばす。サーシャは残る力のすべてで這いずり、剣を掴み、緊急階段へ走った。彼女はもはや痛みなど気にしない。ただ、肩の縫合糸が一本、また一本と千切れていく音だけを聞いていた。
血が滲み出て銀の鎧を濡らし、深紅へと変えていく。彼女は木の扉を体当たりで破り、倉庫の外の泥の中に倒れ込み、そのまま街外れの森の闇へ向かって這い続けた。背後ではまだ追手の叫び声が聞こえていたが、雨が降り始め、血痕をかき消していく。
夜明けが目前に迫る頃、サーシャは力の限界に達した。彼女は大木の下にうつ伏せに倒れ、息は途切れ途切れ、肺は燃えているように感じられた。
彼女は手のひらを開いた。ミーシャの青い布切れがまだそこにある。今は彼女自身の血と混ざり合っている。
「許してくれ…」声が破れ、しわがれた嗚咽となる。「ミーシャ…姉さんはまた…しくじった…」
彼女は冷たい地面の上で身を縮め、その布切れを抱きしめた。それが、自分に残された最後の命そのものであるかのように。薄れゆく意識の中で、彼女は知っていた。目的地はロダニアだ。そして今度は、外交の騎士として行くのではない。死神として行くのだ。




