第五十話 協力要請
無事?にダンジョン探索も完了し、目的であった賢者の石付き錫杖”礦”も回収できたので、転移魔法陣を使って外に出た。
転移先はダンジョン出入口の岩の前。
…?
チッ!休憩できると思ったのによ。
ゴンちゃんの他装備品どもへ瞬時に障壁を展開する。
紙 「おいおい。冗談がきつくねーか?魔族どもよ。」
転移した先に魔族がいやがったのだ!しかも姿がふざけていやがる。
姿以外に魔族と分かったのは、魔力の質が独特だからだ。瘴気を帯びている関係でね。
魔族A 「これは失礼。警戒する必要はございません。」
魔族B 「我々は勇者殿に話があって、待っていたのです。」
魔族C 「我々では、勇者殿の相手にならないでしょう?この星を破壊することも可能な勇者殿と戦う意思はありません。」
魔族A 「話をする時間を頂けないでしょうか?」
魔族B 「勇者殿の従魔が魔族だった時に情報を得ていますから、勇者殿の目的が我々の邪魔をすることでは無いことは知っておりますので。」
魔族C 「勇者殿に損はさせません。これは手土産です。」
魔族Cが差し出したモノは、これから対応する予定だったモノだ。
紙 「…俺が回収する予定だったモノを持参するとはな。まあいいだろう、受け取っておく。」
お面 『旦那、変な小細工はねーでやす。回収予定品も全て揃ってやす。神域の情報と突合せやした。』
お面が念話で教えてくれる。
紙 「話は聞こう。わざわざ探索予定だったダンジョンから回収してくれたんだからな。俺の従魔も傷つけていないようだし。」
魔族の手土産は、ワイバーンの巣近くに出来た探索予定ダンジョンの回収予定品だ。
それは良いとして、魔族の姿を変えさせよう。
魔族A 「魔物は魔族の敵ではありませんからね。強化対象の知的生命体と戦わせますが、勇者殿の従魔を使うわけにはいきません。」
紙 「まあそうだろう。もし攻撃していたら分かっているだろうな?容赦しないぞ。それは良いとして、お前ら姿を変えろ!不愉快だ。」
三体の魔族は俺に喧嘩を売っているとしか思えない。
歴代召喚勇者の姿になってやがるからな。
この世界に拉致された被害者の同胞を侮辱するとは何事だ!
魔族B 「これは失礼を。」
本来の姿に三体の魔族は戻った。
魔族本来の姿は人型だが、紫に近い黒い色のマネキンの様な見た目で、顔はのっぺらぼうだ。見た目は自由に変更可能だけどね。
紙 「魔族、いや、星が俺に喧嘩売ってるのか?同胞の姿をとるとかよ。ふざけんな!星を破壊して欲しいのか?」
魔族C 「その様なつもりはありません。お気を悪くしたことは謝罪します。勇者殿の同胞の姿であれば、話を聞いて貰えると思ったのです。」
紙 「死んだ者の姿をとるのは、死者を冒涜する行為だ。有名人をリスペクトして真似ることはあってもな、お前らの様な行為は侮辱になる。死者は文句が言えないからな、クレームの無い安全な状態でふざけるのは卑怯な行為だ。俺達召喚勇者は、この世界に拉致された被害者であることを考慮しやがれ!その姿をとると言う事は、同胞と同じ力を持っていると喧伝するのと等しい行為だ!俺に喧嘩を売ってると判断されても仕方が無いだろう?力を誇示してるんだからよ。」
魔族ども 「その様な意味になるとは…。申し訳ありませんでした。」
魔族どもが頭を下げる。
魔力と瘴気の塊である魔族は、生命体の感情をあまり理解していない。知的生命体強化の為の存在だから、感情など理解する必要も無いせいだ。卑怯な行為なども理解していない。
受肉している場合は、元の生物の影響で理解しているがね。
精霊が受肉した妖精の場合は、破壊本能が強く出てるけど。
俺や同胞がこの世界の存在を蹂躙するのは、屑どもにやられたことへの仕返しだ。因果応報ってね。
星や魔族も俺や同胞を異物として排除しようとしたし、気を使う必要は無い。
害虫や害獣などは駆除するだろう。俺や同胞にとっては、有害鳥獣駆除と同じようなもんだ。
ま、俺の主観だけどね。
紙 「…まあいい。話は聞こう。だが、ここでは落ち着いて話せん。俺の従魔の巣へ移動する。いいな?」
魔族ども 「勿論です。」
紙 「ゴンちゃんも良いな?」
ゴンちゃん 「はい。問題ありません。」
ゴンちゃんの巣の前の広場に移動する。
面倒なので、俺の転移魔法を使った。
◇◆◇◆◇◆
ゴンちゃんの巣の前の広場に転移してきた。
椅子とテーブルを出す。俺とゴンちゃんの分だけな。
紙 「ゴンちゃん座ってくれ。お茶でも出そう。魔族どもの席は無いぞ。俺はお前らの味方じゃないし、客として招いたわけでは無いからな。」
ゴンちゃん 「主様、お気遣いいただきありがとうございます。しかし立っています。魔族が何をするか分かりません。受肉していない魔族は、知的生命体を理解しているとは言えませんので。」
魔族A 「警戒不要です。先ほど申し上げた通り、戦いに来たわけではありません。」
魔族B 「席も不要です。勇者殿はご存知でしょうが、我ら魔族は精霊の一種ですので。」
魔族C 「話をさせて頂いてもよろしいですか?」
紙 「まあ、待て。先に確認だ。お前らが持ってきた土産以外の品もダンジョンにあったはずだが?それはどうした。」
説明をさせているうちに、根神さんに確認だ。
紙 『根神さん、応答願います。』
根神 『創平さん、魔族と話をしても大丈夫です。』
紙 『見ていたんですか?回収対象品は欠品ありませんか?』
根神 『ええ。魔族が待ち伏せしていたので、確認してました。回収対象品は欠品ありませんので大丈夫です。』
紙 『了解です。問題ありそうなら連絡お願いします。』
根神 『分かりました。あ、魔族の話は協力要請ですよ。後は魔族から確認してください。』
紙 『分かりました。』
協力要請?魔族に協力して知的生命体を攻撃しろってのか?
俺の予定と違うから、それは却下だな。
まあ、説明を聞こう。
魔族A 「他のドロップ品は、一般的なポーション類でしたから回収していません。」
魔族B 「お渡しした土産も、星がダンジョンコアに干渉して揃えたのです。」
なるほどな。
紙 「なるほど。ダンジョンボスがドロップする宝箱の中身である本体は別にして、他のを揃えるのは困難だから疑ったんだ。星が複製して、ダンジョンのはそのままかと思ってな。」
魔族C 「お渡ししたのは、ダンジョンから回収した品です。現在の知的生命体にはオーバーテクノロジーの品ですので、勇者殿にお渡しする必要がありましたから。」
魔道科学で作られた品だからな。ウォーワゴン並みのオーバーテクノロジーだ。
紙 「まあそうだろう。この銃と弾は問題あるからな。」
土産の品は、魔目餮砲と言う貪婪と同様の魔法生物でもある銃だ。弾は魔眼を加工した魔目弾と呼ぶモノになる。普通の銃と違うのは、各種魔目弾を銃にセットすることで、魔眼の持つ魔法や能力を使用できるようになるアイテムなのだ。
以前魔眼持ちから魔眼を取り出して研究していた世界があったと説明したが、この魔目餮砲と魔目弾は、その世界の研究成果だ。魔法が使えなくても魔力を銃に供給することで、魔眼の力が使えるので危険だ。
普通に魔法を使うよりも魔力効率がかなり悪いけどね。但し、”鑑識眼”や”石化”の魔眼などの魔目弾もある為、強力なアイテムではある。
紙 「お前らが所有者になっていないのは何故だ?」
魔族A 「我々は精霊の一種でもありますので、基本的にアイテムの所有者になる事はありません。受肉している場合は別ですが…。」
そう言えばそうだったな。それに詳しく聞くとダンジョンボスの宝箱の中身はドロップしないと分からないはずだが、俺が探索するのは分かっていたので、ダンジョンのドロップ品を人海戦術で回収したそうだ。ダンジョンコアに干渉すれば効率的に回収可能だからな。星は俺ほど細かくダンジョンを調整出来ないが、ダンジョンコアに与える地脈の力を調整して、ドロップ品を落とし易くは出来るから。人海戦術と言っても魔物を使役したらしい。この辺は魔族らしいな。
紙 「そうか。一応魔目餮砲に聞いてみるか。おい!魔目餮砲。俺が所有者で良いんだな?」
魔目餮砲 「忘れられているのかと思ったぞ。受け取って放置だからな。所有者登録するなら、魔目弾を全部装填してくれ。”鑑識眼”で確認後登録される。」
魔目餮砲本体は、グリップに魔法生物としての口があるだけで、眼が付いていない。魔目弾を装填するには、口の中に放り込めばいいはずだ。
…微妙な気分になるがね。
紙 「ほらよ。」
ポイポイっと魔目弾を放り込む。
魔目餮砲 「全魔目弾装填!所有者登録開始、鑑識眼をセット。所有者は自分に向かって銃口を向けよ。」
この魔目餮砲の銃口には、セットされた魔目弾の魔眼が開くようになっている。それにより魔眼の魔法や力が放たれるんだ。魔力を供給することによってね。貪婪の目から怪光線が出る眼と同じような魔眼もあるので、レーザー銃みたいにも使える。
ロシアンルーレットじゃ無いけど指示通り銃口を向ける。熨斗紙返しもあるから事故は無いだろう。
魔目餮砲が魔目弾を間違えて壊れるのは、自業自得だ。
魔目餮砲 「魔力を供給し、トリガーを引け!それで所有者登録される。」
あまりいい気分では無いが、指示通りにする。
紙 「俺の情報は正確に読み取れんだろう?異世界人だからな。」
一応名前は読み取れるようにはしたが…。解析魔法用に情報を読み取らせる方法はあるので、それを使ったが、こいつの魔眼の性能はどうかな?
鑑識眼は解析魔法の力がある魔眼だ。鑑定眼もあるが、それより性能は上のはず。
魔目餮砲 「大丈夫だ。”紙 創平”を所有者として登録完了。名前以外は読み取れないが、我を使用する実力の持ち主であることは、供給魔力量で判断可能だ。主殿、これからよろしく頼む。」
紙 「そうか。残念ながらお前を使うことは無いぞ。俺は自分で魔法使えるからな。お前の魔眼以上の性能でな。」
魔目餮砲 「おい!それなら所有者になるな!死蔵する気か?」
そうだよ。
紙 「うるさいな。アイテムをどうするかは所有者の判断だ。マジックバッグに仕舞っておこう。」
魔目餮砲は文句を言っていたが、マジックバッグに放り込んだ。
使う必要無いんだから、仕方が無いだろう?他の奴に使わせるのはマズいし。
紙 「待たせたな。それで話ってのは何だ?魔族に協力して、知的生命体を攻撃するのは駄目だぞ。こっちにも予定があるからな。」
魔族B 「魔族に協力していただくつもりはありません。話と言うのは、勇者殿に星が影響を受けて攻撃場所を決めてしまう為、魔族の者を一名同行させて欲しいのです。」
例の力を持った存在に反応する性質のせいか。それは分かるが…。
紙 「同行させるのは問題無いが、魔族を同行させることで俺に何のメリットがある?土産は話をするために、俺の時間を割いた報酬だと思うが?」
俺はタダ働きは御免だ。以前説明したと思うけど。
それにゴンちゃん達が魔族だった時に、俺を下に見たからな。今回も尊大な態度は基本的に変わっていないし、足引っ張られるのは迷惑だ。
魔族C 「我々魔族の攻撃予定などの情報を提供します。勇者殿の行動予定が立てやすくなるかと…。如何でしょう?」
情報か。正確に提供されるなら、お得だが…。
神域で魔族の行動確認しない分、効率的に動ける。各国の情報確認があるから、それ程変わらないけど。
紙 「それは正確な情報が提供されるのか?」
魔族A 「当然です。偽情報を提供して勇者殿の怒りを買った場合、この星を破壊されますから。そのようなリスクは避けます。」
ふむ。それもそうか。
紙 「分かった。同行を許可する。条件として妖精に擬態しろ。俺の従魔という事にすれば問題無いだろう?擬態は可能だよな?それと俺の情報は秘密厳守だぞ!!」
魔族B 「有難うございます。擬態は可能です。妖精でよろしいのですか?武器などの装備に擬態も可能ですが。勿論、勇者殿の情報は秘密にします。」
意志を持つ装備は、お腹いっぱいなんだよ。
紙 「妖精で良い。但し、俺の魔剣どもの人型みたいなのは駄目だ!見た目だけは可愛らしいのがいるだろう?羽の生えているフェアリータイプと言ったか。」
魔族C 「このタイプですか?」
魔族Cが蝶の羽を持つ小人のような姿になる。地球の妖精のイメージの一つだな。これなら問題は無い。
紙 「それだそれ!魔剣と同じような姿だったら同行させないが、それなら許可する。」
魔族A 「分かりました。私が同行しますので、よろしくお願いします。魔族の攻撃開始時期は半年後の予定ですので、観光はそれまでに行っていただけると有難いです。」
紙 「攻撃と言っても、一気に全体攻撃ではあるまい?それなら問題は無い。まあ、人族が殺されるのを見物する予定ではあるが。」
魔族B 「その辺は調整可能です。行動予定に関しては、順次調整でよろしいですか?」
紙 「それで構わん。俺の行動の邪魔はしないんだろうな?」
魔族C 「それは勿論。」
紙 「分かった。ダンジョンのドロップ品の確認をしてから、ネンドバーンの王城に戻るから。同行する魔族以外は、帰っていいぞ。話は済んだろう?」
魔族B・C 「はい。我らの為にお時間を頂き、有難うございました。ご協力に感謝致します。」
魔族Aだけ残ったが、データシート改変で従属させておく。俺は生物以外の存在も従属可能だからさ。
問題は無いと思うが一応保険だ。神域へ行くこともあるからな。
紙 「魔族よ、従魔と言うことにするから、呼び名を付けよう。そうだな模糊で良いか?10兆分の1を表す言葉で、ぼんやりしているさま等の意味もある。」
魔族A 「問題ありません。」
紙 「分かった。模糊よ、魔族の情報提供は頼むぞ。人族などへはバラさないから安心しろ。」
模糊 「こちらこそよろしくお願いします。」
ダンジョンのドロップ品の確認をしてから、城に戻った。
結構時間が掛かったが、一日で処理出来て良かったよ。
魔族のおかげで時短出来たし。
後は様子を見ながら対応だな。
頑張ろう。




